熱気球(ホットバルーン)で上空へ
ホットバルーンとは熱気球のことである。
アメリカで、飛行機の免許の陸上単発 → 陸上多発 → グライダー → 水上飛行機と免許を取り進んだ私は、飛行学校の校長ジョーに「トシ、今度はホットバルーン(熱気球)にでも挑戦するかね」と言われたが、それにはあまり興味が湧かなかった。
しかし、その言葉が耳に残っていたのか、数年後にアメリカのユタ州パークシティで熱気球に乗るチャンス訪れた。今回はそれのエピソードを記してみたい。
1989年1月、私と友人の斉藤君は2人でスキーの目的で、アメリカ中西部のユタ州パークシティに滞在していた。
ここは後年の2002年にソルトレイクオリンピックのアルペンスキー会場になったところだ。
我々2人が滞在していたコンドミニュアムの事務所を通じて、朝の早い時刻に熱気球を飛ばすとの情報が入った。
早朝だから寒いが、滅多にないチャンスだから「よし、行ってみよう」となった。
我々は乘ったことが無いから要領は分からないから見ているだけだが、スタッフが大勢いて準備を進めている。
しばらくすると「さあ、準備はできた。乗って下さい」と言われた。人が乘る籠にはドアも無ければ、暖房もない。我々は籠をまたぎこむようにして乗り込んだ。
まるで映画「80日間世界一周」のシーンの様だ。
するとパイロットがバーナーの熱量を上げて、風船の中に温かい空気を送り込んだ。少しすると気球はふわりと浮き上がり、地上を離れた。
熱気球のパイロットに「私は、飛行機のパイロットだ」と言ったら、「じゃ、今度熱気球に挑戦するかね」と、またもや言われてしまった。
まぁ、それはともかく、パイロットのやることを見ていると、大体要領は分かった。
つまり熱気球は、バーナーで温めた空気で高度を上げ、下げたいときにはバーナーの火を止めるのである。舵は無い。だから行きたい所へ行くのが大変なのである。
気流を読み、早目早目に高度の上げ下げを行い、高度と方向を保とうとするのである。
気が付くと、なぜか隣に金髪の美女がいた。そして寒い上空でジャンパンを抜くのである。「えっ、この寒い上空で、しかも早朝なのにシャンパン飲むの・・・?」と思ったが、美女の差し出すシャンパングラスを断るのも悪いので、サンキューと言って口に含んだ。
早朝の寒空でのシャンパンは、内心は上手いとも思わなかったが、顔では「最高だね、美味しい。有難う」という顔をした。
さてパイロットを見ると、彼は地上のスタッフと盛んに無線で連絡を取っている。
だんだん分かってきたのは、熱気球は思うところに降りられるとは限らないのである。その為、地上のスタッフはそれを回収に行くため、数人がいつも居なくてはならない。
まぁ、今回はほぼ出発地点に戻れたが、地上に降りると同時に、地上のスタッフが一斉に風船を手早く畳んだ。そうしないと突風であおられるからだ。
見ていると優雅だが、なかなか大変だ。
籠から降り、お礼を言って帰ろうとすると、マネージャーが私に声を掛けて来た。
「頼みがある。ここにある英語の我々のパンフレットを、日本人向けに日本語に翻訳してくれないか。ギャラは無しで頼む」という。
今のようにパソコンなどない時代だから、その場でという訳にはいかない。それで、「分かった。でもここでは無理だ。日本に帰り、ワープロで作り、FAXか郵送する方法でどうだ」と返事したら、それでOKだと言う。
私は約束を果たした。その後、パークシティでは季節を問わず熱気球が盛んになった。日本人がどのくらいきたかは知らないが。
関心がある方は、一度乗ってみられたらどうだろう。
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