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今年も大学院でアートマネジメント(知的財産権・契約法)の授業を受け持っている話

ZOZO法務部の采木です。画像は法務相談Slackアプリ「ほうむくん」です。

今年もアートマネジメント(知的財産権・契約法)の講義を大学院で行っています。アートマネジメントは、アートとその周辺領域(法務を含む)を扱うコースです。実務家の知見と個人的な知識をベースに色々な切り口で事案を検討できるので、とても楽しい授業です。

例えばこんな事例です。
- バンクシー(仮)が都内のあるビルの外壁に無断で作品を描き、話題になった
- ところがそのビルのテナントBはその壁を削ってバンクシー作品を取り外し、オークションにかけて作品を売却してしまった
- オーナーAはテナントBに対して作品が盗まれたと損害賠償を請求。これに対してテナントBは(壁を修復すれば)オフィス賃貸借契約上の原状回復義務は尽くしており違法はない、と主張

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画像2(さらに、オークションがチャリティオークションだったら?とかオーナーAはオークション運営者や落札者Cに何か請求できないか?等の派生事例も)

またはこんな事例です。
- ストリートアーティスト(当時)のREVOCがニューヨーク市の公園の外壁に無断でグラフィティを描き、話題になったが、H&Mがこの作品を無断で用い、新ラインの広告動画を作って公開した
- REVOCは自己の作品の著作権を根拠に使用差止めと損害賠償を請求。これに対してH&Mはクリーンハンズの原則を主張して反論

画像3(さらに、H&Mの新ラインが全然売れなかったら?とかH&Mの広告動画もニューヨーク州に無許可で撮影していた場合は?等の派生事例も)

どちらも法務目線で見れば日本法では大体こうなるよねが明らかだと思いますが、自分が当事者の代理人になったら何をどう主張するか?それに対してどう反論するか?など具体的に議論してみると結構盛り上がります。毎年、学生の方から作品の背景やカルチャーについて意外なインプットももらえるので、アート側の勉強になります。

(今年はNFT!と思って準備してましたが、議論の深まり方が同時進行過ぎるので、授業でまとめて取り上げられるのは来年になりそうです)


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