インユーテロ

ガウロとシェリーヌ(番外編)

作:ウダタクオ 2007年04月03日



インユーテロ ガウロとシェリーヌ(番外編) 


「シドとナンシーの最後って結局なんだったの?」

ある時、シェリーヌがつぶやいた。いつもすぐにかえってくるはずのガウロの声はなかった。彼はもうそばにはいないのだ。

 灰色の朝、濁った空はこの街を目指し、いつしか疲れ果ててしまった人々の心情のよう。ネオ東京砂漠。湿ったテーマパーク。濁った水。それでも永遠に生き続けるプラスチックや煌びやかに輝く物の数達。星を・・・星を見よと言うのだけれど、この街ではさっぱり。

 朝がきた。コステロはいつもゆっくりと目覚める。そう、昼に近い朝、ゆっくりと目覚めるのだ。

 鳥の囀りが窓から差し込む光を乱反射させた。別におかしな事ではない。ある者にとってはごく自然の事であり、ある者にとっては話題の種にもなるし商売にだってなりうる。そして、ある者はそいつで死んだ。

 乱反射した光は様々な形へと変化し続け、ようやくハート型に落ち着くとコステロの手の平でとまった。そのハート型の光をコステロは握り潰すと、もう手の平に光はなかった。

「この程度の音にはもう飽きたな・・・」

コステロはぼそっと言った。

 全ての音には不思議な力が秘められている。ミュージックを聴いて気持ちが高ぶったり、癒されたりした事ないかい?そういう事だ。そのもっと深くて究極なところの音の話。

 街には隠れ潜んだ音がある。それは幻とまで言われた音で、当初は音楽家をはじめバンドマンや音楽愛好家の間で次第に噂になっていたが2000年に入るとその噂も自然と消えてなくなってしまっていた。よくある誰かの噂話やゴシップ記事のように。

 当時、その音の事を皆はこう呼んだ「ゴーストサウンズ」。頻繁にこの言葉が使用されていたのが、1980年頃の話で「ゴーストサウンズ」の話題で巷は大いに盛り上がった。人々は口を揃えてこう言ったものだ。「俺は見た事あるぜ!あれは絶対にゴーストサウンズだった」

見た事あるぜ!・・・見た事?・・・音・・・見た?

 1985年、ある学者の研究論文の発表により「ゴーストサウンズ」が大々的に公の場に登場した。しかし、それから2年後、よく晴れた日曜日の午後だった、その学者は不慮の事故で他界している。残された研究論文は約1万文字にわたり事細かに「ゴーストサウンズ」について書かれており、その後、2039年まで国家権力により公開を禁じられた。余談になるが、偶然にもその年はケネディ暗殺に関する全資料が解禁される年である。ケネディーとゴーストサウンズ!?・・・その事を知ってのうえか、コステロは今日もその音をさがしている。

 コステロがその音に気が付いたのはもう随分むかしの事だ。彼はひっそりとただ人知れず録音し採集していた。彼のコレクションは何百音にも及んでいたが、彼の求める音はまだみつかっていなかった。コステロは今日も街へと足を向かわせた。幻のゴーストサウンズを求めて・・・。


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