見出し画像

毎日1時間以上勉強しないと、宅建に合格することはできないのか?

52歳で宅地建物取引士試験に挑戦し、一発合格を果たしました。
民法大改正前年の2019年のことです。
1年前から賃貸管理の仕事に携わっていましたが、宅建業法も民法も法令もどちらかというと売買に絡むことが多いので、ほとんど知識がない状態からのスタートでした。
ちなみに仕事にそれほど必要がなさそうなのになぜ受験しようと思ったのかについてですが、それはズバリ!業務委託契約を結んだ会社との契約書に「専任の宅建士として登録した際には月3万円の手当を支払う」という条文を入れてもらっていたからです。

さて、タイトルに対する答えですが、それは「否」です。
ネットなどの体験記で「毎日1時間以上勉強しました!」と書いている方もいらっしゃり、そのような方法で合格を勝ち取った方がいるのも事実です。
ただ、それは「誰でも毎日1時間以上勉強すれば間違いなく受かるのか」ということとは別問題です。
逆に言えば「毎日1時間の勉強時間を確保できなくても受かる場合もある」ということです。かくいう私がそうなのです。

同じ年に受けた方は周囲にも十数人いましたが、合格した人はほんの数人で、2度目3度目でも不合格となった方もいました。
私見ですが、宅建士試験は回を重ねるごとに合格が遠ざかってしまう方もいるようです。
膨大な量の知識を詰め込むので、そうそう継続してモチベーションを保つことが難しいからだと思います。
合格するにはそれなりにコツが必要なのです。

合格してみて思ったのは、
・勉強に費やす時間は重要ではない
・今年がだめなら来年、という考えで臨んではダメ
・時間に関係なく中身の濃い学習をする

ということです。

そう言い切れる証拠として、私がどのような状態で勉強していたのかご紹介しましょう。
・学習開始時期:受験年の1月ごろ
・教材:ユーキャン 宅建講座
(入門編3冊・応用編3冊、添削問題、オンラインサポート)※オンラインサポートではスマホでテキストが読めたり、問題を解けたり、講師へ質問を送れたりします)

画像1

当時、周りには独学で挑戦しようとしている方もいましたが、私は迷わず通信講座を選びました
それには理由があります。
前年の合格発表の日に、合格できなかった皆さんが口々に言っていた言葉が頭に残っていたからです。
「いやー、改正部分ノーマークだった。あれが取れたら受かってたかも」
宅建の受験など頭の片隅にもなかった私でしたが、なぜかずっとその言葉を覚えていました。
そして自分が受験を決めたときにその言葉を思い出し「独学でやると学習範囲に偏りが出そうだし、最新の試験情報を自分で集める自信もないので、手厚くフォローしてくれそうな通信講座にしよう!」と迷わず決めたのでした。
そしてもう一つ、決めたことがあります。それは他の教材に手を出さないことです。
わからないとつい他のテキストを見たくなってしまうのですが、序盤にわからない状態ではおそらくどんなテキストを見ても同じことでしょうし、ますます迷宮にはまってしまう可能性もあります。ここは浮気は禁物です。

さあ、いよいよ受験生活のスタートです!

※文中に出てくる法令等の記述は2019年版テキストに基づくものです。民法改正には対応しておりませんのでご了承ください。

教材が届いた当初は毎日コツコツ学習するつもりでしたが、あろうことか、年明け直後から仕事量が激増し、定時の18時に会社を出られることはほとんどなくなり、毎日20時~22時頃まで残業をする日々が受験当日まで続きました。しかも帰ればまず夕食の支度が待っています。
同年代の人より気力も体力もある私ですが、さすがに夕食を作ったところで力尽きることが多く、とてもじゃないけど、携帯で気分転換のツムツムはできても、毎日1時間の勉強などできる状態ではありませんでした。
一応テキストは持ち歩いていましたが、電車で開いて文字を見ていると気が付くとウトウトしていることもざらでした。

では、土日にまとめて何時間も勉強したのかというと、それも無理でした。
月~金まで激務をこなしたら、土日はせいぜい洗濯をして家族のご飯を作るのが精一杯です。
とはいえ、まったくやらないわけにもゆかず、この際学習時間のことは気にせず、まずはテキストを読み進めることに注力しました
ところが専門用語が多すぎてなかなか読み進めることができません。
頭の中に?の文字がいくつも浮かんだ状態でそれでもとりあえず読む作業に集中しました。
のちに気が付きますが、わからなくてもとにかく一度最後まで読むことが大切です。
一通り読み終わるころには専門用語の羅列にも耐性ができてて、不思議と意味のわからなかったことが少しずつわかるようになってくるのです
よく言語の習得の話で、ある程度の量に触れたのちに急にわかるようになる、という話を聞ききますが、まさにそれと一緒です。
わからなくてもとにかく読んでください。途中で放り出したくなることもあると思います。私もそうなったことがあるのでよくわかります。
ですが、合格へ近づきたいのなら前進あるのみなのです。

ただ、わからないながらも意識してほしいことはあります。
それは、書いてある内容の意味を理解しながら読むようにすることです。
宅建の勉強のアドバイスでは「とにかく過去問を何度も解いてください」と書いてあることが多いので勘違いしやすいのですが、実際にすべきアドバイスは「とにかくいろいろな問題を解いて問題文に慣れ、切り口が変わってもまどわされないように本質的な部分を理解する」だと思うのです。

わからなくても読む、と、意味を理解しながら読む、は一見すると相反する行為のように感じます。
実は私もそこでつまずきかけました。そこのバランスが非常に難しく、真面目にやろうとする人ほど悶々としてしまうのです。
ですので、意味が理解できそうな部分は意味を考えながら読み、少し考えても今は理解できそうになかったら、さらっと読んで次に進む、という割り切りが必要なのです。
「最初から意味が分からなくてこの先を読んでもわかるんだろうか?」と不安に思うかもしれませんが、必ずわかるときは来るので、どうか不安に思いすぎずに進んでいってください。

さて、日々の仕事に追われ、しばしば電池が切れそうになりながらも徐々に学習のペースがつかめてきて、毎日ちょっとずつでもテキストを読み進めることができるようになってきました。相変わらず一日何十分やったかなどは気にしません。
読み進めていくと、途中でやたらと長くて細かい記述が出てきます。特に法令の部分は数字や用語など暗記しなければならない事柄が満載です。
「市街化区域では1,000㎡未満は許可不要」とか「工作の事業を行うものがその農地(2アール未満のものに限る)を農業用施設として利用する目的で転用する場合は農地法4条の許可不要」とか「劇場・映画館・演芸場・観覧場・ナイトクラブについては、床面積が200㎡未満であれば、準住居地域・近隣商業地域・商業地域・準工業地域で建築できるが、200㎡以上のものは近隣商業地域・商業地域・準工業地域でしか原則として建築できない」とか。
知るか!そんなこと!!と言いたくなる記述が次々に出てきます。
なので、この段階で無理に覚えようとしないほうがいいです。
人の記憶ははかないものです。あまり早くから覚えても忘れてしまうので、暗記ものは無理に覚えようとせず、後半になって実際に問題を解きながら頭にいれていく方法で十分だと思います。
また、言葉だけで覚えようとすると難しいので、表に記されているものは視覚的に覚えることをお勧めします。

さて、学習をスタートしたときにはまだまだ時間はたっぷりある、と余裕があった私ですが、夏前にはだんだんとモチベが下がり始め、やる気が出なくなってしまうという状況に陥ります。
入門編3冊、応用編1.5冊分を読んだくらいのところだったと思います。
毎日手に取っていたテキストも2日おきになったり、3日おきになったり、やらなければという気持ちと、疲れているし面倒くさい、という気持ちのせめぎあいです。
7月~8月にかけてが受験期間中最大の危機だったかもしれません。

用語の渦におぼれ、相変わらずわからんことはわからんままで「こんなんで試験受けても受からるわけないわー」と疑心暗鬼になっていた私はついに禁断の言葉をつぶやきます。
「もう、受けるのやめようかなー」
横で聞いていた息子がすかさず「え?やめるの?」と聞いてきました。
予想外の反応の大きさに私は少し驚きつつも「だって、いくら読んでもわからないこと多いし。このままじゃ受かる気しなくてさ」。
すると息子はきっぱりと「いや、絶対続けたほうがいいって。今まで勉強したことが無駄になるのはもったいないし。受験するだけはしなよ!」と言ってくれたのです。
私はその言葉で奇跡的にやる気を取り戻しました。

そこから気を取り直して応用編の残りを読み始めます。応用編は単元ごとに説明文の後に過去問が載っており、読んでは解き解いては読み、の繰り返しです。
電車の中ではオンラインサポートですでに解いた中で不正解だった問題を解きなおしていきました。

試験の1か月前には模擬試験を受け、B判定が出て、合格まであと一歩というところまできました。

そして、ラストスパート!と言いたいところなのですが、またもや魔の手が押し寄せ私はからめとられてしまいます。
試験直前にAmazonプライムビデオで配信していたバチェラー3にはまってしまったのです。
「そんなの見ている場合じゃないだろ!」という私と「面白いから見たくなって当然だよねー」という2人の私がまたまたせめぎあいをはじめます。
結局、通勤時間と昼休みにご飯を食べながら勉強し、帰宅してからはバチェラーを見て、見終わったらちょと勉強して、という感じで、ついに試験当日を迎えました。
さすがに前日はほぼ徹夜で不安なところを読み返しましたが、過去問は1巡はしたものの、完全に2巡できないままで本試験に挑む形となりました。

試験を終えた直後の感想ですが「できたかできないかよくわからなかった」でした。時間ぎりぎりまで考えて全力を尽くせた感はあったので、とりあえず終わったという安堵感が強かったです。
ユーキャンで解答速報が出ると聞いていたので、試験会場近くのミスドに入り、iPhoneで解答速報のサイトにアクセスしました。
自分が回答した番号を入れていくと自動で採点してくれるサービスがあったので、さっそく問題用紙に書いておいたメモを見ながら自分の回答番号を入れていきました。

さぁ、運命の瞬間!採点ボタンタップ!!
『8点』
「・・・」

冷や汗もかかないほど固まりました。
そりゃ、自信はなかったけど、8点って・・・まさかそんな・・・
その数秒後に気が付くのですが、ユーキャンの先生方も試験直後に即座に全問解けるはずはなく、解答が出た問題から順にマッチングして点数が増えてくようになっていたことがわかりました。
ミスドの滞在時間だけでは速報が出きらなかったので、電車の中でもちょこちょこと再読み込みを繰り返し、16点、20点、24点、32点と点が伸びていき、最終的に自己採点38点となりました。
これなら合格間違いなし、と喜んだのもつかの間、合格予想を調べたら、36点や37点の予想もあり、安心できない状況となりました。
マークシートの付け間違いが2つあれば不合格の可能性もある、と思うと、合格発表までの1か月弱は生きた心地がしませんでした。

運命の合格発表日。
会社へ行く途中に宅建協会のサイトにアクセスして、自分の番号を見つけた時には本当に嬉しかったです。

さて、あらためてタイトルの問いについてですが、お読みいただいてもわかる通り、1時間以上勉強した日はほとんどありませんでした
ではなぜ合格することができたのか?
振り返って心当たることは「相当効率よく学習できていた」ということです。やはり学習開始当初から意味まで考えることを意識してテキストを読み、過去問を解くときにもなんとなく当たりはずれを見て終わるのではなく、この問題文はこの部分が間違い(では正解の言葉は何か)、この言い回しでは言っている意味が違ってくる、ことなどをひとつひとつしっかり考えながら学習できたことが勝因だと思います。
また、やるときは短時間でも集中してやる、ということも非常に重要な要素だと思います。

権利関係は最後まで完璧に理解することはできませんでした。でも受かることができたので、自信のない状態で試験に臨んだとしても、希望を捨てず試験当日は最善を尽くしてください。

あなたの合格を祈っています!


最後に・・・
途中くじけそうになりながらもやり通せた原動力は何だったのか?
それは月3万円の手当欲しさではなく、宅建士という資格がどうしても欲しかったわけでもなく、他でもない「有言実行する姿を子供たちに見せたい」という思いでした。
応援してくれた子供たちにまじ感謝(T_T)

◆私が間違いやすかった用語1
 事後届出 事前届出 1文字違いでうっかり見間違うことがありました。
◆私が間違いやすかった用語2
 指示処分 業務停止処分 最初のうちは「処分」という言葉だけで問題の正誤を判断してしまい、不正解が多かったです。
◆私が間違いやすかった用語3
 善意 悪意 法律の世界では「善意」は知らないこと、「悪意」は知っていること。
◆私が間違いやすかった用語4
 借地 借家 「借地」という概念がなく、途中まで区別をつけずに読んでいました。賃貸管理で部屋しか扱っていなかったことが災いしました。
◆私が間違いやすかった用語5
 債務 債権 こちらも1文字違いで最初のことは同じ言葉に見えてしまってよく問題を読み違えました。
◆私が間違いやすかった用語6
 以上 以下 未満 超える 数字が出てくるものはつい数字があっていると〇だと思い間違えました。必ず数字の後についている言葉まで見て判断しましょう。
関連リンク
・ユーキャン
https://www.u-can.co.jp/
・一般社団法人 不動産適正取引推進機構
http://www.retio.or.jp/exam/

サポートいただいたら寿命が延びます。たぶん💛