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『山男の歌』(1962年7月8日・大映東京・村山三男)

 昭和37(1962)年、村山三男監督『山男の歌』(大映)。もちろん未見の蔵出し作品。藤巻潤さんと三條江梨子さんの青春映画かとずっと思っていたら、映画は百聞は一見にしかず。観て驚いた。

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実に良くできた山岳映画で、しかも青春映画というより、きちんと人間をみつめて「人はなぜ山に登るのか?」「人はなぜ生きるのか?」「大切な人の死をどう見つめ、どう乗り越えていくのか?」というテーマに、しっかりと向き合って作ろうという姿勢が素晴らしかった。いや、お見それしました。

大学の山岳部。苦学生の森田和彦(藤巻潤)と恵まれた家庭に育った有川一郎(小林勝彦)の友情。一郎が愛している大学の同級生・石原妙子(三條江梨子)は、本当は和彦が好きで、一郎の求婚を断ってしまう。その理由も妙子は話してしまう。

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一郎は苦しんで、和彦と大喧嘩するが、すぐに仲直り。一緒に剱岳に登ことにするが、その前夜、妙子とのことを和彦に打ち明ける。そして、二人にとって「未知のコース」に挑戦している途中、先を行く一郎が転落死をしてしまう。

果たして一郎は事故死なのか、自殺なのか? 和彦も妙子も苦しむ。マスコミは三角関係の果ての・・・と詮索をする。一郎は、その真相を確かめるべく、先輩・奥村(丹羽又三郎)とともに、再び剱岳に挑戦するが・・・

藤巻潤さんと小林勝彦さんの友情が、ストレートで実に爽やか。三條江梨子さんも、ご都合主義の展開ではなく、自分の気持ちに素直な現代女性で、それゆえに小林勝彦さんの死に向き合う辛さを見事に演じている。

一郎の姉・美沙子(近藤美恵子)の弟を思うあまりに、の立場もよくわかる。その恋人で山岳部の先輩・奥村に、僕らの世代では「ジャイアントロボ」のBF団の初代日本支局長スパイダー!なので、こんな良い性格のスパイダーを観たのは初めて(笑)の驚きも大きかった。

前半、妙子がピアノ弾きをしている「歌声喫茶」にわれらがダークダックスの皆さんが出演して「山男の歌」「アルプス一万尺」を歌ってくれる。ああ、こうしてダークダックスは「歌声喫茶」で歌っていたのだなぁと。

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衝撃のクライマックス。色々な問題を乗り越えていくラスト。村山三男監督作としては、最高の一本(暫定だけど)。

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