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ロシア語文法解説 NO.1 ~移動の動詞の完了体と不完了体~

こんにちは!
私は現在、21名の方にロシア語をオンラインと対面方式でほぼ毎日教えております。その中で、受講生さん達から日々質問を受けます。その中の一部をこれより定期的に配信していきます!あなたのロシア語学習の一助、最低でも励みになれれば幸いです。

こちらのページでは、ロシア語の移動の動詞(または、運動の動詞)の完了体と不完了体に焦点を当てたいと思います。

移動の動詞の基本的な概要を理解しているという前提のもとで話を進めていきますので、当分野に関する知識が曖昧な方は、他の方の解説等を読んでいただくことをお勧めします。

参考書は基本的に不完了体の説明のみ

世の中に出回っているロシア語の種々の参考書では、移動の動詞を説明する際に主に以下のようなスタンダードな動詞が列挙されています。

●идти (定動詞)
●ходить (不定動詞)
●ехать (定動詞)
●ездить (不定動詞)
●нести (定動詞)
●носить (不定動詞)

これらは通常、「移動の動詞は定動詞と不定動詞の2種類に大別される」という文脈の中で説明されます。

しかし、実際にはもう少し複雑で、定動詞でも不定動詞でも、それぞれ原則として不完了体と完了体の区別が存在しています。


先程の6つの移動の動詞の体は、すべて不完了体となります。

ですので、例えばидтиやехать, нести などの定動詞の意味として、それぞれ、(一定方向に)「歩いて行く」、「乗り物で走って行く」「持って行く」などと書かれていますが、現実に則して言うと、(一定方向に)「歩いて行っている」、「乗り物で走って行っている」「持って行っている」という厳密なニュアンスになります。

(例文)
(1) Андрей несёт эти книжки папе.
 アンドレイはそれらの本をパパのところに持って行っている。

(2) Мужчине стало плохо, когда он шёл домой.
 男性は帰宅途中に、気分が悪くなった。

(3) Мы едем в Волгоград.
 我々はヴォルゴグラードに向かっている(最中だ)。

(4) Каждый день я хожу на работу пешком.
 毎日、私は徒歩で通勤する。

上記の例では全て不完了体動詞が使われているため、時制が現在であっても過去であっても、進行形のニュアンスが強調されるべきです。

移動の動詞の完了体について

それでは、移動の動詞が完了体になる場合、動詞の形やそれらが示すニュアンスはどうなるでしょうか?

不完了体の移動の動詞を完了体にするためには、接頭辞поを付加することが基本となります。これは、定動詞、不定動詞ともに同じことが言えます。

しかし、先程の不完了体とは異なり、完了体の場合は定動詞と不定動詞を区別して考えていきます。その理由は後述の通り、不定動詞の完了体には "по" 以外にも活用される接頭辞が存在するからです。

★1 完了体の定動詞

●пойти (完了体の定動詞 ※以下、すべて同じ)
●поехать
●понести
●побежать

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上記のような接頭辞поが付け加えられた完了体の定動詞は、基本的に"一瞬の動作"を表したり、"初動の動作"を表したりします。早速例文を見てみましょう。

(1) Женщина пошла к мужу и рассказала всё, что случилось.
その女性は夫のところへ行き、起きたことをすべて話した。(一瞬の動作)

(2) Вдруг зверь побежал за машиной.
突然、その獣は車を追い始めた。(初動の動作)

(3) Она понесла посуду на кухню. 所へ彼女は皿を台所へ運んだ。(一瞬の動作)

定動詞が"一瞬の動作"と"初動の動作"のどちらのニュアンスになるかは、文章中の文脈判断によるところが大きいですが、

(1)の場合、女性は夫のところにすでに到着しているので初動の動作とは考えられず、
また(2)の場合、вдругという単語が用いられているので、動作の開始を表していると考える方が自然でしょう。
最後に(3)の場合ですが、理論的にはどちらのニュアンスとしても捉えられますが、一般的にテーブルから台所までの距離は近いので、一瞬の動作と考える方が自然でしょう。

★2 完了体の不定動詞

●походить (完了体の不定動詞 *以下すべて同じ)
●сходить
●поездить
●съездить
●поносить
●сносить
●побегать
●сбегать

  ・

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  ・

不定動詞に完了体が存在することは、私たちのような非ネイティブにとっては想像しがたいのではないでしょうか。

”完了体とは一瞬の動作を表す体”

と習ってきているので、「不定動詞って矛盾しているのではないか?」と思いがちですが、実際には、”一往復する” ”少しだけ歩き回る”という具合に、一瞬の動作として一括りにする場合もあり、これこそが完了体の不定動詞の正体となります。

そして、原則として

●接頭辞 по を付加すると、「一瞬の動作」を意味するニュアンスとなり、
●接頭辞 с を付加すると、「一往復の動作」を意味するニュアンスとなります。

[図2]の①について、始めに接頭辞 по を付加した完了体の不定動詞の具体例を考えていきましょう。

(1) Мы походили по центру города.
私たちは街の中心部を少し歩いて回った。

(2) Этот парень поводил нас по достопримечательностям.
その青年は私たちを観光名所に連れて回ってくれた。

(1)(2)のпоходитьもповодитьも不定動詞ですが、完了体なのでニュアンス的には「しばらくの間」という短いスパンで捉えることがポイントとなります。ちなみに、これらの不定動詞の不完了体は、それぞれходить(歩き回る)とводить(~を連れて回る)になります。

次に[図2]の②について、こちらも同様に接頭辞 с を付加した完了体の不定動詞の具体例を考えていきましょう。

(1) Я сбегаю в аптеку за лекарством. (研究社の辞書 P569)
薬局に行って薬を取って来よう。

(2) Утром Настя сходила к соседке.
朝、ナースチャは近所の人のところへ行って来た。

こちらも同様、(1)(2)のсбегать, сходитьともに不定動詞ですが、完了体なのでニュアンス的には「一回だけの往復」という短期的なスパンを特に強調していることがポイントとなります。

これらの不定動詞の不完了体は、それぞれбегать(走って往復する)とходить(歩いて往復する)になります。

まとめの具体例
だいぶ話が複雑になってしまいましたが、ここで代表的な移動の動詞を複数、具体例として挙げながらおさらいしていきます。

~具体例1~

「歩く」という基本的動作について。

★定動詞
● идти (不完了体:歩いて行く)
● пойти (完了体:歩き始める、歩く)

★不定動詞
● ходить (不完了体:歩き回る)
● походить (完了体:少しの間、歩き回る)

● ходить (不完了体:歩いて往復する)
● сходить (完了体:一往復する)
     

~具体例2~

「~を連れて行く」という基本的動作について。

★定動詞
● вести (不完了体:~を連れて行く)
● повести (完了体:~を連れて行き始める、~を連れて行く)

★不定動詞
● водить (不完了体:~を連れて回る)
● поводить (完了体:~を少しの間、連れて回る)

● водить (不完了体:~を連れて往復する)
● сводить (完了体:~を連れて一往復する)
   

もちろん、移動の動詞は上に列挙した諸動詞のみならず、他にもплытьやлететь, везтиなどが存在しますが、現実に使用される頻度については別にして、これらも今日紹介した完了体と不完了体の基本的なルールは同じです。

いかがでしたでしょうか。本日は по と с を接頭辞として移動の動詞に付加することについて解説していきました。

本日もどうもありがとうございました!
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