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『大魔神』(1966年4月27日・安田公義、特撮監督・黒田義之) デジタル4K修復版 妖怪・特撮映画祭で上映

イマジカ第1試写室で、妖怪特撮映画祭で上映される『大魔神』(1966年4月27日・安田公義、特撮監督・黒田義之)デジタル4K修復版・初号試写を拝見、その美しさに息をのんだ。

昭和41(1966年)1月「ウルトラQ」放映開始で、火がついた怪獣ブームの最中、大映はゴールデンウィーク二本立てとして第二作『大怪獣決闘 ガメラ対バルゴン』(田中重雄・大映東京)と、大映京都撮影所企画製作の『大魔神』を公開。東宝では実現不可能な、新作特撮映画二本立てが実現、大成功を収めたのは、トップである永田雅一さんの「永田ラッパ」なればこそ。

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何度も観てきた、マスターピースの『大魔神』を改めて、美しい4K修復版で、スクリーンで観る歓びは格別。森田富士郎さんの見事な撮影大映京都撮影所が培ってきた映画技術の粋を凝らして作り上げた本寸法の時代劇として、ある意味完璧な作品である。吉田哲郎さんの脚本、構成も見事で、それまでの「人類の脅威としての怪獣」ではなく、抑圧された善良な領民のために立ち上がる「荒ぶる神」としての大魔神は、悪役ではない。大魔神が怒るほどの「悪役の存在」が重要なのである。

五味龍太郎さん、遠藤辰雄さんの非道っぷりは、さすが大映京都時代劇!勧善懲悪の物語を観客に納得してもらうだけの、悪辣な演技と存在感はさすが!

子供の頃は、退屈だった前半の展開は、大映時代劇を観続けてくると、無駄が一切なく、ワンカット、ワンカット、見逃せない濃密な画面構成に唸らされる。これが特別ではなくデフォルトだったと考えるだけで、ため息が出る。

大魔神のキャラは、勝新太郎さん、市川雷蔵さんが演じたヒーローと同じなのである。大魔神の存在感こそ、この映画の意義であることを作り手がわかっている。これが撮影所の時代の素晴らしさである。

高山良策さん造型による大魔神は、ほれぼれするほど美しい。荒ぶる神のエネルギーが迸っている。4Kの美しさで、その造型の見事さを改めて体感できる。そして、大魔神を演じた橋本力さんの眼力! もうひれ伏すしかない。オープニングの眼のアップ。ギョロリと動き、眼光が光る。キャッチライトの効果が、見事に再現されている。それだけでこわいのなんの。武神像の静かな佇まいも、まさに神々しい。子供の頃、埴輪が欲しかった理由はこれだったのかと^_^

大映の悪役でお馴染みの伊達三郎さんは、今回は善玉側で出番も多く、嬉しくなってしまう^_^

善側の藤巻潤さんのヒロイズム、子役の二宮秀樹くんのうまさ、成長した青山良彦さんの若様ぶり! そしてヒロイン、高田美和さんの健気さと美しさ! 大魔神の心を動かすヒロインの涙に、改めて感動する。

クライマックスの大魔神の暴れっぷりは、日本映画界の技術の歴史の集大成。ミニチュア、実物大による屋台崩しのスペクタクル。特撮パートと本編、巧みな編集で観客を酔わせてくれる。ショットが変わると、ホリゾントの背景色が変わっていく。この世のものでない異空間が、スクリーンに現出される。これぞ特撮映画の醍醐味!

今回のリマスターで、サウンドが飛躍的によくなっている。丁寧な修復で、伊福部昭先生のテーマがクリアになり、大魔神の足音が腹の底にずしりと響き渡る。

これは、スクリーンで体感して欲しい。さまざまな発見がある。美しく成長した高田美和さんが、川で髪をととのえるショット、後ろの岩場に、猿がいたのを初めて見つけた^_^そんな驚きの連続で、濃密な83分の至福な映画体験が待っている。

まさに眼福! 生きてて良かった! 観て良かったと思うこと請け合い。

この夏、妖怪・特撮映画祭で上映!

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