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『続 西の王将 東の大将』(1965年6月20 日・東宝・杉江敏男)

深夜の娯楽映画研究所シアターは、東宝クレージー映画全30作(プラスα)のα作品ということで、谷啓さん&藤田まことさんコンビによるサラリーマン喜劇『続 西の王将 東の大将』(1965年6月20日・杉江敏男)をスクリーン投影。といっても1980年代末に地上波放映録画のβテープからのレスキュー素材。なのでトリミング版である。

半裁ポスター

1980年代末、TBSで土曜日の昼、二時間枠で東宝作品を中心に娯楽映画を連続放映していた。トリミング版だけど、ほぼノーカットで放映され、ここで未見の東宝作品を連続して観ることができた。

古澤憲吾監督による前作が好評で作られた続篇。というより、当初から二部作、シリーズ化を目論んで、『ニッポン無責任時代』(1962年・古澤憲吾)を企画したプロデューサー・安達英三朗さんと、渡辺プロダクション社長・渡辺晋さんが製作。なので、前作のラストで登場した「住丸商事」重役秘書・宮内桃子(園まり)さんが、トップシーンから、西のウマ野郎・天馬誠(藤田まこと)と東のあんぱん野郎・神田敬次郎(谷啓)のマドンナ的存在として登場している。

同時上映は、東京五輪で女子バレーボールチーム”東洋の魔女”を金メダルに導いた、鬼の大松博文監督をハナ肇さんが演じた『おれについてこい!』(堀川弘通)。こちらも製作は渡辺晋さん。クレイジーキャッツの谷啓さん、ハナ肇さん主演作の二本立ては、この年、結成10周年を迎えたクレイジー人気と勢いを感じる。『おれについてこい!』は大松監督の流行語だが、当時の子供たちは植木等さんの「だまって俺についてこい」を連想して、植木さんも出てくる喜劇映画かと思って映画館でがっかりした子もいたとか。

さて、脚本は前作に引き続いて、東宝サラリーマン映画のメインライター・笠原良三さんと、クレージー映画も手がけてきた池田一朗さん。のちの時代劇作家・隆慶一郎さんである。なので物語のフォーマットもほぼ同じ。浜美枝さん→団令子さん→草笛光子さん。3人の東宝ビューティーズを、いかに籠絡できるか? ベッドインできるかを競い合いながら、互いの仕事をサポートしつつ、半目したり、最後は大きな商談をまとめる。全く同じ構成。まあ、これは前後篇で作られた東宝サラリーマン映画のシステムでもある。

今回の演出は、東宝プログラムピクチャーを支えた職人・杉江敏男監督なので、どのシーンもそつなく、テンポ良く、安定の面白さで展開していく。シーンの変わり目に、ハートマークや丸いワイプを駆使して、漫画チックなアクセントを出している。前作の古澤演出とはまた違う東宝娯楽映画らしさが楽しめる。

また、谷啓さんと藤田まことさんによる主題歌「お前がやるなら」(作曲:萩原哲晶)がラストに、園まりさんと3人で歌うシーンがある。劇伴で、最初からこのメロディーがモチーフとして流れているので、耳馴染んだところでラスト、というのは効果的。レコード化して欲しかった。

藤田まことさんが浜美枝さんとダンスをしながら唄うのは、この年、大ヒットしていた和田弘とマヒナスターズの「お座敷小唄」(作詞:不詳 作曲:陸奥明)。この頃、夜の巷ではこの曲が流れない日がなかった。

劇中、園まりさんが、会社の昼休み、コーラスサークルの一員として歌うのは、新曲「あなたとなら」(作詞:岩谷時子 作曲:萩原哲晶)。コーラスサークルの部員として、一際目立つ、背の高いサラリーマンを演じているのは古谷敏さん。園まりさんのヴォーカルに合わせてコーラスをしている。

古谷敏さん!

住丸商事で、鉄鋼などを扱う営業第二課の係長心得・神田敬次郎(谷啓)と、食品を扱う営業第一課の係長心得・天満誠(藤田まこと)は相変わらず、何かにつけては張り合っているライバル。重役秘書・桃子(園まり)とデートの約束にこぎつけたものの、その夜は、それぞれの得意先を接待することになりデートは中止、で大いにクサる。

このシーンで谷啓さんが『マイフェアレディ』(1964年)のロードショーに誘う。園まりさんが目を輝かせて「切符手に入るの?」「東宝の知り合いに頼むから」とリアルな会話となる。少し前なら『ウエストサイド物語』(1961年)だったが、この頃は『マイフェアレディ』だったのかと。ロードショーの切符がいかにプラチナチケットだったかがわかる。

で、神田は、得意先からのご接待で、銀座のバー「ピンク」へ。そこのママはなんと、新入社員時代、初任給を全て使って、なんとかモノにしたものの「一夜限りの関係」となった、大阪のアルサロ「淀君」のナンバーワンホステス・悦子(浜美枝)だった。華麗なる出世を遂げた悦子と、焼け木杭を楽しもうと鼻の下を伸ばした神田だったが、結局、天満に彼女を奪われてしまう。で、悦子と一夜を過ごしたものの、なんと彼女のパトロンは、住丸商事の権藤専務(進藤英太郎)と知り、あっさりと引き下がる。

しかし天満のいたずらで「悦子はお前にぞっこんや。お前に譲るわ」と、神田に彼女のマンションの部屋番号を教える。次の日曜日、神田がマンションにいそいそ出かけると、権藤専務と鉢合わせ。エライことになったと辞表を出すが、なんと専務は、悦子のハッスルぶりに体力の限界を感じて、手を引くきっかけを探していたと感謝され、口止め料までいただくことに。

前作では「住丸商事」社長を曽我廼家明蝶さんが演じていたが、今回は外遊中という設定で、代わりに進藤英太郎さんが専務役で出演。もちろん曽我廼家明蝶さんは写真で登場。「社長シリーズ」の河村黎吉さんのように。云うなれば、東宝サラリーマン映画の伝統である。

天満と神田は、東京支店での功績が高く評価され、大阪本社へ「課長心得」として栄転。今度は天満が機械メーカー担当の営業二課、神田が食品担当の営業一課に配属されて、お互いの経験を生かし合う協定を結ぶ。このあたりからサラリーマン映画の常道となっていく。東京支店の課長には、田島義文さん、伊藤久哉さん。大阪本社の課長には、天王寺虎之助さん、藤尾純さんと、キャスティングで東西のカラーを出している。ちなみに大阪の井上営業第二課長を演じている藤尾純さんは、女優・中原早苗さんの父である。

勝手がわからない大阪で、神田はデパートの柿本部長(立原博)攻略のため、天満の親戚の料亭で一席設けてもらう。天満は大阪の老舗の昆布屋”天満屋”のボンボンで、花柳界では顔。馴染みの芸者・寿々子(団令子)を読んでの宴会となるが、寿々子は、ウブな「坊や」みたいな神田に一目惚れ。

結局、神田は寿々子に誘われ宝塚へデート。歌劇を観た後に旅館で見事に本懐を遂げることとなる。とここまで一勝一敗というのも、前作同様。そこで、前作の司葉子さんのポジションにあたる草笛光子さんが登場。機械メーカーの重役で、静岡のお茶メーカーの社長・片桐あや子役である。あや子の大人の色香にクラクラした天満と神田。仕事もそこそこに、彼女をいかに籠絡できるかで、またまた張り合うが…

舞台は、東京→大阪→宝塚→清水→日本平と、その配分も前作に倣っている。脚本の展開はほぼ同じ。それゆえ、古澤憲吾監督と杉江敏男監督のタッチの違いが味わえる。

もちろん二人とも商談は大成功。その功績が認められ、再び本社へ栄転。ラストシーンは、会社の玄関でばったり会った桃子(園まり)と連れ立って銀座へ。主題歌「お前がやるなら」を歌って大団円。エンディングでの会社のロケは東銀座。がんセンターの前、銀座スエヒロのビルを「住丸商事」に見立てている。なので、彼らが銀座方向に向かうショットで、懐かしの「銀座東急ホテル」が映る。古澤憲吾作品では『日本一のゴマスリ男』(1965年)『日本一のゴリガン男』(1966年)などでお馴染みのアングルである。

谷啓さんと藤田まことさんのコンビは、翌年の『クレージーだよ奇想天外』(1966年)で再びスクリーンに登場することとなる。


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