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#85 2011(平成23)年岩手県農林水産業の県内生産額を再推計

前回の投稿(#84)で、田畑氏および大阪府の推計方法に基づき、今一度、0110(米)から県内生産額の推計を行うと書きました。

今回の投稿は、以前(#72で)行った、岩手県における2011(平成23)年の農林水産業の推計の見直しについてです。

生産農業所得統計を用いて県内生産額を推計

大阪府延長産業連関表の推計において、「01農林水産業」で利用した主な統計調査、資料の一つに、「生産農業所得統計」が挙げられています。

#73において、農業については、主に「生産農業所得統計」を用いて県内生産額の推計を行いました。

生産農業所得統計に記載のデータを直接使用

下記の表中にある産業は、平成23年生産農業所得統計の「都道府県別生産農業所得統計表」の「実額」に記載のデータを直接使用したものになります。

表85−1 生産農業所得統計の実額を直接使用した産業

また、次に述べる産業については、生産農業所得統計の実額を計算に用いて県内生産額を推計しました。

0112(いも・豆類)

平成23年生産農業所得統計の「都道府県別生産農業所得統計表」の「実額」の「豆類」と「いも類」の値を合算して算出しました。

0115(その他の食用作物)

平成23年生産農業所得統計の「都道府県別生産農業所得統計表」の「実額」に記載の「工芸農作物」の値に「雑穀」の値を加え、「4-1 分析指標 主要農産物の産出額と構成比(50位まで)」に記載の「葉たばこ」の値を引くことで推計しました。

$$
その他の食用作物 = 工芸農作物 + 雑穀 - 葉たばこ
$$

0116(非食用作物)

平成23年生産農業所得統計の「都道府県別生産農業所得統計表」の「実額」に記載の「花き」の値に、「種苗・苗木類・その他」の値を加え、「4-1 分析指標 主要農産物の産出額と構成比(50位まで)」に記載の「葉たばこ」の値を加えることで推計しました。

$$
非食用作物 = 花き + 種苗・苗木類・その他 + 葉たばこ
$$

0131(農業サービス)の県内生産額の推計

0131(農業サービス)に含まれる基本分類は、「獣医業」と「農業サービス(獣医業を除く)」になります。

(1)獣医業

#73では、以下のような方法で「獣医業」の県内生産額を推計しました。

平成24年経済センサス‐活動調査 事業所に関する集計 産業別集計 サービス関連産業Bに関する集計の表「サービス関連産業B(細分類),経営組織(3区分)別民営事業所数,従業者数及び売上(収入)金額―全国 」より、値を引用しました。

「#73 2011(H23)年岩手県農林水産業の県内生産額の推計」より

今回は、指標の対全国比×平成23年産業連関表(総務省)生産額により、県内生産額を推計することにします。指標は、「従業者数」になります。

従業者数のデータについては、経済センサスに記載されています。よって、#80〜#83での作業で推計したデータが役立つことになります。

まず、#80で推計した民営事業所における各産業の従業者数に、#81で推計した公的部門における各産業の従業者数を合算します。

全国における場合の推計に使用したVBAのコードを掲載します。

Sub 民営事業所の従業者数と公的部門の従業者を合計()
	Dim wsOrg1 As Worksheet
	Dim wsOrg2 As Worksheet
	Dim wsDes As Worksheet
	Dim i As Integer
	Dim j As Integer	
	
	Set wsOrg1 = Workbooks("H24経済センサス_民営_従業者数_全国_小分類.ods").Worksheets("sheet2")
	Set wsOrg2 = Workbooks("H23_公的部門_従業者数_全国_小分類.ods").Worksheets("sheet1")
	Set wsDes = Workbooks("経済センサス_H23_従業者数_全国_小分類.ods").Worksheets("従業者数_民営と公的部門の合計")
	
	For i = 2 To 433
		For j = 2 To 426
			If wsDes.Cells(i, 1).Value Like wsOrg1.Cells(j, 1).Value Then
				wsDes.Cells(i, 3).Value = wsOrg1.Cells(j, 3).Value
			End If
		Next
		For j = 2 To 433
			If wsDes.Cells(i, 1).Value Like wsOrg2.Cells(j, 1).Value Then
				wsDes.Cells(i, 4).Value = wsOrg2.Cells(j, 5).Value
			End If
		Next
		wsDes.Cells(i, 5).Value = wsDes.Cells(i, 3).Value + wsDes.Cells(i, 4).Value
	Next
End Sub

同様に、岩手県における各産業の民営事業所の従業者数と公的部門の従業者数も合算します。

そして、以下の式で、岩手県における獣医業の県内生産額を推計しました。

$$
岩手県の獣医業の県内生産額 = 平成23年全国産業連関表の獣医業の生産額 × \frac{岩手県の獣医業の従業者数}{全国の獣医業の従業者数}
$$
 

(2)農業サービス(獣医業を除く)

#73では、以下のような方法で「農業サービス(獣医業は除く)」の県内生産額を推計しました。

共同乾燥施設:平成23年(2011年)産業連関表総合解説編では、「作物統計調査の米、麦類、豆類の作付面積又は生産量に農業経営統計調査の生産費のライスセンター・カントリーエレベーター費を乗じて推計した」となっています。豆類のカントリーエレベータ費のデータが得られなかったので、作物統計調査の米、小麦の作付面積に、農業経営統計調査の農産物生産費のライスセンター・カントリーエレベーター費を乗じて推計しました。

土地改良区:平成23年(2011年)産業連関表総合解説編では、「土地改良区面積に10a当たりの経常賦課金を乗じて推計した」と記述されています。2011(H23)年の岩手県全体の土地改良区の面積に該当する統計資料が見つからなかったので、推計方法はまた後日に検討することにします。

航空防除:平成23年(2011年)産業連関表総合解説編では「農林水産航空事業実施状況の有人ヘリコプター(ミバエ類再侵入防止等及び林業を除く。)及び無人ヘリコプターによる散布等面積に業務資料(部門資料)の面積当たりの経費を乗じて推計した」となっています。散布等面積及び面積当たりの経費の統計資料が得られなかったので、推計方法はまた後日に検討することにします。

青果物共同選果場:平成23年(2011年)産業連関表総合解説編では、「直接推計する資料がないため、過去の生産額を、作物統計調査の野菜及び果実の出荷量及び農業物価統計調査の共同施設利用料の伸びから推計した」となっています。岩手県の青果物共同選果場の過去の生産額に該当する統計資料が見つからないので、推計方法はまた後日に検討することにします。

稲作共同育苗事業:平成23年(2011年)産業連関表総合解説編では、「作物統計調査及び稲作関係資料(部内資料)から求めた共同育苗普及面積に農業経営統計調査の米生産費の苗の購入費を乗じて推計した」とあります。岩手県の共同育苗普及面積に関する統計資料が得られなかったので、推計方法はまた後日に検討することにします。

種付業:平成23年(2011年)産業連関表総合解説編では、「農業経営統計調査、農業物価統計調査、馬関係資料、畜産統計調査、軽種馬生産の関する調査報告書から推計した」とあります。岩手県の種付業に関する統計資料を得ることができなかったので、推計方法はまた後日に検討することにします。

ふ卵業:平成23年(2011年)産業連関表総合解説編では、「鶏ひなふ化羽数(日本種鶏孵化協会)から求めたふ化羽数に農業物価統計調査の初生びな単価を乗じて推計した」となっています。この方法に基づいて推計ができました。

その他の農業サービス:平成23年(2011年)産業連関表総合解説編では、「稚蚕共同飼育事業は主産県からのヒアリングにより推計し、農協営農指導サービスは農業組合及び同連合会一斉調査の総合農協及び専門農協の指導収入を用いた」とあります。岩手県内の専門農協の指導収入のデータが得られなかったので、総合農協の指導収入のみ計上しました。

「#73 2011(H23)年岩手県農林水産業の県内生産額の推計」より

まとめると、基本分類のさらに下の分類ごとに生産額を推計し、それらを積み上げることで推計しようと試みました。

しかし、統計資料の制約から生産額の推計が困難となり、「推計方法はまた後日に検討することにします」と書いた部門がいくつかありました。

そこで、今回は、指標の対全国比×平成23年産業連関表(総務省)生産額により、県内生産額を推計することにします。指標は、「従業者数」になります。

指標は、経済センサスの「013農業サービス業(園芸サービス業を除く)」の従業者数となります。

林業の県内生産額を推計

0211(育林)

#73では、以下のような方法で推計を行いました。

山行き苗木:平成23年(2011年)産業連関表総合解説編では、「生産農業所得統計及び積算資料の産出額を用いた」となっています。岩手県の山行き苗木に関する統計資料を得ることができなかったので、推計方法はまた後日に検討することにします。

素材仕向分:平成23年(2011年)産業連関表総合解説編では、「木材統計調査及び木材需給表の素材生産量に山林素地及び山元立木価格調(日本不動産研究所)の山元立木価格を乗じて推計した」となっています。本研究でも同様の方法で生産額を推計しました。

育林の成長増加:平成23年(2011年)産業連関表総合解説編では、「森林資源の現況から求めた材積の在庫純増(禁抜分を控除)に山林素地及び山元立木価格調の山元立木価格(素材ベースを立木ベースに換算)を乗じて推計した」となっています。本研究では、森林資源の現況(平成24年3月31日現在)の5 樹種別齢級別蓄積 (計画対象森林、計画対象国有林、計画対象民有林)から、人工林及び天然林のスギ・ヒノキ・マツの蓄積量を集計しました。その値を、針葉樹の立木換算係数0.86(国土技術政策総合研究所 研究資料)で除した後、山林素地及び山元立木価格調の山元立木価格を乗じて推計しました。

「#73 2011(H23)年岩手県農林水産業の県内生産額の推計」より

まとめると、基本分類のさらに下の分類ごとに生産額を推計し、それらを積み上げることで推計しようと試みました。

しかし、統計資料の制約から生産額の推計が困難となり、「推計方法はまた後日に検討することにします」と書いた部門がいくつかありました。

そこで、今回は、指標の対全国比×平成23年産業連関表(総務省)生産額により、県内生産額を推計することにします。指標は、「国勢調査」の「従事者数」になります。

「林業」と「漁業」については「国勢調査」の就業者数を用いて求めた按分比を使って「市内生産額」を求める。ただし、「国勢調査」は「産業連関表」と同様に 5 年ごとの調査となっているが、両者の調査年にはズレがあるため、これについても直線補間法を用いて調整する必要が生じる。

三好ゆう(2020)『ノン・サーベイ法による市町村産業連関表の作成と課題
―京都府内全26市町村の「市内生産額」の推計から―』

平成23年の前後に行われた国勢調査の年は、平成22年と平成27年になります。よって、以下のような直線補間法を用いて調整する必要があります。

$$
平成23年従業者数=平成22年従業者数+{(平成27年従業者数)−(平成22年従業者数)}×\frac{平成23年から平成22年までの1年}{平成27年から平成22年までの5年}
$$

国勢調査において、0211(育林)に従事するのは、「育林従事者」です。

「平成27年国勢調査 抽出詳細集計(就業者の産業(小分類)・職業(小分類)など)」の表「従業上の地位(8区分),職業(小分類),男女別15歳以上就業者数」から、平成27年の全国と岩手県の「育林従事者」の総数が得られます。

また、「平成22年国勢調査 抽出詳細集計(就業者の産業(小分類)・職業(小分類))」の 表「職業(小分類),従業上の地位(3区分),男女別15歳以上就業者数」から、平成22年の全国と岩手県の「育林従事者」の総数が得られます。

上記の直線補間法を用いて平成23年の全国及び岩手県の「育林従事者」の従事者数を推計した後、従事者数の対全国比×平成23年産業連関表(総務省)生産額により、0211(育林)の県内生産額を推計しました。

0212(素材)

#73では、以下のような方法で「0121(素材)」の県内生産額の推計を試みました。

素材:平成23年(2011年)産業連関表総合解説編では、「樹種別に木材統計調査及び木材需給表の生産量に生産林業所得統計の単価を乗じて推計した」となっています。ここでいう、「生産林業所得統計」は、平成27年に「生産林業所得統計」から「林業産出額」に名称を変更した模様です。「林業産出額」の概要をみてみると、「林業産出額は、各林産物生産量(木材統計調査、特用林産物生産統計調査等から得られる品目別生産量)に価格(木材生産にあっては樹種ごとの山元土場価格、木材生産以外にあっては庭先販売価格)を乗じて推計した」とあるので、本研究では、林業産出額のデータをそのまま用いることにします。

しいたけ用ほだ木の原木:平成23年(2011年)産業連関表総合解説編では、「特用林産物生産統計調査の生産量に単価を乗じて推計した」とあります。本研究でも、同じ方法を採用しました。

薪炭材等の原木:平成23年(2011年)産業連関表総合解説編では、「木材需給表の生産量に生産林業所得統計のパルプ用(広葉樹)の単価を乗じて推計した」とあります。木材需給表には全国のデータしかなく、都道府県別のデータの記載がありませんでした。なので、推計方法はまた後日に検討することにします。

「#73 2011(H23)年岩手県農林水産業の県内生産額の推計」より

薪炭材等の原木の県内生産額を推計する方法を検討してみたのですが、よい方法が見つからなかったので、今特用林産物生産統計調査回は推計を諦めました。よって、「素材」と「しいたけ用ほだ木の原木」の合計値が、0212(素材)の県内生産額となります。

0213(特用林産物)

#73では、以下のような方法で「0121(素材)」の県内生産額の推計を試みました。

平成23年(2011年)産業連関表総合解説編では、「きのこ類は生産林業所得統計の産出額を、それ以外は生産林業所得統計及び特用林産物生産統計調査の生産量に単価を乗じて推計した」とあります。本研究でも、同様に推計しました。

「#73 2011(H23)年岩手県農林水産業の県内生産額の推計」より

今回も、同様の方法で推計を行いました。

水産業の県内生産額を推計

0311(海面漁業)

#73では、以下のような方法で「0311(海面漁業)」の県内生産額の推計を試みました。

平成23年(2011年)産業連関表総合解説編では、「漁業生産額の生産額を用いた。なお、海面養殖業には漁業経営調査及び漁業センサスから推計した養殖魚種の成長増加の生産額を加えた」とあります。

本研究では、漁業産出額の平成23年漁業生産額の大海区都道府県別生産額(海面漁業・養殖業)の海面漁業・養殖業生産額の値をそのまま採用しました。

「#73 2011(H23)年岩手県農林水産業の県内生産額の推計」より

今回も、上記と同様の方法で県内生産額を推計しました。

0312(内水面漁業)

#73では、以下のような方法で「0312(内水面漁業)」の県内生産額の推計を試みました。

平成23年(2011年)産業連関表総合解説編では、「漁業生産額の生産額を用いた。なお、内水面養殖業には漁業センサスから推計した観賞魚の生産額を加えた」とあります。本研究では、平成26年度版岩手県水産業の指標に記載されている、内水面漁業及び内水面養殖業の魚種別生産額の合計値を採用しました

「#73 2011(H23)年岩手県農林水産業の県内生産額の推計」より

今回は、指標の対全国比×平成23年産業連関表(総務省)生産額により、県内生産額を推計することにします。指標は、「漁業産出額」の「生産額」になります。

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