見出し画像

感謝の手紙#1 Sへの感謝の手紙

親愛なるSへ

トシヤです。
「トシヤ」といってもあなたにはピンとこないでしょう。
当時のあだ名「ムス」だとピンとくるかな?

あなたとの出会いは大学生のとき。
最初の印象は「静かな人」。

大学3年のときに、僕が住んでいる寮にあなたが入寮してきました。
そこから親密になりました。

あなたが所属する山岳部のメンバーも寮生だったことも大きかったのでしょう。入寮前に少しふさぎ込んでいたあなたに笑顔が増えていきました。

大学の寮の自治活動も半年間、一緒にやりましたね。
繁忙期には深夜に渡って会議をしたり、議案書の印刷に追われたり。

しんどいこともあったけど、あなたと一緒に活動できてよかったなと思っています。

あなたの部屋の風景を今、思い出しています。
文学書と、スコッチやバーボンのボトルが散らばった部屋。
そして、壁には次に登る山の地図。

焚き火を前に、文学書を片手にスコッチの入ったボトルを傾けている。
そんな、風流なことを山でやっているイメージを持っていました。

そうそう。
「Sは山にいるときの方が本調子で、日常は平地にしばりつけられて、調子が悪いんだよね」なんてジョークも仲間内で交わしたこともありました。

そんなジョークが通じるほど、あなたの山への愛は仲間内で有名でした。
あなたの山への愛は生涯変わりませんでしたね。

その愛はますます深くなりましたね。
1年休学し、あなたは海外の山々をふらふらと。
卒業後も、バイトをして資金を貯めては、海外の山をめぐる日々。

本当に山を愛しているんだなあと当時はただただ感心していました。

そんなあなたの訃報を聞いたのは大学を卒業して数年後。
あなたは、マッキンリーで雪崩に巻き込まれ、帰らぬ人となりました。

いくら山が好きだからって、Sよ。
なにも山で最期を迎えなくてもいいじゃないか!
かっこよすぎるよ…

あなたの訃報を聞いたとき、そう感じました。
思わず、声になってしまいました。

自分が愛する場所で最期を迎えたあなたが、私には眩しすぎたのです。
山を愛した、実にあなたらしい最期でした。

あなたに感謝したいことが2つあります。
一つは、あなたは私に、最期まで自分にいつわりなく生きることを見せてくれたことです。

在学中から、あなたは、山を愛する自分をいつわることがなかった。バイトをしてお金を貯めては山へ繰り出していました。

僕を含めた周囲の人は、「フラフラしてるなあ」と感じながらも、実は「山が好き」ということにいつわりなく生きているあなたを尊敬していました。

あなたに感謝したいことがもう一つあります。
それは、自分らしい最期を迎えることです。

日本人の多くが最期を病院で迎えるという時代に、あなたは自分が一番愛した山で最期を迎えました。その姿がただただかっこよかった。自分らしい最期を迎えたあなたが。

「これからもあなたのために生きていこう」とは思っていません。
というか思えません^^;

そうではなく、あなたが身を持って示してくれた、自分にいつわりなく生きることの重要さを噛み締めながら生きていこうとは思います。

そして、いつの日か、自分らしい最期を迎えた上で、あなたに会いに行きますね。

サポート、本当にありがとうございます。サポートしていただいた金額は、知的サイドハッスルとして取り組んでいる、個人研究の費用に充てさせていただきますね♪