プッシーガロア

プッシーガロア

作:ウダタクオ 2006年09月12日-2006年10月09日


ミスターミドルとの出会い

 この日は浜松町の南口に集合だった。派遣メンバーがぞろぞろ集まってくる。早朝だ、皆は不機嫌そうに携帯電話をいじっている。朝から忙しい奴等だ。私はまだ半分夢の中にいた。

 集合時間になると、点呼係の男がネームリストを見ながら我々の名前を呼んでいった。そいつは常にテンションが中の上みたいな奴で何もかもが上がりきらない感じだったので、私はミスターミドルと呼んだ、心の中で。

 歳は30代前半といったところで、背が高くがたいも良い、日焼けした肌が白い歯をより一層際立たせている。髪型は短髪で茶髪ぎみだ。

 私の勘だが、こいつは昔ヤンキーだったに違いない。どこからともなく暴走族あがりの匂いがするからだ。

 ミスターミドルは先陣をきって我々を駅からバス停まで誘導していった。族やってた頃は間違いなく特攻隊(ぶっこみ)だったはずだと私は思った。ふふふ、血が騒ぐかい?私は心の中でミスターミドルに語りかけた。バス乗り場を目指してぶっこんでいくミスターミドルの目は瞳孔が開いていた。凄かった、彼は若かれし青春の日々へとタイムスリップしていたのだ。

 我々がバスに揺られ辿り着いたところは、バカでかい倉庫だった。

 バスを降りた時、ふと前方を歩く(常にぶっこみ)ミスターミドルに目をやると、足を引き摺りながら歩いていた。ただ、人を運ぶためだけの日本のバスのせいで奴は足が痺れたんだなと私は単純に思っていた。

 我々は警備員の関門を抜け倉庫内に入ると、まず初めに館内における注意事項の説明を受けた。半袖のYシャツにネクタイを絞めた若い男が早口に話していく。そのほとんどを私は聞いていなかったが「トイレは各階に西と東と二ヶ所ずつありますが、派遣で来た人は五階の西口のトイレは使わないようにしてください」と言っていた事はなんとかキャッチできた。

 仕事が開始された。開始されたはいいが私たちは何をしてたらいいのか分からなかった。

 間もなく、汗っかきのデブの女が社員らしき現場の人間に仕事内容を聞きにいこうとした「おいっ!」私はそのブスを睨んで言った「調子にのってんじゃねーよ!!」こちらを振り向いたそのデブは私を見て微笑んだ。私は負けた・・・一枚上手のファットファニー。敗北だった。

 そして社員から情報を聞き出したそのデブが指揮をとり仕事が始まった。久し振りに出会った強者だった。私は脅威を感じた。きっと殺される、私はきっとこのデブにいつか絞め殺されてしまう、頭の中を3回転ぐらいした。

 ミスターミドルは現場でもぶっこんでいった。一番元気があった。慣れた手つきで仕事をしていたが、足を引き摺っていた。

 私は気になって・・・いや、興味本位で彼に接近してみた。軽く世間話を交えて私は足の事をミスターミドルに聞いてみた。

「ほりえもんの初公判がこないだあったけど、お前の足ときたらどうなっちまったんだい?」

 ミスターミドルは一瞬ためらった後はにかんで言った。

「そいつぁーはめられたんだぁ。よくある話さぁ、出てくる釘は打てってね」

「臭いもんにゃあ蓋をしろってかぁ。で、誰にやられた?お前さん」

「あいつだっ!今、7番のコースを走ってるフォークリフトのファック野郎だ!」

 ミスターミドルはその屈辱の瞬間を思い出したかのような表情で言った。強張った顔、剥き出しの復讐心、やはり瞳孔は開き青春期のあの頃にかえっていた。ぶっこみのミドル!!

 フォークリフトの男はスキンヘッドで見事なドライブテクをみせた。華麗なハンドルさばきはオーバードライブしていた。私はついその美しさに見惚れてしまっていた。

 昼休憩の時間がきた。私は昼食をとりに休憩所に足を運んだ。休憩所は日本の大学の学食並みの広さがあった。皆はグループで固まって食事をとっていた。私は日本人を感じた。

 フォークリフト乗りのグループは直ぐに分かった。奴らは皆、奇抜な髪型をしている。私は彼らのたまっているテーブルの横の席に腰掛けた。


ミスターミドルの寛大さ

 私は椅子に腰かけると2時間振りに煙草に火を点け、彼等の話し声に耳を傾けた。外は雨が降っている、幸せの雨なのか?悲しみの雨なのか?私が白い煙をふーっと吐き出した時、事実を私は知った。

「あいつさぁ、子持ちだってよ」

「まじでー!?あんな事しちゃってお前はやっぱ悪だねー」

 スキンヘッドと仲間達が喋っている。ミスターミドルの事だなと私は直ぐに分かった。

「むかついちまったら、何でも有りになっちゃうんだよね~俺さぁ」

「うけんな、それ!」

「あいつ真面目過ぎんだよ。なに!?熱くなってんの?って感じでうざいんだよ、そういうの」

「分かる分かる。そんな時代じゃねーよ、マジで!たかが仕事だぜ!?」

 私はゆっくりと立ち上がると、テーブルごとに置かれていたお茶のやかんを持ってスキンヘッドの後ろに立った。「おいっ!」低い声で私は言った。そして振り向いたスキンヘッドの頭の上に熱湯のお茶を注いだ。

「努力しゆ奴を馬鹿にすんな!!」

 

 私の声は休憩所中に響いた。

 乱闘が始まった。私はとにかくスキンヘッドさえ抑えれば残りの奴等はなんとかなると思った。山の天辺に座りたいなら、ボス猿を狙えだ!

 怒りと火傷でスキンヘッドの頭が赤くなっている。奴が殴りかかってきた。えっ!?・・・拳が見えない。左左ジャブジャブ!右ストレート!!

 ストツーターボの隠しコマンドを入力するみたいに奴はパンチを打ち込んでくる。全部もらって私はぶっ倒れた。立てよ!おい、こら!立てよ!!うっすら聞こえてくる。スキンヘッドは3メーターばかり離れた所にいた。飛び蹴りだ、起き上がりざま飛び蹴りだ!それしかない。私の脳裏によぎった。

 ブリッジジャンプして起き上がった私は2~3歩踏み込んで飛び上がった。うまく距離感が掴めなかった。私は奴に飛び蹴りを食らわす前に膝が奴のこめかみに届いてしまい、そのまま重力に任せ奴の体を押し倒した。倒れた瞬間、一瞬早く起き上がると私は奴の脇腹をおもくそ蹴り上げた。奴にとっては最悪の一発だった。綺麗にはいった蹴りで、スキンヘッドは呼吸がうまく出来なくなっていた。私は腹を抱えてうずくまるスキンヘッドの顔を蹴り飛ばした。仲間達はただ茫然としている。

 3度目に蹴り上げようとした時、私の肩を誰かが掴んだ。ミスターミドルだった。

「バカ野郎!!」

 私はミスターミドルにぶん殴られた。

「てめーは人の事で勝手に何やってんだよ!!違うだろ!そうじゃないだろ!!やられたから、やりかえす?違うだろっ!!」

 休憩所は静まりかえった。ミスターミドルの声が、叫びが、鳴り響いた。

「暴力に暴力じゃあ、あいつらの腐った根性は直らねぇ!!生きざまだよ!!俺の背中みせてんだよっ!!!!いつかきっとくる、一生懸命になるって良いな、何かに熱中して努力するって良いな、あいつらだっていつかそんな日が来る!!必ず来る!!そいつをあいつらに教えてあげたいんだ俺はっ!!」

 休憩所にいる全ての人々がミスターミドルの言葉を真剣に聞いていた。

「確かにお前にはあいつらにはめられたと、そう言った。それは、お前なら気付くと思ってそう言ったんだ!腐り切ったあいつらは今の日本の若者を代弁してる!それに対抗して思いっきりやり合うってのは、汗水垂らして一生懸命働くって事だ!!やりかえすって事はそういう事だ!!頑張るって事だ!!暴力に暴力じゃあ、戦争だよ。何も変わらない。お前にはそれに気付いて欲しかった、残念だ」

 ミスターミドルは涙を流しながら言った。スキンヘッドも、その仲間も泣いていた。私も泣いていた。みんな泣いていた。休憩所にいる全ての者が泣いていた。

 こんなぶっこみがいるぐらいだ、まだまだ日本は捨てたもんじゃない。

 私は人間って良いなと思った。

 間もなく休憩時間は終わり、私は持ち場にかえった。


プッシーガロア

 私たちは午前中に仕事をある程度は覚えたので、午後からの作業はスムーズに行なえた。あのデブの女はやはり只者ではなかった、仕事を教えるって事にかけちゃあ派遣ではなくプロだった。なぜか、私にばかりかまってき、まるで必要なさそうな小さなところまでを事細かに説明した。

 そのデブの女は私に言った。「出来の悪い子ほど可愛いものよ」

 午後からの現場の雰囲気は午前中とは明らかに違い活気に満ちていた。ここにいる誰もがやる気に満ち溢れ良い汗を流している様に私には映っていた。私はなんだか気分が良かった。

 ここの現場はグループをABCの3つに分けており、私達のグループはAチームだった。流れ作業なので動きが止まらないように昼休憩の1時間は30分ずらしでとる事になっていた。

 Bチームが現場に入ってきた、スキンヘッドもその中にいた。私の方に歩いてくる。スキンヘッドは頭に包帯を巻いていた。彼は私の前に立ち止まると、右手を差し出してきた。私は作業している手を止め、グリースの付着いた手をズボンに擦り付けてから、右手を差し出した。そして、私達はがっちりと握手を交わした。

「やかんのお茶熱かっただろ。悪かった、すまん。」

「気にするなよ、あいつで寝呆けてた俺はやっと目が覚めたよ。あれぐらい熱くないとな」

 二人で大笑いした。まわりの皆はきょとんとした表情でこちらを見ていた。

 男の友情は気持ち良いなと私は思った。ミスターミドルは相変わらず人一倍働き、声を出していた。お前もああなれよスキンヘッド。

と、私は何かを忘れていた事に気が付いた。思い出したのだ、そういえばトイレに行きたくてずっと我慢していたのだった。女なら漏らしていただろう。

 Aチームは昼からは4~5階に振り分けられており私は5階だった。まだ、全然と言っていいほど私には間取りが分かっておらず迷子になった。

 この倉庫は確かに広過ぎた。私は手探りでトイレを探し歩いた。そして、迷いに迷って辿り着いた所は人気が全くなく、明らかに今までとは違った雰囲気のする空間だった。私の目は知らず知らず泳いでいた。

 どこからともなく男と女の声がする。話し声がどこからか漏れている感じだ。

 私は何気なく声のする方へ歩いて行った。次第に声がはっきりしてくる、男はまるっきしおっさんの声で、女の声は若く明るかった。私はトイレを難なく発見してしまった。そこから声が聞こえてきていたからだ。女子トイレだった。赤い女のマークが付いていた。ドアには貼り紙がしてあり、そこには「男子使用可」と書かれていた。何かとてもヤバイ匂いがした。話し声は続いた。

「で、どうすんの?おっさん?やるの?やらないの?」

「い、いくらだっけ?」

「万券1枚フェラなし」

「高いな~」

「おっさん!自分の顔鏡で見てからしゃべれよ!!」

「分かった、分かったから」

「はい、じゃあ1万ね。前払いだから、よろしく!」

 プレイは直ぐに終わった。女は当然感じてはいないし、声も出さなかった。おっさんが汚い声を発し、女ははぁはぁ言ってただけだった。

 私は後ろに気配を感じた。はっ!?としてとっさに振り向いた。ミスターミドルがいた。

「ガロアだよ。その女子便ん中にいる奴は」

 ミスターミドルにはまだここでやるべき事が残されていたみたいだ。

 私とミスターミドルは息を潜めその場から離れ、非常口のドアを音が出ないようにゆっくりと開け外に出た。話しをする為には場所を移すしかなかった。そこは5階西口の踊り場だった。


プッシーガロアの悲劇

 煙草に火を点けると、ミスターミドルはゆっくりと話しだした。

「まぁ、見ての通りここで働いている女なんかはほとんどが子育て終えた年増の兼業主婦ばかりだ、そこへひょっこりまだ10代の若い娘が紛れ込んじまった、そいつがガロアだ。彼女がここへ来たのが約2ヵ月ほど前の事だ。本当なら高校3年生やってる歳だよ、ガロアは。それがだ、売春やってたみたいでな、そいつが学校側にばれちまって強制退学くらっちまったって話しだ。そこまでは良いんだよ。いくらでもやり直せる。問題はここからだ・・・」

 ミスターミドルは少し躊躇ってから震える様な声で言った。

「ここへガロアを引っ張ってきたのはその売春相手の野郎だ!」

 思わず私は唾を飲んだ。

「気付いてたか?Cチームに若い男なんかいないだろ?みんな腹の出たおっさんばかりだ。それは、なぜか分かるか!?Cチームは休憩時間をうまく利用してガロアを回してんだよ!!その為に退学んなってぷらぷらしてたガロアに仕事をあっ旋した、そいつがCチームのリーダーやってる奴だ!!そして調度この時間はCチームの昼休憩の時間だ。朝、なんか言われてなかったかお前?」

 そう言えば!朝なんか変な事を言われたなと私は思った。五階の西口のトイレは使わないでくださいとかなんとか言っていたような。ミスターミドルは続けた。

「ここは5階の西館だ。Cチーム以外は人っ子一人寄り付かないし、寄り付かせないように奴らが仕切っている。組織化された犯罪なんだよ!これはっ!!奴らにとってガロアは良い鴨でしかない。何でもそうだがな、自分がやめれるうちにやめないと、それこそ坩堝に嵌まっちまう。ガロアなぁ、あいつはあいつで分かっちゃあいるんだよ、このままじゃダメだってな。今ならまだ間に合うんだよ!!本人が自覚してる今なら!!そのうち麻痺しちまう、当たり前になっちまう、その前にだ・・・」

 ミスターミドルは拳を握り締めた。外は相変わらず雨が降っている。東京は雨が降っている。そして、ミスターミドルは息を殺すように言った。

「このままだと俺はあの娘を逮捕する事になる」

 ふいに痛みを感じた私は自分の拳を見た。皮が数ヶ所剥け、表面は血で固まっていた。

 ミスターミドルはおとり捜査官としてこの倉庫にやってきた、そういう事だった。そして、彼には葛藤がある、誰にも相談出来ない葛藤だ。

 ミスターミドルは少女に罪を与えたいわけじゃない、もう1度やり直して欲しい、そして人生の喜びや幸せを感じて欲しい、それだけだ。決して彼女一人が悪いわけじゃない、ガロアのそばには常に腐った大人たちがいた。あくまで彼女は被害者だ。狂った次元に巻き込まれているだけだ。

 ガキのメンタリティーのまま体だけが成長し年齢だけが大人になってしまった現代の大人たち、右に習えの教育、ユーモアのない世の中、知識ばかりを埋め込まれ知恵がない、想像する事よりも記憶する事に長けた国民性、自分さえよけりゃあそれでいいその精神、私利私欲に取り付かれ金にものを言わす、ばれなきゃいいやと赤信号を大勢で渡る、ガキの発想が罷り通る社会、それが今までガロアが見てきた世界だ!そしてこの倉庫は今のこの日本だ!!

 エネルギーの向けばが発散方法が分からず暴走する若者達、見て見ぬふりをする事無かれ主義者、他人の噂話に熱中する主婦達、しまいにゃあテレビに話題を振ってもらう始末。

 我が子がうるさいと殺してしまう母親、むかついただけでキレて親を殺す子供。

 それが、今の日本だ。

「ガロアなぁ、高校2年の時にレイプされてんだよ。犯人は大学生グループだった。そっから少しずつおかしくなっちまって歯車は崩れていった。大人の顔したガキに人生めちゃくちゃにされたんだよ!!その後もだ!!」

私には何をしてあげられるわけでも、何か言ってあげられるわけでもなかった。

 私は踊り場でずっと考えていた。

 雨音がやけにむなしかった。

 傷付いているのは、きっとガロアだけじゃない。

 自分なんかどうでもいい!どうなってもいい!と、投げ遣りにならないで。

 そんな時は、おんなじ気持ちでおんなじ空見上げてる人がいる。それを思い出して。

 あなたはあなたであなたのまま最高や!!


プッシーガロアの決意

 ガロアは毎日、毎日、死にたかった。いつも寝る時には死について考えた。そのせいでなかなかガロアは眠れなかった。逆に眠れないから、死について考えるようになったのかもしれない。ガロアは不眠症なのだ。

 その夜、ガロアは布団にくるまって目を閉じるとこう思った、私はもしかして世界で1番ピュアなんじゃないだろうか。

 

 朝が来ると昨日までの嫌なことを半分くらいは忘れ、半分くらいは覚えている。でも毎日はガロアにとって嫌なことだらけだった。

 ガロアはトイレの窓から狭くてぼやけた空を眺めては煙草の白い煙を吐き出した。

 瓶の中で凍った太陽がガロアをみている。そんな光りしか、ガロアの下(もと)には届かなかった。

 ガロアはいつも最終のバスで自分の町へと帰っていた。彼女は団地育ちだった。今でもその団地の市営住宅に住んでいる。

 バスに乗るとガロアは乗客している男の人数を数えていく。でも、彼女は最後までは数えない。今日やった男の数だけ数えていく。

 そして数え終えるとガロアはいつもげんなりとした。一人一人を相手にしているけど、全員を並べてみて見ると吐き気がする。

 ガロアはそうすることで、自分のしていることを客観視できた。ガロアにはそれが最悪で最低なことだと思える気持ちがあった。

 本能的にそうしていたのかは分からないが、ガロアは知らず知らずのうちに感覚が麻痺するのを自己規制させていた。

 夏が終わろうとし、風はもう秋だった。その日もいつものように5階西口のトイレにガロアはいた。

 そしていつものように腐った大人の男達の便所になった。

 ふっと窓の外を見ると辺りは暗くなっていた。ガロアは思った。

もう何もかもやめたい・・・もういい、死にたい。

 気がつくとガロアは屋上にきていた。眼下に広がる町の灯りがより一層ガロアを虚しくさせた。

 ガロアはゆっくりと一歩ずつ屋上の端まで歩いていくと、手摺りを跨ぎ生と死の狭間に立った。

 誰も私のことなんて知らない。私が死んでも何も変わらずに世界はまわり続けていく。

「死んでもいいよね?」

「ダメだ、死んだらダメだ!ガロア!!」

 どこからともなく声がした。誰かの声がガロアには聞こえていた。

 ガロアはその時、ひとりの男を思い出そうとしていた。

 いつもでかい声を出して人一倍頑張り、足を引き摺りながら一生懸命働いていた奴。私は一度もしゃべったことはないけど、確かそんな奴がいた。何度か働いてるところを見かけたけど、その度に胸がすうっとした。なんか覚えてる。

 ガロアは腰を下ろし煙草に火を点けると、そのままそこにしばらくいた。

 夜は静かにゆっくりと流れていく。そんな感じが彼女には久し振りで心地よかった。

 そして思い立ったように立ち上がると彼女は屋上から姿を消した。

 やけに星が綺麗な夜だった。

 

 この日を境にこの倉庫でガロアを見かける者はいなくなった。


最後まで読んで頂きありがとうございます!本編はここまでです。

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以下、あとがきになっております。(※活字による対談も掲載)

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