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太陽にほえろ! 1972・第20話〜第21話

この原稿は、事件の核心、物語の展開について詳述しております。ネタバレ部分もありますのでご注意ください。
第19話 「ライフルが叫ぶとき」(1972.11.24 脚本・石森史郎 監督・金谷稔)は欠番です。

第20話「そして、愛は終った」(1972.12.1  脚本・市川森一 監督・金谷稔)

   いよいよ沢田研二、ジュリー回(友情出演)。脚本はこれが初参加の市川森一さん!射撃訓練をするマカロニ。まずはショーケンをカッコよく見せるところから始まる。黄色いスポーツカーに乗ったメガネの青年・清坂貞文(沢田)登場!

 川村キヨ(千石規子)を訪ねる。キヨと貞文は、九条家からお金を搾り取っている共犯関係。少年時代、貞文が美しい女性と逢瀬をしている姿を覗き見るキヨ。その回想シーンに続いて、キヨを絞殺する現在の貞文。金谷監督の感覚的なモンタージュにドキドキする。

 キヨの部屋を訪ねる(回想にも出てきた)美しい女性・九条絹子(三条泰子)。巧みに人間関係を伝える。周到な貞文は犯行時のメガネを眼鏡屋に返品。クルマを飛ばしているところ、マカロニから捜査協力を頼まれて、指名手配犯を追う。ここで銃撃戦。冒頭から10分、静から動へ。濃密な展開は映画的。

 犯人を追う途中に脳震盪をおこした貞文を川越の「黒木病院」に連れていくマカロニ。なんと東京から埼玉までの追跡劇!。ここからショーケンとジュリーの奇妙な関係が始まる。ファンならずとも、このツーショットはたまらない。黒木病院の看護師・克子を演じている神鳥ひろ子さんは現在の上岡紘子さん。

 克子がただの看護師ではなく、貞文の男前にひかれて、病室で一緒に酒を飲もうとする猛者(笑)貞文と「愛情を信じるか」の会話をするマカロニ。「人を撃ったことがありますか?」ドキッとするような質問をする貞文。結局、克子と三人で酒盛り(笑)市川森一脚本らしい不思議な自由さ!

 わざわざ男二人に女一人の不思議な雰囲気に。酔った貞文は、九条絹子との禁断の関係を思い出す(あくまでも雰囲気)。ちなみに黒木病院の院長は木田三千雄さん。「ウルトラセブン」第9話「アンドロイド0司令」のおもちゃじいさん!

 翌日、貞文は看護師の克子と東京へ。出奔、駆け落ち、という感じで描かれる。一方、キヨ殺害の容疑で貞文が指名手配をする。殺人犯に捜査協力をして一晩過ごしたことに落ち込むマカロニ。ビルの掃除夫のキヨの1000万円の預金に不審を抱くボスたち。貞文の叔母・九条絹子を尋ねるマカロニとゴリさん。

 絹子を演じた三条泰子は、『無頼より大幹部』(1968年)など日活映画ではお馴染みの色香をたたえた女優さん。なぜ貞文がキヨを殺害したのか? それが後半のミステリーとなる。看護師・克子と暮らし始めた貞文。克子は貞文に引かれて逃亡を補助しようと言い出す。

 結構、無理な展開だけどジュリーの男前に、納得してしまう。美しい叔母・絹子との逢瀬をキヨに目撃され、絹子は長年キヨに強請られていたことが明らかになる。色男はつらいね。中野のスナックに克子に呼び出されるマカロニとゴリさん。店内に流れるジュリーの歌声は、作詞作曲・沢田研二の「不良時代」!

 そこへ貞文が現れる。スナックにジュリーの歌声が流れるなか、長さん、マカロニとアクション、アクション、アクション。なんと克子を人質に逃亡しようとする貞文。「女を離せ」拳銃を構えるマカロニ。追い詰められた貞文は克子に刃を向ける。このクライマックスは、当時、衝撃的でしたね。

 拳銃を向けられてジュリーが諦めるかと思いきや「一人殺すも二人殺すも同じ」とナイフで克子を刺そうとする。マカロニにとっては初めての犯人射殺。後悔に苛まれて絶叫する。「撃っちゃった。俺、撃っちゃった」と泣き叫ぶマカロニ。あまりにもつらいラスト。マカロニの心の痛みに寄り添う殿下の台詞!

 そしてボスがマカロニのアパートに一枚の絵を持ってくる。「これが犯行の動機だ。もう被害者も加害者もこの世にはいない」「これは憶測に過ぎない」と前置きをして、ボスが語る貞文の心の奥底。貞文が背負っていたものとは? 見事な市川森一脚本!「愛情ってのは残酷なものだな」ボスの言葉は重い。

第21話「バスに乗ってたグーな人」(1972.12.8  脚本・小川英、鴨井達比古 監督・山本迪夫)

   脚本は鴨井達比古さん。今回のヒロインは特別出演の星由里子さん。裕次郎さんとは『忘れるものか』『富士山頂』で共演。マカロニが新宿駅小田急ハルクの前でシンコと待ち合わせ。しかし仕事の都合でシンコにすっぽかされる

 せっかくの非番が台無しになってお冠のマカロニ。シンコに電話で当たってるとボスに揶揄われる。21話目となると、七曲署のメンバーの親和力がお茶の間の楽しみになってきた。バスに乗ったマカロニ、小銭を持ち合わせていなくて運転手と揉めると「バスに乗ってたグーな人」寺沢彩子(星)か十円玉を「どうぞ」。

 バスを降りたマカロニ、彩子に声をかけたいがうまく行かない。デパートの玩具売り場でロボットを買う彩子に「まさか子連れ狼じゃないだろうな」とマカロニ心の声(笑)大人の女性とマカロニの微妙な関係。彩子はファッション・カメラマンで、怪しい男に尾行されている。

 当時流行した、汽車を改造したカフェでお茶を飲む二人。大人の女性と若者の微妙な関係。BGMは山本リンダの「狙いうち」がインストで流れる。彩子の家は立派な邸宅。母親を演じているのは、上品なご婦人役が多かった露原千草さん!で、彩子を尾行しているのは江見俊太郎さんの神谷と石山雄大さんの小野。二人ともいつもながらの悪い顔(笑)

 彩子がスタジオでファッションモデルを撮影。流れるBGMは五木ひろしさんの「待っている女」のインスト! クライアント風の男・山田は勝部演之さん。なんか時代を感流なぁ。今回は、彩子に恋をしたマカロニの空回りも含めて恋愛ものとして展開。始まって15分、なんの事件も起きない。

 その分、星由里子さんの魅力たっぷりで、ファンには嬉しい。で、彩子を狙う男たち、メンバーがいつの間にか四人人に! 彩子とデート中、新宿西口公園で男たちに襲われるマカロニ。男たちの車が、半年前の不動産屋殺しの容疑者・神谷の所有だった事から、七曲署が動き出すことに。

 しかし江見俊太郎さん。どうしてこんなに目つきが悪いんだろう? 子供の頃、いつも思っていた。で、彩子が神谷の犯行を裏付ける写真を撮っていたために、男たちに狙われていることが明らかになる。非道な神谷は小野(石山雄大)に彩子とマカロニ殺害司令を出す。

 リアルで濃密なエピソードが続いてきた「太陽にほえろ!」だが、今回は、完全にアクション映画のノリ。ここからは東宝ニューアクションの『野獣の復活』(1969年)でデビューした山本迪夫監督らしいケレンの連続。マカロニと彩子がいるレストランで時限爆弾が爆発。彩子が狙われていることが明らかになる。

 犯人たちがなんの写真を狙っているか?彩子には見当がつかないが、マカロニの機転で、犯行当日の神谷のアリバイを崩す証拠であることを突き止める。マカロニ襲撃、時限爆弾の爆発が、半年前の不動産屋殺しと結びつく。

 さらに彩子の甥っ子が、犯人グループに誘拐され、脅迫電話がかかってくる。星由里子さんがカメラマン役ということでは『モスラ対ゴジラ』(1964年)『パンチ野郎』(1967年)などの東宝映画を思い出すが、60年代の働く女性といえば女性カメラマンというイメージでしたなぁ。

 後半は「少年誘拐事件もの」に。彩子宅は盗聴器を仕掛けられているのでゴリさんがラーメン屋に化け、マカロニと入れ替わったり、爆弾が三度も炸裂したり。緊張感溢れる筈のクライマックスも安心して見てられる(笑)今回は星由里子さんを全面的にフィーチャーしての、まあまあ「グーな」回でした(笑)


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