見出し画像

『エクソシスト:ビギニング』(2004年・ワーナー・レニー・ハーリン)

「エクソシスト」サーガ研究(笑)レニー・ハーリン版『エクソシスト:ビギニング』(2004年)をU-NEXTから投影。

ステラン・スカルスガルド(MCUでお馴染み)が、第二次対戦後、信仰を捨てて考古学者としてアフリカで発掘作業をしている。そこへ、ナイロビの郊外に新たに発見された遺跡調査の話が・・・ ということで、ここでのメリンは、すでにイギリス軍とローマ教会が興味を示している遺跡発掘に参加するという、ポール・シュレイダー版とは逆の設定になっている。

時代も『ドミニオン』が1947年なのに対し、『ビギニング』は1949年。舞台もシチュエーションも、登場人物も同じなのに、キャラクターの性格、置かれた状況がまったく異なるのが面白い。製作時は『ドミニオン』では商売にならないからと、アクション大作はお手のもののレニー・ハーリンが撮ることになった「仕切り直し」。

だけど、現在では「ドミニオン:マルチバース」として楽しめる。ヒロイン、サラ(イザベラ・スコルブコ)のキャラクターや過去が、センセーショナルに、ショッキングに描かれる。全体的にもホラーアクションになっていて、ショック演出(脈絡がありそうでない)もたっぷり。

『ドミニオン』と違うのは、悪魔の正体が「パズズ」であること。とりつく少年がもっと幼いこと。そしてそこにも善人だと思っていたサラのキャラクターの暗黒面が深く関わっていること。

後半の悪魔祓いのシーンは、オリジナルから連綿と描かれてきた「エクソシズム」の発展形。特殊メイクも、ディック・スミスが作った最初のリーガン(リンダ・ブレア)のバリエーション。「お化け屋敷」映画としては、ニヤニヤしながら観られる。

トップシーン、5世紀にこのアフリカの地で何があったのか? 悪魔対殉教者の壮絶な戦いが、派手派手に描かれている。パズズの悪の力の凄さ、ここまでやるか! を見せてくれる。ここからもうレニー・ハーリンの世界(笑)

流血シーンは『ドミニオン』の十倍ぐらい。人間ドラマは50%減ぐらい(笑)
面白かったけど「観たそばから忘れる」タイプの娯楽映画。シリーズものとしては、パズズの像と神父に返り咲いたメリンの対峙するショットなどが効果的。

しかし、いずれもアベレージなので、マスターピースとはならずに、翌年、ワーナーとモーガンクリークは、ポール・シュレイダー版『ドミニオン』を公開することに。この配信時代がありがたいのは、この2本の作品を立て続け味わう楽しみがある。しかも「マルチバース」として楽しむ感覚が、今の僕らにはあるので(笑)


よろしければ、娯楽映画研究への支援、是非ともよろしくお願いします。これからも娯楽映画の素晴らしさを、皆さんにお伝えしていきたいと思います。