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USMLE STEP1をPASSした平凡なM4が今考える勉強プラン案

 こんにちは。私自身が経験したことを基に、皆様のお役に立つ情報を提供できるように記事を執筆しています。渡米界隈で小銭稼ぎしてる人が、何となく好きになれなくて、無料で情報発信しています。「いいね」やフォローをいただけると、大きな励みになります。みなさんと一緒に米国への臨床留学の目標を達成したいです。


⓪前置き

 私は医学科の4年次にUSMLE STEP1を受験し、合格(PASS)することができました。周囲には勉強法を直接相談できる同級生や先輩がいなかったため、自身で試行錯誤しながら勉強を進めていました。今、合格したという経験を振り返り、もしもう一度ゼロから勉強を始めるとしたら、どのような勉強スケジュールで進めるだろうかと考えてみました。これが皆さまの学習に何かヒントを提供できれば嬉しいです。ただし、これはあくまで1つの「案」であり、様々な勉強法があり、それぞれが正しいと私は考えています。下図は学習開始から本番当日までのフローチャートです。

↑勉強開始から試験本番までの流れ↑

①UWorldから始める

 まずは、問題集のUWorldから始めてみましょう。これは3年生以上ならば取り組むことが可能だと思います。もちろん最初は英単語もわからないところから始まり、かなり大変な作業になるでしょう。しかし、UWorldは誰が取り組んでも難しいものです。医学部高学年であろうと研修医であろうと医師であろうと、皆にとって困難です。それを受け入れつつ、毎日少しずつ解き進めてください。問題集を一巡するだけでも約3700問という途方もない数ですが、毎日地道に続けていくことで、必ず終わりに辿り着けます。その過程で役立つであろう小さなアドバイスを8つ提供します:

1.1 大学の学習進路と並行して進める

 大学で現在学習中または実習中の範囲をUWorldでも解く:これは学習効率を考慮するとおすすめです。大学で日本語で学んだ医学知識を、自宅でUWorldを解くことで関連付けて理解することができます。

1.2 System で範囲を絞る

 "Create test"の際は"System"を指定し、1分野を徹底的に深掘りする:範囲を指定せずに解くことは、我々IMG(International Medical Graduate)にとってはかなり難易度が高いと思います。AMG(American Medical Graduate)の人々はUWorldを問題集というより模擬テストのように解くため、問題選択をランダムに設定しますが、我々にとってはそのアプローチは困難です。"System"を指定し一つの分野に絞ることで、同じ疾患に関する問題を短期間で多く取り組むことができます。これにより、USMLE Step1ではどのような問題が出るのか、何を学べば良いのか全体像を把握することが可能となります。

1.3 Flag/Mark 機能

 "Flag/Mark"機能を使用する:UWorldの問題を解いていく中で、自分の考えに基づいて答える時もあれば、勘で答える時もあると思います。その当てずっぽうで正解してしまった場合、必ずその問題に"Flag"としてチェック印をつけてください。そのような問題は、誤って"Correct"のカテゴリーに分類されてしまいます。必ずチェック印を付けて、1周終えた後に"Incorrect"と同じく"Flag"の問題を再挑戦しましょう。

1.4 解答時間は気にしない

 最初は1問1問の解答時間はそこまで気にしない:USMLE Step1試験本番では、1問90秒以内で解答しなければなりません。しかし、これをUWorldの問題を解く際にいきなり実践するのは困難だと思います。時間ばかり気にしていい加減に解答してしまうと、初見の問題に対応する力が育ちません。UWorldを2周目解く時には、初見問題に対する対応経験は得られません。ですから、初めて見る問題に対しては1問あたり3分(180秒)くらい時間をかけて解答するのも問題ないと思います。問題を読むスピードや解答するスピードは、何千問も解くことにより自然と身についてきますので安心して下さい。

1.5 First Aid for USMLE Step1

 First Aidに少しずつ慣れる: UWorldを解き進める中で、同時にFirst Aidも必ず目を通し読むようにしましょう。ただし、いきなり全てを読み進めるのは困難です。辞書を使って単語を調べながら、UWorldで出会った項目についてはFirst Aidで確認してみてください。この時点では、まだFirst Aidに書き込まないことを推奨します。UWorldの1周目では未知の事項が多いため、それをすべてFirst Aidに書き込むと混乱する可能性があります。書き込むのは3700問終えた後で、まだ理解が不十分な知識に対して行いましょう。そうすることで、自分だけのオリジナルの洗練されたFirst Aidが完成します。そのFirst Aidは試験直前期に復習(通読)するのに大変役立つこと間違いなしです。

 First Aid は毎年1月に最新版が発売されますが、すでにお持ちの方はあえて買い替えなくて大丈夫だと思います。2023年版がすでに発売されていましたが、私は2020年版を使用してPASSしています。紙版か電子版かはその人の好き好きで良いと思います。iPadノートアプリを使用したい方は、紙版を購入して自炊(OTR処理済)される方法もあります。ちなみに私は、Kindleで使用してました。

1.6 Google翻訳やMouse Dictionary

 Googleレンズ翻訳やChrome拡張機能Mouse Dictionaryの英次郎:私自身、これらの機能を知らないままでUWorldを終えてしまい、後からその存在を友人から教えてもらいました。もし最初からこれらの機能を活用していたら、かなりの時間を節約できたのではないかと思います。UWorldでは、問題を解く時間よりも英語で書かれた解説を理解するのに時間が掛かります。これらの翻訳や辞書機能は、その時間を大幅に削減してくれます。是非利用してみてください!英次郎は495円でテキストデータを購入する必要がありますが、間違いなく元は取れると考えます。

1.7 Rx やその他の問題集について

「まずはRxから始めて、その後にUWorldに移行するのはどうですか?」という意見があるかもしれません。それも全く問題ないと思います。私を含む多くの合格者がUWorldを必ず利用しており、UWorldは必須の問題集と言えるでしょう。一方で、Rxを利用した合格者は一部に留まります。最も重要な問題集であるUWorldだけに集中して取り組むのは、間違いではないと考えています。心理的にも1つの問題集に絞る方が、2つの問題集を解くよりは楽だというのもあります。ただし、私自身はRxを利用していないので、その問題集自体の良し悪しについては評価できかねます。

1.8 UW解き方

 UWorldの問題の解き方について説明します。まず最初に問題文の最終文を読み、何が問われているのかを把握しましょう。「治療法なのか?」「病因なのか?」「診断名なのか?」などを素早く把握してください。次に選択肢を軽く見渡します。時折、選択肢が長文であることがあるため、読むのに時間をかけすぎないよう気をつけてください。次に、添付画像、音声、検査値などがあればざっくりと把握します。これらは文章ではないので、短時間で多くの情報を我々に提供してくれます。最後に問題本文を詳細に読み込んでいきます。この点で特に重要なのは、問題本文を読み始める前にすでにある程度の情報を持っているため、非常に有利に本文を読み進められることです。回答に必要な情報がどこに隠されているのかを探し出すように、目を早く動かして読み進めます。一文一文を丁寧に味わって読むのは、「読書」ではなく、「問題解決」のスキルが求められるため、それは適切ではないと思います。長い本文をスクリーニングするように、高速で本文を読む練習をしてください。

②NBME模試を一度受験する

 UWorldの第一周目を終えられ本当にお疲れ様でした。約3700問に取り組んだというのは、それ自体が素晴らしいことです。IncorrectやFlagとしてマークされた問題が大量に貯まっていることでしょう。たとえば、正答率が50%で、10%にFlagマークを付けているとすれば、それでも2000問以上が再度解く必要がある問題として分類されています。しかし、一度それらの問題は無視し、まずはNBME模試(Form25)に取り組んでみましょう。Incorrect&Flagを無視して良いのか、と疑問に思うかもしれませんが、再度UWorldの2000問以上を解くのは精神的に辛いでしょう。そのため、メリハリをつける意味でも一度模試を受けることをおすすめします。さらに、自身のゴールと現状の差を早期に把握するためにも、模試を早めに一度解くことは有益だと考えます。

2.1 NBME模試

 NBME模試(Comprehensive Basic Science Self-Assessment)は、Form25からForm31まで全7回あり、一回につき60ドルが必要です。全7回すべてに挑戦する方もいれば、数回だけで止める方もいます。直前期に2回連続で受けるという秘策もあります。初回は番号の一番小さいForm25から始めることをおすすめします。全7回あるため、最後まで温存せず、早期に取り組み始めましょう。試験は75分×4セットで構成されていますが、各休憩時間は自由に好きなだけ取って構いません。また、忙しい方は、同じ日に全4セットを解く必要はありません。体調が良く、頭が最も冴えている時に4セットに取り組んでください。初回受験の目的は、「現在地を知る」ことなので、休憩時間を3-5分以内にしなければいけないなど固執する段階ではありません。ただし、75分(50問×90秒)という時間制限だけは必ず守るようにしましょう。これは本番を意識し、時間配分に慣れるための必要な練習です。

2.2 NBME初回模試の結果と復習

 初回の模試結果はそれほど気にしなくても大丈夫です。本番のスピード感を味わえたと思います。また、まだスコアが60に届いていないかもしれません。しかし、一から始めたところからスコアが40台・50台を獲得した事に対して、自分の成長を感じてください。何となくゴールまでの距離感がつかめたなら、目標達成はもう間近だと思います。ちなみに、初回模試でスコア70以上を獲得した方は、おそらくこの記事を読む必要はないと思いますので、受験日を設定して早急にPASSしてください!
  NBMEの初回受験に関しては、必ず「復習」をしてください。正解した問題は解説をざっと読む程度で、時間をかけすぎないようにしましょう。偶然に正解した問題や不正解だった問題については、重点的に復習を行いましょう。私の推奨は、これらの復習問題に対して1問ごとに1枚、自作のAnkiカードを作成することです。カードが増えすぎると消化するのも大変ですし、作成に時間がかかりすぎてしまいます。そのため、1問に対して1枚のカードを作るという枚数制限を設けます。カードを作る際の質問と回答(カードの表と裏)も、ただ作るのではなく、欠けていた知識に対する本質を抽出し、それに回答させる形の問題(カードの表面)を自作してください。解説(カードの裏面)はスクリーンショットをベースに、画像や表を中心にまとめると、作成時間が短縮できると思います。UWorld1周3700問を解いて解説読んだにも関わらず抜けていた知識は、そのまま放置するのはかなり危険です。この時点から、自作のAnkiをこの段階からコツコツと作っていくことは、試験直前期に強力な武器となりますので、ぜひ自作Ankiを作成し、蓄積していきましょう(⑥の超直前期に効果が出ます)。その後、隙間時間を見つけて使ったカードを消費する癖も同時につけていきましょう。

③UW1週後にIncorrect & Flagを全消し

 UWorldを1周終え、NBME模試も無事に終えた次に取り組むべきは、「Incorrect & Flag」に分類された未処理の問題です。これらはおそらく1500問近くになるでしょう。少し気が重くなるかもしれませんが、これらは一度は解いたことのある問題です。初めて解いたのが数ヶ月前だったとしても、記憶の片隅には残っています。それほど時間をかけずに、スムーズに全問を一つ一つ確認し、「Correct」に変えていきましょう。この際、「System」を指定して範囲を絞るのではなく、ランダムで問題を解くことをお勧めします。すでにランダム形式で問われることはNBME模試で体験済みであり、そろそろ本番に向けた問題解決スタイルへのシフトを考えていかなくてはいけない時期です。頑張りましょう。
 また、この作業を行う際には、再び間違えた問題や理解が不十分な知識を放置することは危険です。その理由は、一度解いたにも関わらず、記憶が定着していないためです。このまま放置すれば、本番でも同じ間違いをする可能性が高まり、スコアを下げる原因となります。そういった問題に対しては、自作のAnkiカードを作成し、反復練習できるようにしておくことをお勧めします。

④NBME模試を2回目受験

4.1 試験日を決定するための判定試験

 UWorldで「Incorrect & marked」に分類された問題を全て解き終えたら、いよいよNBME模試を二回目に受けます。今回は、各セッション間の休憩時間も7分以内に設定し、可能であれば朝9時から始めてみてください。つまり、これは本番とほぼ同じスケジュールで問題を解くという意味です。この模試の結果に基づき、試験本番に進むべきか否かを決定できます。すでに試験日を設定している方は、延期するべきかどうかを決定する基準になります。USMLE Step1は、絶対に一発で合格しなければならない試験です。そのため、模試でスコア70を達成できれば、自信を持って本番に挑むことができると私は個人的に感じます。余談ですが、私は最終的にスコア70を超えましたが、申込時点ではスコア60前後で、試験直前期には精神的に非常に辛い経験をしました。これは繰り返しになりますが、模試の直しはしっかり行い抜けている知識は自作Ankiにいれ何度も復習なさって下さい。

4.2 70以上で受験日決定 or 70未満でUW2週目ランダム

 模試スコア70を基準に設定した理由について述べます。ボーダーを60や65に設定しても良いとは思いますが、私たちはUSMLEを一発で合格しなければなりません。2022年1月26日にPass/Fail制への変更と同時に、合格基準値が194から196へと引き上げられました。その結果と考えられますが、非米加学校(Examinees from Non-US/Canadian Schools)の受験者で初回受験者の合格率は、82%(2021年)から74%(2022年)へと低下しました。私たちはこの26%の不合格者に加わってはなりません。STEP1を2回目の試み(2nd attempt)で合格したという記録が残ると、マッチングでネガティブな印象(Red Flag)を与える可能性があります。安全策として、合格基準を模試スコア70と設定しました。また、模試スコア60近くを取れる方なら、半月から1ヶ月程度で70まで達成可能と思いますので、焦って試験を受ける必要はないと考えます。私自身、模試で60を超えれば合格できると高をくくっていたところ、その後受けたUWSA2模試で苦い経験をし、試験直前期に心が大いに揺らぎました。安心して合格するためにも、基準スコアを少し高めの70に設定することをお勧めします。ただし、これは私個人の意見であることを明記しておきます。参考にしていただければ幸いです。

↑Step 1 Administration(公式発表)↑

4.3 受験日決定と一緒にホテルも予約

 受験日が決定したら、会場から徒歩圏内のホテルを予約することをお勧めします。キャンセルの期日はしっかりと把握し、利用するかどうかは本番直前に決めれば良いです。私の実家は御茶ノ水から約30分のところにありましたが、念のために予約をしました。前泊のメリットとしては、

・渋滞や電車遅延、天候不良のリスクを回避できる
・前日に会場確認ができる
・家族や同居人と離れて集中できる
 
という点が挙げられます。御茶ノ水ソラシティから徒歩2分のところに「お茶の水ホテルジュラク」があり、これをおすすめします。私は最終的にキャンセルしましたが、調べたところ、このホテルが最も近く、かつ清潔そうでした。

↑ お茶の水ホテルジュラク ↑

4.4 受験日を長期休みの最終週に設定

 これは学生向けのアドバイスとなりますが、USMLE STEP1の受験日は長期休みの最後の週に設定することをお勧めします。学生にとっての最大の強みは「十分な時間」です。これを最大限に活用しましょう。試験の勉強に集中できる時間、心身を本番に備える時間を確保することは社会人にはなかなか難しいことです。これは学生だけの特権です。充分に活用し、その「十分な時間」をSTEP1の合格に全力で投資しましょう!

↑ 学生にとっての最大の強み ↑

⑤ 各模試を受験→UWで補正→また受験

Free 120

Free 120 は、実際の試験と同様の形式で受験できます。有料 ($155) ではありますが、本番と同様の試験会場 (Prometric)で Practice Session を受験することも可能です。解説は提供されていませんが、「Free 120 Explanations」とGoogleで検索すると、たくさんの解説が見つかると思います。試験日まで時間がある人は、じっくりと問題の解き直しを行いましょう。抜けていた知識については、自分でAnkiカードを作成することを忘れないようにしましょう。また、実際の試験と同様の受験説明「Step 1 Tutorial」も確認できますので、必ずよく読んで、リラックスした状態で本番に臨めるようにしましょう。余談ですが、私は4年生の時に本番2日前に解いて、60%でしたがPASSしました。スコアが悪くても心折れずに頑張って頂きたいです。

↑ Free 120 ↑

5.3 本番のスコア予想サイト

 「Predict My Step Score」というサイトは、あくまで参考程度ではありますが、実際の試験のスコアを予想する役割を果たします。有名なこのサイトを利用する際には、注意点が一つあります。それは、NBME/CBSSAのスコアをUSMLE STEP1の三桁のスコアに変換する必要があるということです。「NBME SCORE CONVERSION: CBSSA TO STEP 1 CONVERTER」を使用すれば、下の図のようにスコアを変換してくれます。この変換した数値を「Predict My Step Score」へ入力するようにしましょう。結果に一喜一憂することなく粛々と本番まで鍛錬を続けて下さい。

↑ NBME/CBSSA の変換サイト ↑

⑥自作Ankiのやり込み & First Aid 通読

6.1 自作Anki

 先述した②の2.2と③において、自作Ankiカードが大量に溜まっているはずです。これらは、漏れていた知識を補うためのものですが、同時に自分を合格へと導く重要なリソースでもあります。毎日、これらのカードをひたすら繰り返し学習し、合格への道を歩みましょう。本番当日の朝、会場に到着するまでの時間さえも、Ankiカードを見返すことでPASSを確実なものにさせましょう!

6.2 First Aid でキーワード通読

 厚い本の通読に自信がある方は、First Aid (該当範囲の約700ページ)の1ページ目から通読することをお勧めします。しかし、多くの方にとってそれは困難かもしれません。そこで、私が試験直前期に実践していた勉強法を紹介したいと思います。それは問題を1問解いた後、キーワードをピックアップし、それをFirst Aidの電子版で検索するという方法です。例えば、「cataract」というキーワードでFirst Aid電子版を検索すると、29件(12ページ)の結果がヒットします。それら12ページを全て読むのです。そうすることで、「cataract」に関連する周辺知識も同時に記憶に残ることができます。私はこの方法を「キーワード通読」と呼んでいます。

↑ キーワード通読 (eg, cataract) ↑




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