【ミニコラム】新潟市北区の一部地域で国民民主党の得票率が極端に低い謎

おことわり:この文章は、特定の党派性を含有した政治的主張を述べるものではありません。あくまで「数字を見て面白がっている」体でご覧くださればと思います。また、このようなタイトルですが、現状明確な答えやそれっぽい仮説があるわけでもないので、少々消化不良感が漂う文章となっております。力が至らないということで大変恐縮ではございますが、こちらも悪しからずご承知くださればと思います。

去る10月に衆院選が行われました。ご存じの方も多いと思われますが、衆院選の仕組みは「小選挙区比例代表並立制」と呼ばれ、候補者の名前を書く「小選挙区」と政党名を書く「比例代表」の2票を一度に投票し、それぞれで当選者を出す仕組みになっています。今回は、政党名を書く「比例代表」についてクローズアップしていきます。

さて、この比例代表制、各市区町村、選挙区ごとの各政党の得票数が選管からデータとして公表されています。ここで、新潟市北区(1区)の結果を見てみましょう。

(有効投票数:11524票)※按分票のある政党は端数切捨て
自由民主党:4478票(38.9%)
立憲民主党:3527票(30.6%)
公明党:1159票(10.1%)
日本維新の会:961票(8.3%)
日本共産党:664票(5.8%)
れいわ新選組:382票(3.3%)
社会民主党:198票(1.7%)
NHKと裁判してる党弁護士法72条違反で:135票(1.2%)
国民民主党:19票(0.2%)

太字で強調した通り、新潟市北区(1区)における国民民主党の得票数は次点のNHKと裁判してる党弁護士法72条違反で(以下NHK党)の7分の1とぶっちぎりで最下位となっています。

ここで、ある程度今回の衆院選の結果に詳しい方なら「あれ?」と思うかもしれません。というのもこの国民民主党たる政党、大政党と言うほどでもありませんが、全国的に見ればそこそこ堅調に票を集めており、ほとんどの市町村では社民党やNHK党の得票数を上回っているからです。国政政党の中で国民民主党の得票数が最下位だった自治体は新潟市北区(1区)の他に4か所(北海道西興部村・長野県大鹿村・高知県大川村・沖縄県多良間村)ありますが、いずれも山間部や離島のごく小規模な自治体かつ、誤差レベルの差である事例ばかりです。

一例として偶然にも国民民主党の得票数が新潟市北区(1区)と同数となった北海道西興部村の事例を見てみましょう。

(投票総数:716票)
自由民主党:268票(38.9%)
公明党:118票(17.1%)
立憲民主党:113票(16.4%)
れいわ新選組:42票(6.1%)
日本維新の会:38票(5.5%)
日本共産党:37票(5.4%)
社会民主党:21票(3.0%)
NHK党:21票(3.0%)※NHK党の全国最高得票率
国民民主党:19票(2.8%)

ご覧の通り、確かに西興部村も国民民主党が最下位であることとその票数こそ新潟市北区(1区)と同様ですが、社民党やNHK党との得票率の差はわずか0.2%(2票差、なお大鹿村・多良間村はNHK党と1票差、大川村は社民党と同率です)、そもそも全体の票数が文字通り桁違いに少なく、標本の誤差によりこうした結果が出てくるのもにべなるかなと言った趣です。新潟市北区(1区)のようにそこそこの有権者数がいる地域で最下位(しかもぶっちぎり)となっている事例はほかにありません。
また、19票と言う得票数も全国を見渡せば高知県北川村・鹿児島県十島村・沖縄県伊平屋村……など複数の自治体で見られますが、どれも人口が数百人~1000人程度の山村や離島ばかりで、仮にも政令指定都市で2万人以上の有権者を抱える新潟市北区(1区)の異質さがより際立ちます。

とはいえ、この比例代表の得票数、意外と地域の特性がよく出ることでも知られています。この国民民主党も大物議員の地元自治体、あるいは労組の組織票の影響力の関係で大企業の工場が立地する自治体では高めに出る傾向があり、最も得票率の高かった香川県さぬき市(国民民主党の玉木党首の地元です)では34.5%と(それが良いか悪いかは別として)ワンチャン政権を転覆できそうな数値が出ている一方で、青森県西目屋村や大阪府千早赤阪村では1%を下回るなど、地域差が大きいことがわかります。もしかしたら新潟特有の事情があり得票が少ないのかもしれません。もう少し詳しく見てみましょう。

さて、この新潟市北区、平成の大合併の都合で同じ区内にも関わらず選挙区が新潟1区・新潟3区の2つ(合併前から新潟市だった地域が1区、旧豊栄市の地域が3区。厳密に言えば旧横越町に相当する新潟4区の地域もわずかにありますが、人口が7人ぐらいしかいないので以降無視します)にわかれており、選挙区ごとに数値が出ます。今まで出していた数値は北区のうち新潟1区の選挙区内の数値です。旧豊栄市はそこそこ大きな街で今回の総投票数も1区のそれの倍ぐらいあるので絶対的な票数はどの党も上振れすると予測できますが、まずは同じ区内になる新潟市北区(3区)の数字を見てみましょう。

(有効投票数:23063票)
自由民主党:9399票(40.8%)
立憲民主党:6059票(26.3%)
公明党:2204票(9.6%)
日本共産党:1620票(7.0%)
日本維新の会:1368票(5.9%)
国民民主党:934票(4.0%)
れいわ新選組:793票(3.4%)
社会民主党:410票(1.8%)
NHK党:275票(1.2%)

なんと、同じ新潟市北区にも関わらず、NHK党や社民党、れいわ新選組をも上回る得票率を確保しています。1区と3区の結果を見比べてみると、ほかの政党は大きく得票率が変わらない(1区では日本維新の会がやや上振れていますが、これは新潟1区に日本維新の会の公認候補が出ていたことに由来するものと推測されます。他に1区は立憲民主党の得票率が3区比で絶妙に4%ぐらい高いですが、理由は不明です)のにも関わらず、国民民主党のみが20倍以上の極端に大きな得票差が出ていることがわかります。

とはいえもしかしたら逆に新潟市北区(3区)のエリアだけ極端に国民民主党の人気が高いのかもしれません。新潟市内各区の国民民主党の得票率も見てみましょう。

西蒲区:1875票(7.1%)
南区(2区):239票(6.8%)
西区(2区):10票(4.6%)※有効投票数が217票と極端に少ない
西区(1区):3378票(4.5%)
中央区:3769票(4.4%)
東区:2561票(4.2%)
江南区・北区(4区):935票(4.2%)
秋葉区:1545票(4.0%)
北区(3区):934票(4.0%)
南区:686票(4.0%)
江南区(1区):309票(3.2%)
北区(1区):19票(0.2%)
新潟市計:16266票(4.3%)
新潟県計:45964票(4.0%)
北陸信越計:133599票(3.8%)
全国計:2593396票(4.5%)※各都道府県で得票率最低は大阪府(2.2%)、最高は香川県(16.4%)

こうやって見ると、新潟2区に国民民主党の候補が出馬していた関係で新潟2区の範囲がやや高め(当該候補の地盤が燕市吉田なので特に吉田に近い西蒲区の数値が高いです)に出ていますが、ほかは概ねどの区も、そして全体で見ても4%前後に収束しており、北区(1区)の得票率の異様な低さが際立ちます。新潟県内の他自治体を見ても程度の差こそあれ概ね似たような数字に落ち着いており、ここまで極端に国民民主党の得票率だけが低い自治体は新潟市北区(1区)の他にありません。

また、一般的に全国平均とかけ離れた極端な数字が出る場合、なんかしらの理由がある(例えばこの国民民主党は香川県で得票率が高く、大阪府で得票率が低い……という特徴がありますが、これも前者は党首の地元、後者は日本維新の会の得票率が飛び抜けて高く国民民主党に限らず自民党や立憲民主党も得票率最下位を記録するなど在野政党がどこも苦戦していた……と言う事情があります)ことがほとんどです。あるいは先述の通り人口が少ない小規模自治体故にわずかな得票の差が大きな差になって現れるかですが、新潟市北区(1区)の事例は、周辺自治体ではごく普通の得票率を記録している上に新潟市北区の一部地域に限って極端な向かい風が吹く理由が(知る限り)ないですし、区の一部とは言えそれなりの人口規模があり「誤差」と言って納得ができる得票差でもありません。

新潟市北区(1区)の事例をまとめると以下のようになります。

・他の政党の得票率は全国平均と概ね同等なのに国民民主党の得票率だけ他地域の20分の1程度と極端なまでに低すぎる。
・同じ選挙区の他自治体(新潟市の他の区)や同じ新潟市北区の別の地域では普通に得票しているのにここだけ極端に国民民主党の得票率が低い。
・区の一部とは言えそれなりに有権者数が多い(18歳以上だけで2万人を軽く超えており小規模な市ぐらいの人口を誇ります)のに国民民主党の得票数がわずか19票人口数百人の山村・離島と大差ない。
・失礼ながらとかく全国的に泡沫政党・ネタ候補扱いされがちなNHK党の7分の1と言う桁違いに低い得票数。
・なんやったら比例代表東京ブロックに立候補した政治団体『新党やまと』の東京都におけるそれより当地の国民民主党の得票率の方が低い。
・超局地的ながら有権者からここまで明確に国民民主党が忌避されているにも関わらず、明確な理由が判明していない

こう言った特徴が伺えます。乱暴な言い方にはなりますが、この数字は異常であると言わざるを得ません。もちろん日本は成熟した民主主義国家ですから、一部の国で見られるように「票を操作された」とかそういう陰謀を唱えるつもりは毛頭ありませんが、とは言え釈然としない数字なのは確かです。

さて、ここまで書いてきましたが、この通り一番の肝心要となる「なぜ新潟市北区(1区)に限って極端に国民民主党の得票率が低いのか」と言う問に対する答えや仮説は思い浮かびませんでした。弁解しません。ごめんなさい。ここまでまるで異常事態のように書いてきましたが、ひょっとすると新潟市北区の一部地域に限って国民民主党が忌避されるだけの何らかの事情があるのかもしれません。
もし、新潟市北区(1区)に地縁があるなどの理由で、こうしたご事情に詳しい方がいらっしゃいましたら、ご教授いただければ幸いです。


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