見出し画像

『アマゾン無宿 世紀の大魔王』(1961年4月21日・ニュー東映・小沢茂弘)

 アマゾンプライムビデオのJUNK FILM BY TOEIで、再び、片岡千恵蔵御大の世紀の大活劇『アマゾン無宿 世紀の大魔王』(1961年4月21日・ニュー東映・小沢茂弘)をスクリーン投影して、仰天。とてつもない映画である。前年、映画界を席巻した小林旭と宍戸錠の「渡り鳥」「流れ者」シリーズ、赤木圭一郎の「拳銃無頼帖」シリーズの流れを組む無国籍アクション。脚本は日活アクションも手がけていた松浦健郎。なので、お馴染みのパターンで物語が展開する。

ちなみにこの年のゴールデンウィークは、東宝が三船敏郎&黒澤明監督『用心棒』。日活が宍戸錠&二谷英明の『用心棒稼業」と、アクション映画ばかり。この年の2月に赤木圭一郎が逝去してその喪失感のなか、日活はアクション・コメディ路線を模索していた。そうしたなかに千恵蔵御大が『アマゾン無宿』で殴り込み!

 しかも千恵蔵御大の「多羅尾伴内」シリーズの延長というか悪ノリ拡大で作ってしまったこのシリーズ。荒唐無稽を味わうのがいちばん! 何といってもヒーローは、アマゾン帰りの凄腕ギャンブラー・無宿の源次(千恵蔵)。パンチョスタイルのメキシカン野郎で、英語もおぼつかない(笑)。顔もデカイが態度もでかい。メキシカンハットもでかい。で、宍戸錠さんの役回り、ユーモラスで憎めない好敵手に、ニューヨークから来日したゴールドラッシュの熊吉(進藤英太郎)。これまた「おーミステイク!」みたいな怪しいカムカム英語を駆使して精一杯の無国籍ぶり。二人とも中年なので、アクションというものには無縁。周りがバタバタと倒れてくれる(笑)しかも映画のテンポはお二人の口跡に合わせて、スピード感よりも、溜めの芝居を優先している。

 悪党が、世界の賭博市場を一挙に手に入れようとする、無国籍ボス・竜源昌(月形龍之介)。前段で小沢栄太郎のボスを罠に嵌めてのしあがる。手下に三島雅夫、山本麟一で、世界賭博征服をしようとするのだから大変そう(笑)

 ヒロインは、その竜源昌の愛人的な秘書・玉琴(久保菜穂子)。彼女は竜に私怨を抱いていて暗殺を目論んでいる。その妹で、長野のOK牧場ならぬ大木牧場の娘に佐久間良子。さらに月形龍之介の娘で父に反旗を翻している保育園の先生に三田佳子。

 紛れもない東映オールスター映画だけど、とにかくとんでもない映画。千恵蔵御大が弾けまくり、ギター片手に「渡り鳥」宜しく歌う、二丁拳銃を派手にぶっ放す。コミカルに戯けたり踊ったり。見ているこちらが恥ずかしくなるほど(笑)

 千恵蔵御大と進藤栄太郎の好敵手同志の対決もある。大木牧場(千恵蔵御大のエロキューションでOK牧場と聞こえるおかしさ)での一騎打ちなど、無国籍映画の要件は満たしている。

 さらに、第三の男として、マルセーユ生まれで日本のゲイシャガールの孫・パリジャンの伊達男・スペードのジャック(江原真二郎)が登場して、源次・熊吉とトリオを組む。

 唖然とするのは、久保菜穂子が月形龍之介暗殺に失敗してニセ患者となりをして精神病院に入るシークエンス。彼女の意図を探るべく千恵蔵御大もなりすまし入院。そこでトニー谷、由利徹、花澤徳衛たちが患者として出てくるのだけど、弾けっぷりが半端ではない。ソフト化もテレビ放映もおそらくコンプライアンス上無理。だけど、ここでの千恵蔵御大、とにかく弾けまくっている。人を見る目が変わるとはこのこと。

 ニュー東映作品ではあるが、オールスター映画なので日活アクションより金をかけている。尺も86分(体感時間は100分)と「渡り鳥」シリーズより10分も長い!

 後を引く映画というのは時々あるが、これはまさにクセになる!


よろしければ、娯楽映画研究への支援、是非ともよろしくお願いします。これからも娯楽映画の素晴らしさを、皆さんにお伝えしていきたいと思います。