Forester

 樹皮外套が粉砕される轟音は爆発にも似ていた。
「くそ!飛車型がやられた!」
「撃ち返せ!」
 怒号を上げて放った機関砲の弾は、樹壁を木屑に変えただけだった。
 第八枝下幹での遭遇。隧道が如き導管の中に遮蔽物はなく、手数も頭数もこちらが上。条件は有利なはずなのに、こちらの制圧射撃は空を切り、木屑舞う中から返された骨董品じみた長弓の一撃が装甲を容易く貫通してのける。
 盆栽とはいえ神樹鎧を貫く以上、あの矢も間違いなくミストルテインだ。
「バカな、上方枝でもないのにこんなバケモノがいるなんて聞いてな」
 爆音。いつの間にか背後にいた影が喋りかけた僚機の頭部を射抜く。
 崩れ落ちる神樹鎧の向こうに彼は見た。水に沈み込むように消える人影。
 瞬間移動ではない。敵は、樹壁の内側に潜って移動している。
「気をつけろ!奴は、」
 聞く者が自身のみでないことを祈りながら、叫ぶ。
「ーーーー奴は、森人(エルフ)だ!」

【続く】

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