🎹萩原千代ピアノリサイタル＠自由学園明日館

昨日、8月がスタートしました。
ちょうど1ヶ月前の7月1日に
自由学園明日館で萩原千代デビュー20周年記念の
ピアノリサイタルを開催しました。

2年前に出会い、
意気投合した
ピアニストの萩原千代さん。

千代さんが紹介してくれたカール・フィルチュに
私は一目惚れしてしまいました。

小中学生の頃、
ウイーン少年合唱団の追っかけをしていた私は、
ストレートに心を射抜かれました。

ショパンの愛弟子と言われたカール。
リストにも才能を認められていたカール。
なのに、ほとんど知られていないカール。

カールの曲のリサイタルに備えて
彼の生涯の物語を学びました。

翻訳されたものはないので
英語のテキストを読む他ありません。
コツコツ訳して、
私はカールを身近に感じていきました。

1年以上前に自由学園明日館使用の
「抽選」から始まった
長い準備期間を経ての開催。
万感の思いがありました。

158㎝と小柄ながら最高の音のいベヒシュタイン

🎵プログラム

舟歌　カール・フィルチュ　/ 編曲 萩原千代     千尊鐘

1 コラール   カール・フィルチュ
2 言葉のないロマンス   カール・フィルチュ
3 練習曲 作品8   カール・フィルチュ
4 夢想の音楽　ヨゼフ・フィルチュ
5 アンダンテ 作品1 No.1  カール・フィルチュ
6 ノクターン 作品1 No.2   カール・フィルチュ
7 ハンガリアンメロディーズ Op.1  ヨゼフ・フィルチュ

〜休憩〜

8 マズルカ  カール・フィルチュ
9 マズルカ Op.13 No.1   ヨゼフ・フィルチュ
 マズルカ Op.13 No.2  
 マズルカ Op.13 No.3    
10 舟歌  カール・フィルチュ  
11 序奏と変奏(ベルリーニのオペラ“海賊”のテーマより)  
　　カール・フィルチュ
12 ヴェニスの別れ   カール・フィルチュ

萩原千代による曲紹介

1コラール　　カール・フィルチュ

コラールは1839年、フィルチュ9歳の時の作品である。
この作品は9歳の少年音楽家が書いたものとしては信じがたい程の完成度の高いものである。誰にも献呈されてない。

2 言葉のないロマンス　Romanze ohne Worte  カール・フィルチュ

この作品は1840年に作曲された。フィルチュの自筆で"アポ二ー伯爵夫人へ、あなたの愛するカール・フィルチュより友情の証です"と残されている。
ホ短調から同主調のホ長調への転調は美しい旋律を伴い、表題の通り言葉がなくとも十分な詩情を感じられる。

3 練習曲　作品8 Etude op.8 カール・フィルチュ

フェレンツ・エルケルに献呈されたこの練習曲はショパンの影響を受けていることが充分に感じられる。
超絶的な技巧と華やかな部分であるArpeggio、コラール形式の静粛な部分であるSostenuto。双方とも高度な演奏テクニックを持たなければ困難な演奏技巧を取り入れている。

4 音楽の夢想　ヨゼフ・フィルチュ

1860年、作品15としてクロプシュタイン男爵夫人(旧姓フェク)に献呈さるた。
タイトルの通りまるで夢の中で音楽が聴こえてくるような、穏やかな感覚を感じられる曲である。

5 Andante op.1-1(アンダンテ 作品1-1) カール・フィルチュ

この作品は、恩人であるJannette Banffy男爵夫人に献呈された。
ウィーンで勉強を始めた1838年から39年にかけて書かれた作品である。
曲の途中には転調を含んだ簡潔なCadenzaが演奏される。
そのその生き生きとした対比の表現はとても鮮明である。

6 Nocturne op.1-2(ノクターン 作品1-2) カール・フィルチュ

アンダンテと同時期にウィーンで作曲され、
この作品はフィルチュの師であるショパンに献呈されている。
導入部のAllegro moltoは個性的で、まるで英雄をたたえる讃歌のように聞こえる。
後に続くAdagioは静粛な美しい旋律に始まり、しだいに情熱のピークへと進行する。
終結は突然の静寂が置かれている。
独創的なこの作品は、なんとフィルチュ9歳の時の作品である。
限りない創造力の可能性を秘めたこの少年にショパンが虜になったのもごく自然なことだったのかもしれない。

7 ハンガリアンメロディー　ヨゼフ・フィルチュ

5つの小曲からなるヨゼフの作品1。
ムッシュ・ル・コントに献呈されたこの曲は、小曲ごとにそれぞれのキャラクターを持ちハンガリーの独特の音楽感を彷彿させる。

8 マズルカ　Mazurka  カール・フィルチュ

マズルカは3拍子のポーランド民族舞踏である。この作品の旋律は詩を思わせるような美しさで、独特な転調とともに強い個性が感じられる。小さい形式の中にフィルチュの心情が凝縮されている。

9 ３つのマズルカ　作品13    ヨゼフ・フィルチュ

1860年、ヨゼフが47歳の時に作曲された作品。イザベル・コヴァチェヴィッチに献呈されている。1番と3番は変ト長調、2番は変イ長調で書かれている。

10 舟歌　Barcarolle  カール・フィルチュ

この作品はメンデルスゾーンの『無言歌集』の影響を受けている。8分の6拍子が漂う波間を表し、その上に美しい旋律が自由に歌われる。その滑らかな旋律は心地好く、叙情的である。

11 序奏と変奏　(ベルリーニのオペラ"海賊"のテーマより)
　カール・フィルチュ

Introduction und Variationen über ein berühmtes Thema aus der Opera “Die Piraten “ von V.Bellini

この作品は当時フランツ・リストの一番のライバルであったピアノの巨匠ジギスモンド・タールベルクに献呈された。穏やか調子で始まることが多い他のフィルチュの作品とは異なり、序奏から即興の重要性と高度に洗練された演奏技術を必要とする。平穏なテーマから始まり、第一変奏は主題の形を崩さずに古典風に書かれている。第ニ変奏は半音階の連続で行進曲風である。第三変奏は師であるショパンへの深い敬愛の念を表した間奏曲でノクターンに類似している。右手で弾くオクターブのテーマは、まるで月に照らされた情景を表現しているようである。第四変奏は情熱的な力強い和音が続き、バリエーションの終結を感じさせる。それに続くフィナーレではそれまでのキャラクターとは異なった旋律や劇的な変容ぶりが見られる。フィルチュのたぐいまれな才能を見いだすことができる部分である。

12  ヴェニスの別れ　Das Lebewohl von Venedig
　　　カール・フィルチュ

1844年に書かれたこの作品は、ヴェネツィアでの滞在の間、フィルチュを支えた聖職者のテオドール・ヴィットヒェンに献呈された。またトランシルヴァニアの家で最後に過ごした際、世話をしてくれた姉のスージーの愛と献身への感謝でもある。暗く陰気な前奏から始まり、その後の旋律やハーモニーは単純でありながら慰め、不安、愛情、様々な情緒を感知することができる。そして緩やかに上昇する輪郭は天国への昇天を象徴し、最後の絶頂への加速は永遠と荘厳を意味する。その直後には一時的な間があり、これは"死"を表現している。後奏はAdagioで死への恐怖を落ちつかせる様な寛容な印象を私たちに与えてくれる。

萩原千代　プロフィール

萩原千代は、夭折の天才作曲家カール・フィルチュ作品の日本での第一人者として注目されているピアニストである。
東京音楽大学卒業後、ルーマニア国立トゥルグムレシュ交響楽団及び同国立ディヌ・リパッティー交響楽団などと共演を重ねる。 その間、ショパンの愛弟子であるカール・フィルチュ(現ルーマニア領出身)の作品と出会い、フィルチュ研究の第一人者であるCsíky Boldizsár氏に師事した。2010年と2012年の2回にわたり「カール・フィルチュの世界」と題し、旧東京音楽学校・ 奏楽堂にて日本初演となるリサイタルを開催。知られていなかったフィルチュの作品を紹介し、音楽誌などで高く評価されている。
ルーマニア以外でもフランスで定期的なサロンコンサート、リサイタルで演奏。バロック、古典期の作品を美しい音色と精巧な解釈で演奏するピアニストとして称賛された。2016年6月にフィルチュの日本初盤となるCD「ショパンの愛弟子 若き天才作曲家 カール・フィルチュの世界」を発表。その中の数曲がNHK「クラシックの迷宮」でとりあげられ、放送された。またそのCDに関する情報は日本経済新聞 文化面に大きく取り上げられた他、音楽雑誌にも数多く取り上げられている。

2017年4月、ビルボード・ジャパン・クラシック・トップ・アルバム2週連続第1位。
その他にもユニークな活動として、「かのやばら園」(鹿児島)での、”世界の野ばら 91曲全曲演奏”や、同地で瀬戸口藤吉コンサートを開催している。

またミュージカルや海上自衛隊に嘱託され「第1航空隊隊歌」(2009年)などを作曲している。 最近の話題では、カール・フィルチュの2枚目のCDが、2018年、クラシック音楽の月刊誌「レコード芸術」9月号にて準推薦盤に選ばれている。同年9月、クルージュを含む多くのルーマニアの都市に招かれ、カール ・フィルチュを中心としたプログラムでコンサートツアーを行う。話題性の大きいそのプログラムと演奏の音楽性は高く評価され、各都市で絶賛された。

2019年9月、ルーマニアを代表する作曲家、ジョルジュ・エネスクも招かれ演奏したシナイアのペレシュ城でピアノリサイタルに招かれ演奏する。
ルーマニア国立ディヌ・リパッティー交響楽団と長きにわたり尾崎晋也氏と共演、バッハのピアノ協奏曲全曲を演奏している。

2023年5月、ルーマニア ・セベシュ（カール・フィルチュ生誕地）にて行われた”Musical Days Carl Filtsh “に招かれリサイタルを開催。
カール・フィルチュ研究の功績を称えられ、
セベシユ市より”Distinction of Excellence “（特別優秀賞）を授与された。

2023年、デビュー20周年記念ピアノリサイタルをルーマニアと日本の各地で開催。2020年7月には、自身初のオリジナルCD ピアノ組曲"詩と舞""海"を発表。 同年同月には"萩原千代写真展"を京都にて開催。 2020年より久乗おりんを使って独自のスタイルで演奏する千尊鐘(せんぞんしょう)の第一人者。日本で古くから親しまれている鈴(りん)と、さまざまな楽器と組み合わせた自由な現代音楽を創り出している。2021年3月に千尊鐘初のオリジナルCD "千尊鐘""組曲 天岩戸"を発表。寺社や、ホール、イベントなどで演奏。
2017年11月、神奈川県大和市より、大和市文化芸術顕彰 文化芸術未来賞を受賞。 2019年6月、フランス国際ピアノコンクールグランプリファイナル アーティスティックエクセレント部門3位入賞。2023年3月、オンラインコンテスト "岡山杯" 入選。東京音楽大学音楽学部音楽学科器楽専攻ピアノ卒業。 ピアノを藤澤弥生、木村徹、尾崎晋也、吉田豊、小林仁、純子マッサーリア、Csíky Boldizsár、Csíky Boldizsár Jr.の各氏に、作曲をCsíky Boldizsár 氏に師事。

(委嘱作品)
2009 年9 月 海上自衛隊第１航空隊 隊歌作曲。
2011 年5 月 鹿児島県姶良市立姶良小学校 歯磨きソング作曲。
2013 年4 月 豊島区制施行80周年記念事業 ムジカフォンテ公演No.40
ミュージカル「朝の光のその中で～80 歳のいけふくろう」を作曲。

(オリジナル作品)
2020年8月　自身初のオリジナルCD ピアノ組曲"詩と舞""海"を発表。
2021年3月　千尊鐘初のオリジナルCD "千尊鐘""組曲 天岩戸"を発表。
2022年9月  竹久夢二の詩を元にした歌曲集"恋するこころ"を発表。


(アート作品)
2021年8月　辻本光男写真工房にて、自身初の絵画個展〜冨賀千代　絵画写真展〜を開催。(京都)


(エッセイ作品)
2023年3月　第2回朝日新聞Reライフ文学賞　短編部門　入選。
2023年5月　北斗書房 エッセイコンテスト　入選。

千代さんとカール・フィルチュとの出会い、
カール・フィルチュの人生と
兄　ヨゼフ・フィルチュの人となりを
これから少しずつ語っていきたいと思います。

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