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第2回東大本番レベル模試 地理所感

総評:標準

基本的な知識を問う問題、知識をうまく活用して解答を導き出す問題、そして深い理解と分析力を要する問題と、バランスよく構成されたセットでした。完璧な解答を目指す問題と書けるところまで書く問題を見極め、時間内で点数の最大化を図る練習になったのではないでしょうか。模試においても本番においても、大切なのは「トータルで目標点まで持っていくこと」です。地理では難しい問題に固執することなく、コツコツ点数を積み上げていって下さい。もう夏ですが、まだ夏でもあります。解き直しを通じてこの模試からできるだけ多くのものを吸収し、また一歩合格へと近付いて下さいね。

第一問:標準

設問A:やや易

(1):年間を通して流量の変化が少ないエはヨーロッパの川だと瞬時に判別できるはず。各グラフの縦軸目盛りの数値が異なっている事に注意し、増水が雪解けによるものか雨季によるものか判断できれば、解答は容易でしょう。
(2):基本的な用語とその特徴を答える問題。教科書や資料集をよく確認し、本番では完璧に解答したいところです。
(3):これも基本的な問題。(1)のグラフの判読を行う際も、なんとなく行うのではなく理由を文章化して答える事を意識していれば、この手の記述はスムーズに書けるでしょう。
(4):問題文に提示された条件が多い、かつ二行問題なので、聞かれたことに沿って書いていけば問題ないです。地球温暖化の影響として、シベリアでの永久凍土の融解、それに伴うインフラの損壊、メタンガスの放出はスラスラと出てくるようにしておきましょう。ここでは住民生活への影響を答えることが求められているので、前者を答えるのが望ましいでしょう。
(5):aのライン川が国際河川としてヨーロッパの内航水運に大きな役割を及ぼしていること、そしてその背景には安定した流量があることはしっかり書き切りたいです。dの黄河の役割については答えにくい(世界史選択が有利かも)ので、aの部分で点数を確保するのが大切だと思われます。

設問B:標準

(1):傾斜角を計算する問題。最初は面食らうかもしれませんが、落ち着いて取り組めばできるはず。とはいえ、ここで時間を使いすぎるのは良くないので、混乱しそうだと感じたら飛ばすのもありです。
(2):尾入沢周辺は扇状地になっており、等高線が食い込んでいることから深い谷であると判読できます。豪雨の際に土砂災害が起きやすいと推測するのは難しくないでしょう。災害への措置として複数の堰が設置されていますが、堰の地図記号を知っている受験生は多くないと思われるので、できなくても落ち込む必要はないです。
(3):地形の名前は問題文に示されているので、それぞれの地形の特徴を思い浮かべながら、地図記号と照らし合わせて土地利用につなげていけば良いでしょう。しっかり得点したい問題です。

第二問:標準

設問A:標準

(1):まずは総計に注目し、次に形態別の内訳を見ていくと良いと思います。のちの問題に響かないとはいえ、ここで落としてはなりません。
(2):問題文中に、液体が主に原油や液体バイオ燃料を指すことが示されています。2種類の開発を解答すれば良いので、それぞれブラジルと関連するトピックを思い出せれば書けるはずです。
(3):自然条件について聞かれているので、地形と気候に分けて考えましょう。
(4):日本パートでの「事故→原発の稼働停止→化石燃料の輸入拡大」という流れはしっかり書きたいところ。指定語句「褐炭」の使い方が難しいです。ドイツパートでは再生可能エネルギーの生産拡大を抑えた上で、「脱炭素化」というキーワードを思い出せたかどうかが分かれ目となるでしょう。

設問B:やや難

(1):ボーキサイトからラトソルを想起するのは容易ですが、オーストラリアに限定されていることから、北部のサバナ気候が卓越する地域、とまで書き切るのは案外難しいと思われます。
(2):製造業の特徴として、ずばり規模の小ささを挙げられるかがポイント。
(3):まず指定語句「アルミナ」と「安定」から、アルミの精錬には大量の電力が要る、だから電力価格を安定させなければならない、という流れがイメージできるはずです。「広大」は「広大な自然」のような文脈で処理しておきましょう。これにプラスして問題文の条件に答えていきます。過去の生産条件について、「石炭」を使った火力発電中心だったことを思い出しましょう。ここでも隠れたキーワード「脱炭素化」が登場します。「脱炭素化」の流れの中で、自然エネルギーへの転換を図る必要がある、と書くのが解答ですが、簡単ではないでしょう。

第三問:やや難

設問A:標準

(1):正教の多いブルガリア、カトリックの多いフランスはすぐ判読できます。ドイツとデンマークで迷うかもしれませんが、北欧はプロテスタントの割合が高いこと、また(3)を手がかりにすれば難しくないです。
(2):ヨーロッパにおけるムスリムの増加については典型的な問題です。フランスとドイツそれぞれの国とムスリムの関係について、しっかり区別して記述しましょう。
(3):これも典型的な問題です。東西ドイツ統合による産業の空洞化の流れ、そしてその影響を大きく受けたのはガストアルバイターである、という2点は正確に書けるようにしておきましょう。
(4):多民族国家に関する知識問題。絶対に落としてはならない問題です。
(5):丁寧に見ていけば満点が取れる問題です。まず各国の抱える言語問題を個別に考えてみましょう。ベルギーでの言語紛争、スペインにおける独立運動を思い出せれば、共通項として「民族間の対立」が導き出せると思います。スイスの抱える言語問題についてパッと思い浮かぶことがなければ、先に日本について考えてみましょう。アイヌを巡る問題を思いつくのは難しくないと思います。スイスと日本の共通項として「少数言語の消滅」を挙げましょう。ついでにスイスにおけるロマンシュ語の危機について押さえておくと良いのではないでしょうか。

設問B:難

(1):難しい記号問題です。カロリーベースの食料自給率は選択しやすいと思いますが、耕地率、耕地利用率についてしっかりとした理解がないとその先に進みません。この機会に理解を深めておきましょう。
(2):結局は集約的農業と粗放的農業の対比について記述させたい問題です。このほかにも労働生産性と土地生産性の対比など、頻出ですが曖昧な受験生も多いと感じます。しっかり復習しましょう。
(3):最後に登場する上に丁寧な分析を要する問題です。(1)の時点でイが耕地利用率に相当すると自信を持って解答できていればスムーズですが、なかなかそうも行かないと思います。まず上位の佐賀と福岡を見て、小麦の栽培が盛んであること、そしてそれが二毛作で「冬」に栽培されると思い出せれば分析が進みます。麦はお酒に加工されますね。下位の県はその逆ということです。低地の少ない「中山間地域」にあり、過疎のために耕地が活用しきれていないのです。

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