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『赤垣源蔵』(1938年・日活京都・池田富保)

昨夜は、阪東妻三郎主演『赤垣源蔵』(1938年・日活京都・池田富保)の、戦後改題再上映版『忠臣蔵赤垣源蔵 討入り前夜』(1954年)を、アマプラで、娯楽映画研究所シアターのスクリーン上映。

「忠臣蔵」で、堀部安兵衛、不破数右衛門と並ぶ、サムライ・ドランカー、呑んだくれヒーロー・赤垣源蔵を、我らがバンツマさんが豪快に演じたサイドストーリー。講談でお馴染み「赤垣源蔵徳利の別れ」をメインにしたスピンオフもの。演出は「忠臣蔵」ならお手のものの池田富保監督。

赤垣源蔵は、本名・赤埴重賢。通称・源蔵。ドラマ「大忠臣蔵」では、フランキー堺さんが赤埴源蔵として演じている。キャラは全然違うけど…

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兄・塩山伊左衛門は、脇坂淡路守の家来で、刃傷事件以降、弟が仇討ちをする気配がないので、イライラしている。討ち入り直前、源蔵は伊左衛門に別れを告げにくるが、あいにくお役目で不在。伊左衛門の妻は、飲んだくれの義弟が嫌いなので、持病の癪を理由に合わない。源蔵は、衣紋掛けに、兄の羽織を掛けて、持参した徳利を脇において、兄に暇乞いをする。これが「赤垣源蔵徳利の別れ」。これで、庶民はグッときてしまう。それをバンツマさんが、たっぷり!の芝居で見せてくれる。

赤穂浪人・赤垣源蔵(阪東妻三郎)は、主君・浅野内匠頭の仇討ちをする素振りもみせず、酒と放埒の日々。兄・塩山伊左衛門(香川良介)宅に居候していて、老僕・常平(磯川勝彦)も、ほとほと手を焼いている。そんな源蔵に惚れて、婚礼の相手と心に決めている千鶴江(花柳小菊)は、隣家のやはり脇坂淡路守の家臣・坂谷城左衛門(志村喬)の娘。いつか、源蔵は、本懐を遂げてくれると、千鶴江は信じている。

花柳小菊さんが可憐で美しい。先日観た「大忠臣蔵」第23話「大石伏見に遊ぶ」では伏見の茶屋の女将・お藤を演じていた。この映画から33年後にも、忠臣蔵に出演!というのがすごい。

バンツマ時代劇だけに、チャンバラも充実。町人に化けた神崎与五郎(市川百々之助)たちが、役人に身元がバレそうになり、逃すためにひと暴れする。次々と相手を斬って斬ってて斬りまくる。スピーディなバンツマ剣戟の醍醐味!

で、千鶴江との別れの場面も、情感たっぷりで、当時の年少観客も結ばれぬ恋の哀しみをタップリ味わったことだろう。

そして雪の降る、元禄十五年十二月十三日、源蔵は、久しぶりに兄・塩山伊左衛門宅を訪ねる。勝手口から、徳利をぶら下げて入ってきた源蔵に、女中お杉(大倉千代子)がぞんざいな口をきく。大倉千代子さんが、ユーモラスでチャーミング。源蔵を疎ましく思っている塩山家のなかでも、なんとなくの理解者でもある。しかし、兄嫁(京町ふみ代)は、源蔵を毛嫌いしていて、この日も仮病を使って、会おうとしない。

というわけで、ここからバンツマの一人芝居「赤垣源蔵徳利の別れ」がたっぷり!展開する。帰宅した塩山伊左衛門は、お杉の話を聴いて、全てを察して、妻を諫める。このシーンもいい。

そして討ち入り。クライマックスは、赤垣源蔵の闘いのみをフィーチャー。短いシーンだが、チャンバラ映画のカタルシスに満ちている。

そして、見事本懐を遂げた赤穂義士たちが江戸の街を凱旋するお馴染みのシーンで、瓦版売・仙太(田村邦男)が、義士たちの名を読み上げる。塩山伊左衛門は、老僕・常平に、赤垣源蔵の名前があれば、大声で叫べ、なければ黙って帰ってこいと命じる。

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やがて常平は源蔵と再会。このシーンも情感たっぷり。観客の琴線を刺激しまくる。昭和13年の日活時代劇らしく、現代的なモダンな感覚もあり、極め付けの浪花節的な展開との按配が楽しめる。

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