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ガニメデ戦記Zeroのデザイナーズノート

今回もたくさんの出来事がありましたが、トラブルはなく楽しくゲーム製作ができました。
自分たちの趣味全開のゲームですが、どんなふうに作ってきたかを紐解いてみたいと思います。

ガニメデ戦記Zeroの着想

2019年の春のこと、リゴレでOKAZU brandの林さんと『ミスティックヴェール』を遊んだときに、透明カードを使ったゲームを作りたいという衝動にかられました。自分だったら何を作るかを考えたときに、開発中だったガニメデ戦記をすぐに思い浮かべました。
ガニメデ戦記は210X年の話、時代背景をそれよりも前にして、メックの種類は少ないけど装備をいろいろ交換して戦うゲームにしよう。ゲームのコンセプトはすぐに固まりました。

クリアカードの試作

とにかく透明カードを作りたいという気持ちが先行してまずはテストキットを作りました。
作ろうと思い立ったのは、印刷所の印刷メニューにクリアファイルというのがあったからです。「そっか、クリアファイルに印刷できるのか」と気軽に考え、手元にあるクリアファイルにインクジェットプリンタで印刷してみました。
が、失敗。インクがはじかれ、指でこすったら跡形もなく消えました。
他に何かないかと考えて浮かんだのがOHPシートでした。今から30年ほど前の、プロジェクターが普及してない頃に良く使っていたものです。今でも売っているんですね。
インクジェットプリンタ用のOHPシートを買ってきて印字したところ、インクは定着したけど発色が悪い。どうしたらいいんだろうと考えあぐねてるときに、クリアファイルを見てみると、裏が白く塗られてる。そうだ、裏を修正液で塗ればいいんだと思いつき、トライしてみたら、見事に成功。こうしてテストプレイが出来るようになりました。

ゲームシステムのデザイン初期

僕の中では武器カードを重ねるのがおもしろいのであって、戦闘フェイズは答え合わせのような位置付けでした。なので、戦闘フェイズはなるべくシンプルにしようと考えました。
カードスペースを考えて、パラメータを4隅に配置するので、パラメータは4つにしようと最初から考えていました。そして、あちらこちらのパラメータを見ずに戦闘が解決できる方法を模索しました。しかし、なかなか良い方法を見出だすことができず、半年ほどが過ぎ去りました。
ブレイクスルーのきっかけは『ウォーチェスト』でした。バックからコインを引いて、そのコインが行動できるというシステムです。『ウォーチェスト』に触れたとき、30年ほど前に遊んだ銀英伝のウォーゲームにもチットを引いて行動順を決めるシステムがあったなぁと思い出しました。このシステムならばゲーム中に行動回数というパラメータを意識しなくても済みます。これなら行けると確信を持ち、開発は前に進み始めました。
テストプレイ中、何度か「チットで攻撃順を引くのはランダム性が高すぎるから、行動回数ではなく行動順にしたらどうか」というアドバイスをいただきました。確かにそれでも良いのですが、僕が再現したかったのはシャアザクは他のザクより3倍速く動けるという設定でした。そのため、攻撃回数を多くするという設計にしました。ランダム性はあるかもしれませんが、自分がやりたかった世界観は再現できたつもりです。

ゲームシステムのデザイン中期(内部テストプレイ)

最初は『ウォーチェスト』に着想を得たせいか、ヘックスマップで移動しながら敵と戦うというゲームにしていました。しかし、長男とテストプレイをしているときに、相手が逃げ回ってしまいゲームが長引くことがありました。本当にマップが必要なのかを考え直したときに、『タンクハンター』のように叩きあうだけのゲームでよいのではないかと考え直しました。そのあと、前列後列の概念を入れたテストプレイも繰り返しましたが、この戦闘の説明に3分以上かけるのであれば、単純に攻撃するだけのゲームではよいではないかと開き直りました。

製造コストの削減

移動用のボードをなくすことができたので、コスト面ではだいぶ安くなりました。
もっとコストを減らすことはできないかと考えたときに、メックの装備を選ぶときに使っていたボードも他の手段で代替できないかと考えました。装備選択時のボードはいらないかとも思ったのですが、透明カードを使うので、テーブルによっては見えづらくなってしまう。それをどう解消しようかを考え続けました。そしてある時、袋の上に並べればいいじゃないかとひらめきました。そこで、ちょうどいい袋の大きさにするため、袋のサイズを特注で作ってもらうことにしました。袋はもともと必要なコンポーネントだったのですが、その袋に2つの役割を持たせることでボードを排除することができ、箱のサイズ縮小も実現できたので、大幅なコスト削減ができました。

ゲームシステムのデザイン終盤(継承)

リゴレの店長と遊んだときに「負け始めると勝てないですねぇ」という言葉をいただきました。
基本的にはシミュレーションゲームなのだから、それで仕方ないと考えていましたが、やはり気になっていました。
いろいろと考えているときに「破壊されたカードは裏返しにするのだから、それを使って何かできないだろうか」と考えました。イメージ的にはテレビゲームのボンバーマンで負けたキャラクターがゲームの外から爆弾を投げ込んで邪魔をする感じです。
考えに考えを重ねた結果、カード裏に上昇するパラメータを書いておいたら、逆転の要素になるのではないかとひらめきました。
増加させるのはHPと命中率ということにしました。HPは体力という意味だけでなく、装甲の厚さや、回避能力の高さも表しているので、仲間が死んで覚醒して回避能力が向上する。命中率は神懸かった精度で戦闘ができるようになるというZガンダムなどで仲間が死んで残った者に残留思念が取り憑く感じを再現しました。Twitterでこの現象について名前を募集したところ、前田部長の「魂の継承」が一番しっくり来たので、ルールとして採用しました。

ゲームシステムのデザイン終盤(校正)

227さんでテストプレイをしているときに店長から「タンクみたいな役割のメックが活躍できないですかね?」という言葉をいただきました。
タンクとはHPの高いキャラクターのことで、タンクが相手の攻撃を引き受け、それ以外のキャラクターが相手を攻撃するという戦略をとるときに使います。そのときのルールでは先に能力の高いメックを攻撃するのが常套手段になってしまうので、タンクが活躍することができませんでした。仕方ないなと思いつつ「タンク」という言葉を引きづったまま、説明書の作成を進め、説明書の校正段階までもっていきました。
今回のガニメデ戦記Zeroの校正・校閲はぼーずさんにお願いしました。ぼーずさんはとても優秀な方で、「ここはこうした方がいいですよ」とか、「ここはこの表現の方が伝わりやすいです」といったアドバイスをガンガンしてくれました。その中に「防御側は攻撃を受けるメックを選べないルールですよね」というコメントをもらいました。ぼーずさんはルールの誤解を防ぐための確認だったと思うのですが、僕にとっては最高の提案でした。
今まで、『タンクハンター』などのゲームから攻撃対象は攻撃側が決めるという固定観念が自分の中にありました。ですが、攻撃対象を防御側が決めれば、タンクのような役割のメックを作ることができるのです。この発想は目から鱗でした。

アートワークへのこだわり

カードのデザインについては、何度もアートワーク担当のたかさんと議論を繰り返しました。
たかさんとは年齢が近く、見て育ったロボットアニメも似ているので、「マクロスのファランクスみたいなやつ」とか、「近接武器はパイルバンカーにしましょう」など、意識あわせがしやすかったです。ああだこうだと話し合うのが楽しかったです。
楽しかったエピソードが一つあります。カード化する前にイラスト段階で絵を見せてもらったところ、想定より数がひとつ多い。「たかさん、ひとつ多いですが。。。」と伝えると、「あ、ほんとだ。楽しくて描いちゃいました」と。急遽パラメータを調整し、新たな武器を追加しました。

謝辞

今回も多くの方にお世話になりました。アートワーク担当のたかさん、テストプレイに付き合ってくれた息子の英瑠、いろんな方とテストプレイしてくれたアニマルウィップのレグルスさん、持ちこんだゲームをいつも快く遊んでくれた227の店長、いつも励ましてくれたリゴレの店長、校正を担当してナイスアイディアまでくれたぼーずさん、緑と赤の見にくさを教えてくれたましうさん、透明カードについての情報をいろいろと教えてくれたハセカワさん、魂の継承の名前を考えてくれた前田部長、英語翻訳のサイゴウさん、印刷所のNikkiさん、動画を作ってくれたひみつりさん。そしてこれから遊んでくださるたくさんの皆さん!
皆さんに支えられてゲームはできています。この場を借りてお礼を申し上げます。

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