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『新婚日記 恥しい夢』(1956年4月28日・大映東京・田中重雄)

 若尾文子主演『新婚日記 恥しい夢』(1956年4月28日・大映東京・田中重雄)。脚本は笠原良三と池上金男。42分のSPながら充実の新婚コメディ。若夫婦がなかなか二人きりになれなくて、悩む、というパターンは、日活多摩川で杉狂児と市川春代主演の『花嫁日記』(1934年・渡辺邦男)など連綿と作られてきた。「二人きりの甘い時を過ごしたいけど、過ごせない」この悩ましさが、艶かしさとなって、他愛なくとも、健全なエロティック効果あり、なので。

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 千枝子(若尾文子)は、電電公社勤務の彼氏・三郎(品川隆二)が東京転勤になったのを機に結婚、熊本から東京へ。住宅問題は、夫の恩師の大学教授が渡米することになり、その屋敷の留守番を引き受け、解決。ところが、近所でたった一軒だけ電話がある家だったために、新妻・千枝子は一日中、電話の取次でへとへと。さらに智恵子の女学校の先輩で、女子高の寮の舎監・矢部綾子(倉田マユミ)の口利きで、同郷熊本から寄宿している女子高生・前田エリ子(市川和子)がホームシックで困っているからと、新婚家庭に居候することになる。せっかくの甘い夜も、若夫婦は、居候の女子高生の手前、品行方正に過ごさねばならなくなる。

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こうして次々と、二人の間に障壁、トラブルがたちはだかり、二人きりになることが出来ずにノイローゼ気味に。この辺り、若尾文子さんのリアクションが抜群で、お人好しだけど、やっぱり彼氏と二人きりになりたい、という微妙な感情表現がいい。品川隆二さんとのキスシーンも、ポーズだけなのに、かなり艶かしい。

 隣人の月賦商品のセールマン・北島三平(潮万太郎)と妻・安子(清川玉枝)夫婦は子沢山。若夫婦が引っ越してきた日に、一家が屋敷の留守番をしていて、子供達がとにかくめちゃくちゃに暴れている。このあたり斎藤寅次郎喜劇みたいで、おかしい。潮万太郎も清川玉枝も慣れたもんで涼しい顔。それが、若夫婦の神経を逆撫でするおかしさ。

また、電話を借りにくる、お妾・二宮雪江(藤間紫)や、シスターボーイみたいな黒川(藤間大輔)たち。かなりカリカチュアされたユニークなキャラが出たり入ったり。観ていて、ああ、懐かしいなと思ったのは、大映テレビの岡崎友紀と石立鉄男の「おくさまは18歳」(1970年)のテイストとよく似ているから。ああ、この映画の伝統なのだなぁ、としみじみ。

若尾文子さん、可愛くて、可愛くて、しかもムンムンしていて実にいい。同時撮影による続篇『新婚日記 嬉しい朝』(5月11日)が作られている。こちらの脚本は、笠原良三と高橋二三。

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増村保造『刺青』Blu-rayに同梱されていたシークレットディスクを堪能。


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