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モノクロ手焼きプリント

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自宅暗室にて手焼きしたプリント作品をエッセイと共に記したシリーズです。
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#ライカ

もっとモノクロで撮りたい モノクロ手焼きプリント#9

フィルムで写真を撮るようになり、自分で現像やプリントを前提としている事からモノクロフィルムで撮るのが当たり前となっていた。 フィルムやるならモノクロだろう、と。 だが、カラーフィルムはそれはそれで良いと思っていて、フィルム写真家のカラーネガで撮られた作例を見るのは好きだし、過去にカラーネガで撮った写真を見てみると「あぁいいなぁ」となる。なので頭の片隅で「いつかカラーも撮ろうかな」みたいな事は考えていた。 実際、世間的にフィルムカメラが密かに人気だ、と言われてはいるが、それは

大人になって モノクロ手焼きプリント#8

子供の頃、田舎に住んでいた私は近所の田んぼや畔道で生き物と触れ合うことが多かった。田んぼにいるオタマジャクシやヤゴを観察したり、蝶やトンボを獲ったり。 子供の頃は昆虫などの小さな生き物と触れ合う機会が多かったが、大人になってからめっきり減ってしまった。そういった仕事に従事するかアウトドアの趣味でもないと大抵の人はそうだろうとは思うが。 ある日、山道を歩いていると柵の上にカマキリがいるのを見つける。久しぶりに昆虫を見るとつい観察したくなる。 近寄ってみると目が合う。しかしカマ

白黒写真とは言うものの モノクロ手焼きプリント#7

白黒。 白黒写真。 「しろくろ」とよく言われる気がするが英語では「black & white」というのだから実は「くろしろ」が正しいのかもしれない。 黒白写真。 だが我々が撮っている写真は黒と白の表現だけだろうか? いや、どう見たってグレーもある。 写真家によってはハイコントラストにして黒と白にかなり寄せる人もいるが、それでも二色だけで写真は基本的に成立はしない。 というより、黒と白を繋ぐグレーの方が面積的には多い。 だから黒白写真をこよなく愛する人々にとっては

夕暮れ時 モノクロ手焼きプリント#6

夕方、尾道を歩いていると船着場で停泊している船が目に入る。 夕陽に照らされて船体に美しい陰影が出来ている。 夕陽は普段の景色をドラマチックにしてくれる、カメラを持つ人間にとってこの上ない味方だ。 この船は明日になったらどこかに出かけるのだろうか、それとも暫くここで休息なのだろうか。 なんて思ったがシャッターを切ると私はすぐに次の景色を探してしまっていた。 camera : Leica M2 lens : Voigtlander NOKTON 50mm F1.5 vintag

差し込む光と モノクロ手焼きプリント#5

光が綺麗に差し込む部屋が好きだ。 私が今住んでいる部屋は北向きな故に日中は光があまり入らず、それもあってか綺麗な光が入る部屋だったりお店だったりに惹かれる。 写真を撮っていると光に敏感になるのでそれもあるのだろうが、しかし心の底にある願望が反応しているのだと感じる。 camera : Leica M2 lens : Voigtlander NOKTON 50mm F1.5 vintage line film : Kentemere Pan400 developer : AD

一枚に掛ける手間 モノクロ手焼きプリント#4

フィルムをカメラに詰める。 ファインダーを覗き、シャッターを切る。 タンクにフィルムと液を満たし現像をする。 引き伸ばし機にネガと印画紙をセットし露光する。 アナログ写真をしているとこれらのプロセスを経て写真が出来上がる。デジタルとは比べ物にならないぐらいの手間が掛かる。 勿論ネガをスキャンすればそれでもう写真データとして使えるようにはなるのだが、折角モノクロフィルムを使っているというのもあってプリントしたものを完成形にしたいと思い夜な夜なプリントをしている。 トータルで

フクロウに呼ばれて モノクロ手焼きプリント#3

尾道の千光寺の麓には猫の細道というエリアがあり、そこは名前の通り猫が通るような細道に猫をモチーフにしたオブジェが沢山あるという素敵な場所。カフェや雑貨などのお店もあり、歩くだけでも楽しいしお茶をしたりも出来るようになっている。 今回は久しぶりに猫の細道を通ってみる。最近は別のルートをうろうろする事が多く、そういやこんな感じだったな、あれこんなのあったけ?という具合に散策をしてみる。 少し歩くとカフェの入り口を見つける。そろそろ休憩しようかなと思っていた頃だったのもあり入り

海を眺める背は モノクロ手焼きプリント#1

以前から、新しいレンズや機材を買うと宮島を訪れている。 雑踏、自然、自社仏閣、海といった様々な被写体がそこにはあるので、試し撮りにはもってこいの場所だからだ。 LEICA M2を手にしてからも例に漏れずまずは宮島を訪れた。平日は特に海外の方が非常に多い。西洋の方もアジアの方も沢山。とりあえず皆さん身長が高い。人々がフェリー乗り場で楽しそうに話しているのを横目に、身体の横にM2をぶら下げた私は一人フェリーが入港するのを待っている。 フェリーの中ではいつもは大体鳥居が見える側