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企業誌 [approach](竹中工務店)が面白い

「approach」を読むようになったのは5~6年前からでしょうか。
大学以来の友人が竹中工務店に勤務していて、私の職場に来た際に「approach」を持ってきてくれました。以来、愛読しています。
この企業誌の魅力は、ゼネコンの発行している季刊誌にしては、とても対象を広く設定して特集を組んでいることです。

[approach] の多彩な特集

approachサイト

現在(2021年6月)の最新号は、[approach] 2021 夏号 で、特集は「石垣を築く ――穴太の技」です。さらにバックナンバーの特集をご紹介しますと、以下のように多彩なテーマを扱っています。

2021 春号 「中世に咲いた花――フランスのロマネスク教会」
2020 冬号 「田中一光――境界を超えて」
2020 秋号 「北海道おといねっぷ美術工芸高等学校――小さな村の大きな夢」
2020 夏号 「アルプスの暮らしを守る――スイスの山岳防災」
2020 春号 「松井源吾――美と構造のアナロジー」
2019 冬号 「中原淳一 夢と希望のファッション」
2019 秋号 「書籍文化を育む――ライプツィヒ」
2019 夏号 「倉敷―町衆と大原家の町づくり 」
2019 春号 「地熱利用の先進国:アイスランド」
2018 冬号 「バルクリシュナ・ドーシ―:人と自然が対話する建築 」
2018 秋号 「奈良の薬草――種苗を守り続ける」
2018 夏号 「越前五箇――紙漉きの伝統と創造」
2018 春号 「スペインのパラドール ―歴史遺産を活用した国営ホテル 」
2017 冬号 「秋田の森づくり ――百年の大計」
2017 秋号 「イームズ・ハウス ――未来へ記憶をつなぐ」
2017 夏号 「島々の藍 ――琉球に伝わる染織」
2017 春号 「ワインが守るフランスの農村風景」
2016 冬号 「転生する沼の詩魂 ――古河公方公園」
2016 秋号 「悠久のフエ ――緑の中に佇むベトナムの古都」
2016 夏号 「劇場王国 ――阿波の人形浄瑠璃」
2016 春号 「葵・フーバー  ――創作の世界」
2015 冬号 「自転車先進都市 ――コペンハーゲン」
2015 秋号 「奥出雲に刻まれた風景  ――たたら製鉄」
2015 夏号 「勝見 勝 ――デザインの時代を拓く 」
2015 春号 「ニューヨーク・ハイライン  ――産業遺産の創造的再生」

こうしてみると、「ゼネコンの発行している季刊誌」には思えません。
「ゼネコンらしくないねえ」と褒めると、前述の友人が言うには「そういうところが竹中(工務店)なんだよね」との答えでした。

[approach] について

[approach]のサイトでは以下のように紹介しています。
https://www.takenaka.co.jp/enviro/approach/2021sum/

■[approach] について
 1964年の創刊以来、国内・海外を問わずテーマを広くデザインから建築・都市に求め、常に時代を先取りした内容で構成する当社の季刊誌です。2013年春号から誌面をリニューアルし、WEB版をスタートさせ、[approach] がより多くの方にご覧いただけるようになりました。
 公益社団法人企業メセナ協議会により、民間組織が取り組むメセナ活動として2014年から「This is MECENAT」に認定され、同協議会の主催する「メセナアワード2016」において、優秀賞「建築文化接近賞」を受賞しました。

竹中大工道具館も……

竹中工務店は、新神戸駅直近の一等地に「竹中大工道具館」を構えており、なかなか「味のあるゼネコン」ですね。

竹中大工道具館

こちらもご紹介しておきます

竹中大工道具館 ~当館について~

大工道具は、品質のよいものほど摩耗するまで使われ、消滅するという厳しい宿命をもっています。また、戦後の高度成長を経て機械製材と電動工具が広まり、今日ではテクノロジーの発達とともに、手道具を使う職人は急激に少なくなってきました。
消えてゆく大工道具を民族遺産として収集・保存し、さらに研究・展示を通じて後世に伝えていくことを目的に、1984年、神戸市中山手に設立されたのが日本で唯一の大工道具の博物館「竹中大工道具館」です。
今日までに収集した資料は35,000 余点に上ります。古い時代の優れた道具を保存することはさることながら、「道具」を使いこなす「人」の技と知恵や心、そこから生まれる「建築」とそれを取り巻く木の文化について、様々な企画展や講演会、セミナー、出張授業、体験教室などのイベントを定期的に開催してきました。
そして2014年秋。新神戸駅近くの竹中工務店ゆかりの地へと移転して、新たな一歩を踏み出しました。
日本はものづくりの国です。大工道具には、日本人ならではの美意識や心遣いが秘められています。ものづくりの国に生きる楽しさ、素晴らしさ。新しい気づきに満ちた道具との出会いの場となり、伝統のものづくりに新たな刺激を与えるような存在でありたいと考えます。
https://www.dougukan.jp/about_us

「慶長以来の大工さん」はちょっと違う

ほかのゼネコンでも例えば大成建設が「ギャルリー・タイセイ」を開設し、ル・コルビュジエの作品を展示したりしていましたし(現在は休館しWEBのみ)、大林組も「大林組歴史館」を開設するなどしていますが、竹中工務店の取り組みには特に好感が持てます。
さすがに、「慶長以来の大工さん」はちょっと違いますね。

「図解入門 業界研究」(阿部守 著)/長い歴史を誇る建設会社 抜粋

竹中工務店
織田信長の普請奉行として城市の建築に携わった初代竹中藤兵衛正高が1610(慶長15)年に名古屋に店舗を構えたことに始まります。
建築に関する技術が変化を遂げた現在でも、「匠の心」、「棟梁精神」を持ち続け、手がけた建築物のことを誇りと愛着を持って「作品」と呼んでいます。

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