2024年8月実施 第2回東大本番レベル模試 スタッフによる所感【化学】
全体概観:標準
知識を問われる問題と複雑な計算を必要とする問題がバランスよく揃ったセットでした。第一問は有機化合物の構造決定についての問題で、既習かどうかで大きく差がつきそうです。東大化学では有機化学から第一問が出題されることが多いためしっかり勉強しておくと良いでしょう。第二問、第三問は無機と理論から出題されており、およそ等量の知識問題と計算問題で構成されていました。安定して得点するためには知識問題をしっかりと合わせ、取捨選択して計算問題を解くことが重要になってきます。模試や過去問を通して取捨選択の腕を磨いていきましょう。また、未習範囲や演習を十分つめていない範囲もあると思いますので、点数で一喜一憂せず、よく復習して今後の勉強の指針として活用しましょう。
第1問
I:標準〜やや難
バーチ還元という高校学習範囲でない反応からの出題でしたが、問題全体としてはそれほど複雑ではなく注意深く問題を読めばしっかりと得点できる問題でした。高校範囲外の反応を用いた構造決定は頻出なので、知らない反応に驚かずに解いていきましょう。
ア:酸化還元についての理解を問われる問題でした。
イ:アセチレンとナトリウムアミドの反応についての問題でした。知識問題なので、アセチレンと塩化水素の付加反応と一緒に覚えておきましょう。
ウ:中和反応についての問題でした。水の発生しない中和反応もあることを覚えておきましょう。
エ:元素分析の結果と化合物の性質から構造式を導く問題でした。考えなければいけない要素や必要な知識が多く、構造決定の演習量の違いで差がつく問題だったのではないでしょうか。Cの物質量を1として他の元素の物質量を求めると物質量比を求めやすいです。
オ:ジアゾニウム塩の加水分解についての問題でした。塩化ベンゼンジアゾニウムを加水分解して窒素とフェノールを作る反応から連想できたのではないでしょうか。間違えてしまった人はジアゾ化周りについてまとめて覚えておきましょう。
カ:バーチ還元を用いる問題ですが、バーチ還元については問題文で例が述べられているため、メチル基の酸化やエステル化について十分理解していれば解ける問題でした。
II:標準
アミノ酸の配列決定についての問題でした。Ⅰと同様に演習量で差がついた問題だったのではないでしょうか。
キ:知識問題でした。アミノ酸が水溶液中で陽イオン、陰イオン、双性イオンの平衡状態になっていることを理解していれば解けたのではないでしょうか。
ク:知識問題でした。ビウレット反応のことを忘れていた人は、アミノ酸関係の検出反応について覚え直しておきましょう。
ケ:ペプチドの構造決定についての問題でした。検出反応等だけ覚えてしまえばN末端とC末端の区別以外は他の構造決定と同じなので演習を積んで慣れていきましょう。
コ:アミノ酸の平衡状態についての問題でした。間違えた人はよく解答を読んでおいてください。
第2問
I:標準〜やや難
標準電極電位についての問題でした。計算が複雑だったため、途中で計算を間違えてしまった人が多いのではないでしょうか。見直しのために簡潔に途中式を残すように心がけましょう。また、知識問題と方針だけ答えて問題を飛ばしてしまうのも一つの戦略でしょう。また、飛ばしてしまった場合には試験後に、答えを見ずに一度解いてみましょう。
ア:知識問題でした。
イ:イオン化傾向と標準電極電位の関係について知らない人でも問題文をよく読めば、「標準電極電位の低い金属ほどイオン化傾向は大きくなる」と書いていることに気付けたと思います。問題文から必要な情報をきっちりと抜き出すことは非常に難しいため、よく練習するようにしましょう。
ウ:計算問題でした。
エ:計算問題でした。
オ:計算問題ではありましたが、設定が複雑だったため立式から間違えてしまった人も多かったのではないでしょうか。
II:標準〜やや難
ヨウ素滴定による定量をメインテーマとしていました。前半は無機の知識について、後半は理論についての問題でした。理論と無機の融合問題では後半が前半に比べて考えることが多く解きにくい問題が多いため、計算に詰まってしまった場合には思い切って飛ばしてしまってもいいかもしれません。
カ、キ:知識問題でした。ハロゲンについてまとめて覚えておきましょう。
ク:化学反応式を作る問題でした。作った化学反応式を後の問題で使うことが多いため正確に半反応式、全反応式を作るように心がけましょう。
ケ:ヨウ素滴定についての問題で、実験でどのような反応が起きているのかを正確に理解し、立式することが求められていました。
コ:ケと同様に実験での反応を正確に理解することが求められている問題でしたが、ケよりも複雑だったため正しく立式できなかった人も多いのではないでしょうか。配点に対して問題を解くのにかかる時間が長いため飛ばしてしまってもいいかもしれないです。
第3問
I:標準〜やや難
結晶格子の基本事項についての問題でした。目新しい問題が少なかった一方で、計算量が多く試験時間内に解ききれなかった受験生も多かったのではないでしょうか。きつい時間制限の中でより高い点数を取るにはうまく取捨選択することが大切です。
ア:金属の延性、展性の理由についての問題でした。東大理科ではこのように性質の理由について聞かれることが多いため、普段の勉強から理由について考えると良いです。
イ:単位格子の性質についての問題でした。しっかり取り切りましょう。
ウ:単位格子の充填率についての問題でした。落ち着いて計算しましょう。
エ:二種類のイオンが含まれる単位格子についての問題でした。自信がない時は単位格子中に含まれるイオンの数を全て数えましょう。
オ:限界イオン半径比を求める問題でした。(r-)+(r+)についての条件とr-についての条件から(r+)/(r-)についての条件を求める方法をよく覚えておきましょう。
カ:3種類のイオンで構成される結晶の密度を求める問題でした。単位格子中の粒子の数を数え間違えないように気をつけましょう。
キ:陽イオンの半径の大きさと配位できる陰イオンの数について問う問題でした。
II:やや易〜標準
固液平衡についての問題でした。図3―4のXとYの混合物の相図についてそれぞれの領域が何を表しているのかを判断しにくい一方で、分かれば比較的簡単に解ける問題だったのではないでしょうか。
ク:図3―4のそれぞれの領域が何を表しているのかを聞く問題でした。問題文中の「XとYは固相ではまったく溶け合わず液相では完全に溶け合う」という記述が重要でした。
ケ:定圧で温度を下げた時の質量比についての問題でした。「XとYは固相ではまったく溶け合わず液相では完全に溶け合う」という記述から曲線ABに沿って溶液が変化することに気づければ解けたでしょう。
コ:曲線ABの範囲外での状態について問う問題でした。X,Yが共に全て固体の時、X,Yの固相での質量比はX,Y全体の質量比と等しいということは当たり前のことですが、焦っているとなかなか思いつかなかったかもしれません。
サ:温度を変化させた際の状態変化と温度変化について記述する問題でした。X:Y=3:2だったため、比較的簡単だったのではないでしょうか。質量比が異なる場合についても考えてみてください。
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