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生地問屋が取り組む、新規事業ブランディング

6月24日(木) に第4回ブランディング事例共有会を開催しました。
発表者を紹介します。発表者は株式会社サンコー代表取締役の櫻山貴文さんです。※ブランド・マネージャー認定協会1級資格者でもあります。

櫻山さん率いる株式会社サンコーは名古屋を拠点に採用や新規事業進出、事業継承といった中小企業の経営課題解決に向けてブランディング支援を行う企業。同社代表でプレゼンターの櫻山貴文氏は「ブランディングは中小企業を救う」という思いを掲げて活動し、2020年には書籍『ブランディングは中小企業を救う』を出版する一方、自身のYouTubeチャンネル「ブランドジャーナル」を立ち上げ、自らブランディングの啓蒙活動を行うなど精力的に活動しています。

長い伝統を持つものの、衰退一途の木綿問屋

本件のクライアントはウイスキーの蒸留所でも知られる愛知県知多市において400年以上続く老舗生地問屋「有限会社竹内宏商店」。
以前サンコーが開催したセミナーに三代目・竹内亮氏が参加した際、「どれくらいの時間であなたの会社に代わる会社が現れるか?」という問いと向き合う中で新規事業の必要性を感じ、櫻山氏へブランディングを依頼することになったのが事の経緯。その背景には、具体的な数字(売上)ではなく、「衰退産業として失われつつある知多木綿を、後世に残したい」という竹内亮氏の思いがあったという。

「当社は元々、生地問屋でしたが衰退産業ということもあり経営は苦しかった。その中でSWOT分析をしたところ“知多木綿”が導き出された。その強みを最大限に生かしていくためには木綿の価値を上げてより多くの人に知ってもらうことが不可欠。
では、いかにして知ってもらうのか? いかにしてこの魅力を伝えるのか? この部分(=ブランディング)で櫻山さんにお世話になった。
自分自身の思いやビジョンを伝えるためにはブランディングがなければここまで広がらなかった。これからもっと知多木綿の価値や魅力を広げていくためには、ブランディングというものをさらに強めていきたい。
ぜひみなさま今後知多木綿という単語を目にしたときは、ぜひ手に取って木綿の魅力を味わってほしい」(竹内宏商店・竹内亮氏)

“ステップ0”からのブランディングがスタート

ブランディングに際して櫻山氏は、ブランド・マネージャー認定協会の1~8ステップの前にステップ0として「何のためにブランディングをするのか?」という目的を設定。そこで導かれたのが、「知多木綿で作ったこだわりの白シャツ(の販売)」だった。

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また、ブランディングの最初のステップでは、SWOT分析や3C分析を行い竹内宏商店の強みを次の通り明確にした。

・知多木綿の400年を超える歴史
・匠の技が備わっている
・三代目・竹内亮氏が究極の目利き“木綿ソムリエ”である

続いて櫻山氏はターゲティングとセグメンテーションによってペルソナを設定。
40歳既婚の男子
地域活動に熱心
価値観は、こだわりと希少性
ご自身が日本の歴史に造詣が深い
普段はユニクロで十分

…といった要素が導き出され、

最終的にペルソナは、
「日本の歴史と伝統に特別感をいだくミドルな男子」
と設定。

また、そこから
「大切な時を演出する技と技が作る大人の白シャツ」
というブランド・アイデンティティを定めた。

「女性の自分買い」という想定外の購買が発生

ブランド要素を設計するネーミング開発では、「棉」と「匠」を掛け合わせた「棉匠 WATAKUMI」というブランドネームが誕生。
一方、ビジュアル面については櫻山氏のパートナーであるアートディレクター・三浦路夫氏によって、「綿の力を世に知らせたい」「日本の伝統を世界へ」という思いを日の丸に落とし込んだロゴマークが完成。

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続いて、パッケージやWebサイト、ポスターなどのブランド要素の制作が進められた。

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このようにして誕生した「棉匠 WATAKUMI」の白シャツだったが、縁があって名古屋市内の百貨店で販売する機会が発生。そこでは百貨店というロケーションもあってか、当初のペルソナとは異なる女性客の自分買いが予想外の多く、急遽女性のモデルを起用したポスターなどを作成して「ユニセックス」で打ち出すこととなった。
これに関しては、「そもそもペルソナが40歳男性だったのにこのまま女性に売ってもいいのか?」という疑問があり、目下ブランディングのステップを遡り市場機会の発見から再構築するプランも計画されている。

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地道な活動が実を結び、「名古屋匠土産」に選出

竹内亮氏は非常に率先垂範される人物で、コロナ禍において知多木綿で作ったマスクを地域の学校へ無料配布したところ地元の新聞に掲載された。
また、竹内氏の活動はそれだけにとどまらず、コロナ禍でさまざまな不便を強いられている地域の中学生へ、「そんなネガティブな思い出を持って卒業するのではなく、いい思い出をあげたい」という思いから知多木綿のハンカチをプレゼントするというクラウドファンディングを立ち上げてみごと成功させた。

これらの活動の根底にあるのは、竹内氏の「地域のみなさんへ安心を提供したい」という純粋な思いだったが、結果として知多木綿の認知を大いに高めることに成功した。このような取り組みもあってか、2021年3月「棉匠 WATAKUMI」は「名古屋匠土産」に選出された。

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「名古屋匠土産」は、名古屋商工会議所が選定するもので、発足から5年間で6商品しか選ばれていない狭き門。そこに選ばれた背景には棉匠 WATAKUMIの品質もさることながら、前述の竹内氏の地道な取り組みが大いに評価されたのではないかと推察する。


櫻山さん。発表ありがとうございました。新規事業に投資する竹内オーナーの覚悟を導き出し、緻密な戦略とクリエイティブでサポートされた粘り強い取り組みは、素晴らしいに尽きます。

※この内容は、第4回ブランディング事例共有会の発表の一部をまとめたものです。ブランディング事例共有会では、チャレンジし、試行錯誤し、奮闘している実践事例の発表より、このプロセスから受け取る気づきやアイデアはもとより、元気と勇気をもらえます。

ブランディング事例共有会のアーカイブ映像は、会員制コンテンツサイト「Me:iku」にて公開しています。

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