バックル
作:ウダタクオ 2006年09月23日
バックル
ふと昔を思い出す瞬間がある。
それは何かがきっかけだったり、何気ない時だったりする。
それは懐かしい歌がラジオや街のどこかから聴こえてくる感じで、その瞬間心がすーっとする。
くすんでしまった金のバックル・・・二丁拳銃。
あれは97年の秋だ。高校は辞めていたと思う。
変な店があった。今時の若者なんかは絶対に寄り付かないような、おっさんやおばさんがやっている店だ。ショップではない、店なのだ。
でかい水色の看板にはGパンセンターと書かれている。
ダサい服が店頭に吊されており、そのため中が見えない。
その吊された服を見る度に思っていた、これじゃあ公開処刑だ。
ある時、私はなぜかその店に入ってしまった。
なぜだろう?それが思い出せない。思い出そうとすると、いつも不思議な気持ちにさせられる。
それは恋の始まりの感覚に似ているのかもしれない。
あの時、私はなぜ?・・・分かるだろ。いつも付いてまわる。
一歩足を店の中に踏み入れると私はショーケースに目がいった。
そこへ向かってスクラッチしていく音が頭のどこかで鳴り響いた。
私は何かに呼ばれたようにそのショーケースの前まで行くと中を見た。
私が見たのは中じゃなかった。
私が見たのは金のバックルだった。
覗き込んだ瞬間見えた、二丁拳銃。
色んな物で埋め尽くされている中私が見たのは金の二丁拳銃のバックルだった。
値札が付いてなかった。
すみません、これいくらですか?直ぐ聞いた。壱万円ぜよ、おっさんがしゃがれた声で私に言ってくる。これはにゃあ50年代に造られたもんでよ、ほんまの金をつかっちゅうがよや!金ぞ!金!!ほんまもんの金ぜよ!!
レジ横の棚の側面にはE・YAZAWAのステッカーが何十枚もフックに吊り下げられ、彼はそのステッカーをちらちら見ながら私にしゃべっていた。
私には金がなかった。10代の若者にとって壱万円なんて大金だ。
すみません、もうちょっと安くなりませんかね?私が聞くと、壱万円!!凄く強気に言われた。ちょっとショックだった。
どうしても欲しかった、そんな気持ち分かるでしょう、答えはきっと奥の方、心のずっと奥の方。
私はバイトをした。
そして、その年の冬にはその二丁拳銃を手にいれた。
やったぁ!!と思ったのは束の間、私はベルトを持っていなかった。
私のバイトは続いた、次は皮のベルトだ。
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