Teardropをめぐる空耳

Massive AttackのTeardropという曲があります。
洋楽を聴くことが人格の都会化のための必修科目だと信じた中学生時代のぼくが無数に手に取ったCDの中では、ひときわ尖っていて、異質なアルバム”Mezzanine”

暗く響くエレクトリックな曲ばかりのそのアルバムの中で、唐突に空から降ってくるようなチェンバロのリフ、力強いピアノ、美しい女性ボーカルのメロディ。
どこか現実感がなく、神々しい夢のようだけれど、なぜか力強さも感じさせる曲です。

歴史的な名曲で、発表から四半世紀が経つ間にしばしばドラマの挿入歌になったりもしているので、知っている人も多いと思います。
(個人的に印象深いのはPrison Breakの脱獄結構前夜です。)

つい先ほどApple Musicをランダム再生していたら、この曲が流れてきまして、USB-DAC経由で聴いていたこともあり「おほー。耳が幸せ・・・」と思いながら浸っていました。
ふと目をスマホの画面にやると、当たり前のように歌詞が表示されていて、ぼくは衝撃を受けました。

今も覚えているのですが、1998年に日本で発売されたMezzanineには歌詞カードなんて軟弱なものは付随していませんでした。輸入盤だからというわけではなかったはずで「ああ、こういう音楽においてはそういうのは無粋なのか」と訳知り顔で知ったかぶりました。今と違って、歌詞がどこかにポンと公開されている時代でもなかったですし、口ずさみたくなるような曲が入っているわけでもなかったので、自然に、なんとなく空耳しながら聴くということをしてきました。それが当たり前だったので、今の今まで、ぼくはTeardropの歌詞を全然知らなかったのです。正直に言うと、英語以外の言語も混ざっている曲だと思っていたのです。
四半世紀続いた謎が唐突に解明された衝撃の新鮮さが薄れないうちに(超今更な)歌詞の振り返りをしておきたいと思います。

Love, love is a verb
歌い出しのフレーズですが、マジで呪文だと思っていました。
今聞いても、「ぐらー・ぐらー・ふぃぃそふぇー」としか聞こえない。

Fearless on my breath
一番繰り返されるセンテンスですが、breathは、prayerだと思っていました。絶対 th って言ってないし!

Gentle impulsion
マジで最大の難所。非英語的な響き。
Gentleの部分を本気で「チンタオ」だと思っていました。「なぜいきなり青島?」。その後の単語も「ウンパオシャン」みたいな中国語だと思っていました。今聞いてもそう聞こえる。

Water is my eye
Most faithful mirror
Fearless on my breath
Teardrop on the fire
Of a confession
Fearless on my breath
Most faithful mirror
Fearless on my breath
ポストの本題から逸れますが3つ目のVerseの歌詞は(割と意味不明だけど)本当に美しいと思います。

You're stumbling in the dark
You're stumbling in the dark

2回繰り返されるだけで、何とも言えない余韻を曲に与えているこのOutroですが、Yes, tumbling a guitarだと思っていました。脳内ではギターをぶん投げる天女の姿がMVのように流れていました。

Outroに関しては tumbling の前の s音はしっかり聞こえているので、stumbleだと気づいて然るべきだったし、そもそも何が「Yes!」やねん、と反省(?)していますが、他は今聞いても聞こえないので反省していません。
やや舌足らずな歌い方が魅力のひとつとなっている曲でもあるので、空耳で楽しんできたのも悪くなかったかなという気もします。
マドンナが歌う可能性もあったそうですが、マドンナだったらもう少し聞き取れた気がする!!

思ってみれば、昔聞いていた洋楽ってだいたいこういう空耳で聞こえたまま聞いていました。歌詞を知る方法も全然なかったし。
(バンドスコアとか買うとかはあったのかもしれないけれど、思いもつかない。)
(ぼくの中の典型はKenny LogginsのDanger Zoneで、歌詞は全然知らなかったけど、母親の持っていたカセットテープに合わせて、すごくそれっぽく歌うことができました。)

でも、今、歌詞を知って、曲の世界観に更に入り込むことができたかなぁという気もします。

あと、繰り返しになりますがMezzanineはとても良いアルバムで、Teardrop以外もステキです。
1曲目から始めて、3曲目のTeardropを堪能してからの、4曲目のInertia Creepsが好きです。トトノイ時間の後にまた入るサウナみたいです。冒頭、民族音楽みたいな雰囲気からの鋭いドラムへの転調の部分がとっても好きだった。ついつい4曲目で切り上げてしまうけど、5曲目以降もステキです。
よかったら聞いてみてください。

おわり

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