雨にけむる奥飛騨温泉郷で新発見
ここは長野と岐阜の県境にある安房峠。もう何百回通ったことだろう。以前は冬季通行止めだったが、近年トンネルが出来、1年中通りぬけれるようになった。
長野県の上高地の分岐点からその安房トンネルを抜けると、岐阜県側の麓に平湯温泉がある。
奥飛騨温泉郷は、ここから神岡に通じる国道471号線、通称“湯の花街道“に沿って始まる。
平湯温泉、福地温泉、新平湯温泉、栃尾温泉と続くが、ここへ来ると私の頭には自動的に音楽スイッチが入る。
曲はもちろん ♪奥飛騨慕情。あ~あ~奥飛騨に雨が降る~ の件が印象に強いので、晴れていても、湯けむりにむせぶ奥飛騨は通るだけでも肌がしっとりする気になる。
さて5月中旬、富山で用事を済ませた私は、いつものようにこの逆ルートで東京へ向かった。
すると途中の道の駅で、偶然にも親友の写真家柳木昭信氏に会った。彼は「平湯温泉に寸志で入れる温泉がある。風情がある。お勧めですよ」と教えてくれた。
センスの良い彼が勧めるのだから、まず間違いは無いだろう。彼も平湯温泉は何度も通っているが、近年そのお湯のことを地元の人から聞いたとのことだ。
まぁ急ぐ旅でもないし、では一つその風呂に入っていくかと思い、聞いた通りにその温泉に車を走らせた。
あった! だが人気(ひとけ)はほとんど無い。小雨と湯けむりにけむる中に、静かにたたずんでいる。まさに♪奥飛騨慕情の歌詞の通りの風情がただよう。
利用料の寸志は、目安300円と訊いたので、100円玉3個とタオルをもって男湯の引き戸を開けた。誰もいない。貸切状態だ。露店の湯舟には屋根が掛かっているし、雰囲気最高。
広い湯船で手足を伸ばし、湯船からの湯けむりを眺め、周りの木々に降る小雨を見て、奥飛騨慕情を口ずさむと、あぁ~日本人にうまれてよかったなぁ~と満足至極。
さて、風呂から上がり、寸志300円を投入しようと料金箱を探すが、見当たらない。おかしいなぁー、何処かにあるはずだが・・・と思い、2度、3度と探すが見当たらない。
しかたなく諦め、その地を後にしたが、そのお湯は特別の効能があるのか、東京へ帰るまで身体が芯まで温かかった。
これで、平湯温泉を通る楽しみが増えた。雨にけむる奥飛騨温泉郷での新発見だった。
東京に帰り、勧めた柳木さんに聞いたら、駐車場からすぐのところに料金箱があると分かった。 ごめん、今度2回分払うからね。
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