川辺の山辺の里〜西郷工芸の里〜

鞍田崇さんの民藝のお話がふるさと鳥取で直に聞けるチャンスとあって、大阪から駆けつけた。
ここは、鳥取市河原町牛戸。牛ノ戸焼は180年以上続く窯だが、この里に中井窯、やなせ窯、花輪窯とある陶磁器の里。そして木工やガラス工芸の工房もでき、今後さらに豊かに発展しそうな工芸の里がここにできていると知る。

鳥取東部を縦断する千代川に流れ込む曳田川に沿って車を走らせると、小雨の中、霧たつ山々が日本画の連なりのように迎えてくれる。柔らかく穏やかな、そしてしっとりとした景色。この地を愛する人々の手が丁寧に入っている里山の風景。商業的なものを何も感じさせない、そして生活の感じられる村々、民藝の心がそのまま自然になったような景色。

部落の中心の公民館で、この里の事業としての講演会とシンポジウムの熱気と内容の濃さ。
柳宗悦が我孫子で始めた新しい民藝の動きに重なるような、この西郷での試み、この10年でさらに作家の移住を10人増やす計画とのことだが、作家でない私も早速移住したくなるような美しく、かつ熱い何かが生まれている場所である。

シンポジウムでは、この地でものづくりをする皆さんのお人柄がそれそれに感じられ、とてもよかったが、作陶をする方々は、なんとなく陶磁器のような重みや質感の感じが、木地師の方には木の碗のような滑らかで軽やかな感じが、そしてガラス作家の方には、硬質で透明な感じが感じられたのは、私だけだろうか。そしてこの村全体が彼らやこれからやってくるだろうものづくりをする人たちを、誇りと愛情を持って応援している感じが感じられて、とても暖かな気持ちになった。

学校の休みにはよく過ごした母の実家がここから近く、よく似た景色の中で育った私には、その原風景の濃縮版のような里でもある。
人の心がそのまま景色に現れている。
そう思いながら、河辺を下って帰ってきた。この里からの豊かな発信に、私も何か関わりたいなと思いながら。


西郷地区のホームページ http://chiiki.city.tottori.tottori.jp/saigo-1/inaba-saigo/index.html

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