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📗アンの娘 リラ📗 初の全文訳!大いなる感動


暮れから風邪気味で寝正月を決め込み、
テレビも見ずに、
SNSも開かずに
ずっと文春文庫「赤毛のアンシリーズ」最後の
『アンの娘リラ」を読んでいました。

松本侑子先生の全文訳は注釈が素晴らしく、
原文と本文と注釈を読むには
かなりの集中力も必要でした。




『アンの娘リラ』(原題:Rilla  of Ingleside)は、
ルーシー・M・モンゴメリが1921年に発表した長編小説で、
アンの末娘リラが主人公になっています。

第一次世界大戦という時代背景の中で、
これまでのアンシリーズにはない重いテーマが
14歳から19歳までの少女リラの目を通して描かれています。


前作「虹の谷のアン」(原題 Rainbow Valley)も、
アンは母として登場するだけで、
主人公はアンの子供達でした。

最終巻である本作では
アンは48歳、夫のギルバートは51歳です。
こうしてみても、アンシリーズは「大河ドラマ」です。

ブライス家の子供たち


ブライス家の6人の子供たちのことを
ざっと紹介したいと思います。


長男 ジェイムス・マシュウ・ブライス


最初の女の子ジョイスは生まれてすぐに亡くなりました。
アンは深い悲しみを味わいますが、1893年に男の子を出産します。
アンと親交の深かったジム船長と、大好きなマシュウにちなんで、ジェイムス・マシュウと名付けられました。通称ジェム。長男に相応しく最も勇敢でリーダーシップに富んでいて、父ギルバートの後継者になるべくレドモンド医科大学に通っていました。
戦争勃発にニュースを聞くと、直ちに志願兵となり戦地も赴いていきます。
愛犬マンディは「忠犬ハチ公」のように、駅で彼を待ち続けます。
ジェムが消息不明となった時も、マンディが駅で待っている以上、
絶対に帰ってくると誰もが確信しました。

次男 ウォルター・カスバート・ブライス

1894年生まれ。
アンが生まれてすぐに亡くなった父、ウォルターと、マリラとマシュウのカスバートにちなんで名付けられました。
繊細な感受性、文学の才能をアンから受け継いで、3人の息子の中でも最もハンサムと言われています。美しいものが好きで夢想家の彼は病弱で戦地に赴くことはないだろうと思われますが、幼い子供たちが犠牲になることに心を痛め、信念を持って出征し、1916年9月、22歳で銃弾に倒れました。

長女(二卵性双生児) ダイアナ・ブライス

1896年生まれ。
名前はアンの腹心の友であるダイアナ・バーリーから
名付けられました。
母譲りの赤毛、父譲りの頭脳を持つ優秀な長女タイプ。

次女(二卵性双生児) アン・ブライス

1896年生まれ。
母アンの名前を譲られましたが、通称はナンと呼ばれています。
容姿はアンに似なくて、色白の美人ですが、想像力に富んだ性格はアンによく似ています、

2人はレドモンド大学に通っているので、残念ながら最後の巻にはあまり登場しません。

三男 シャーリー・ブライス

1898年生まれ。
鳶色の髪と目を持つシャーリーはスーザンの秘蔵っ子。
名前はアンの旧姓シャーリーから取られています。
物語が始まる時は16歳ですが、ウォルターが戦死した後に、
航空隊へ志願して戦地に赴いていきます。

三女 バーサ・マリラ・ブライス

1899年生まれ。
アンの育て親のマリラ、実の母のバーサの名前から付けられられ、
リラと呼ばれています。
大好きな兄ウォルターから呼ばれる「リラ・マイ・リラ」という愛称を
好んでいます。
この物語は14歳のリラの初めてのダンス・パーティーから始まります。
遠いヨーロッパで起こった戦争にカナダは義勇軍を送ることになります。
舌足らずの甘えん坊のリラが自立した女性へと成長していきます。

あらすじ

「虹の谷」で豊な愛情の中で育ったブライス家の子供達と、牧師館の子供達もすっかり成長して、それぞれ進学して、家を離れていました。
一番年下のリラはいつまでも子供扱いされることに憤慨しながらも、最愛の兄ウォルターの友人で、ハンサムなケネスに恋心を持つ少女になっていました。
やっと社交界にデビューするダンスパーティーの夜、第一次大戦が勃発し、すぐに長兄ジェムが戦場へと赴いていきました。
ジェムの愛犬マンディはジェムを見送った駅舎から離れようとせず、ずっと帰りを待つようになりました。今までの暮らしは様がわりしていき、大切に育てた息子を戦地を送ることになったアン。気持ちは沈みがちになっていました。

戦地に行くことはままならなくても、赤十字を通じての奉仕活動をすることで、リラは自分の責務を果たそうとします。
そして、ひょんな成り行きから、戦争孤児を育てることになります。

何一つ自分の判断でできなかったリラが、赤ん坊のジムスの面倒を見ることで、変わって行く様が描かれています。
愛する兄の死を経験し、彼の遺言と言える信念を持ち続けて生きることを決意するリラ。
涙無くしては読めない物語です。


2024年最初に思うこと

1899年生まれのリラは1900年2月生まれの祖父と
同学年ということを知り、
俄かに身近に感じられました。

人類初の世界大戦・・・
それはサラエボで始まりました。
カナダに住む人たちにとって、
ヨーロッパは遥か遠く、
戦争がなければ、全く見知らぬ場所でした。

しかし、戦況が知らされるたびに、
新しい地名を知り、
そこでの戦禍に心を痛めました。

テレビもラジオもない時代。
知らされるニュースは新聞に限る時代。
もどかしくても、何も手につかなくても、祈りながら
淡々と毎日の生活をすることしかできません。

元旦に石川県を襲った大地震の映像、
2日に起きた羽田空港の大惨事。

繰り返し流れている映像をみていると、
その映像の何が真実で
何がフェイクなのかわからなくなります。

専門家と言われる人たちの私見にすぎなくても、
あたかもそれが真実のように
伝えられていることもあります。

視覚に残る情報はたくさんあるけれど、
本当にことは隠されているような気がしてなりません。

テレビも見ずに、
SNSも遠ざけ、
ひたすら読書をしている私は
「現実をみていない」と言われるかもしれません。

この新しい年は
これまで以上に
自分の信念が大切な年になるように思えます。

「アンの娘リラ」は不安な状況の今こそ
読む価値があると思います。

松本侑子先生による翻訳の
どこがどうすごいのかを
少しづつ書いていきますので、
どうぞお楽しみに。

アンシリーズのカバーは全て
漫画家の勝田文先生が手掛けられました。

「アンの娘リラ」のカバーは
ジェムを待ち続けるマンディ
ウォルターがフランドルの戦場で見た赤いけしの花
シャーリーの飛行機が描かれています。


背景に十字架が続くカバー、
口絵、扉、目次は
ムシカゴグラフィックの長谷川有香先生の
手によるものです。

赤毛のアンが「大河小説」だったと
初めて知った皆様、
ぜひぜひお手にとってお読みください。

次回は
松本侑子先生の素晴らしい注釈について
まとめます。


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#愛読書

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