ストーリーの続き

それでも僕は、彼の死を美しいと思った。


死は彼の潔さでもある。


事後報道は殺到し、SNSは話題で持ちきりになり、


批評や持論は書いては消してが繰り返された。


しかしながら、世間がどれだけ殺到しても彼には関係ない話なのである。


「死人に口無し」とはまさにこう言うことだろう。


僕は彼の美しさと潔さを見習うべきなのかもしれない。








彼はまだ20代であった。


それなのに「世間体」とかいう、愚かで都合のいい大衆を、


勇敢にも牛耳っていたのである。


時に他の誰よりも世間体を作った。


しかし時に、世間体に反した事項に銃口を理不尽に向けられる。


銃口というのは、時に無意識にむけていているものだ。


僕らは失ってやっとそれを認識する。


しかし日々新しさを求める僕らは、自分のことしか見れない僕らは、


愚かにもまた忘れてしまうのだよ…





彼はこれを読んでいる誰よりも強靭な心を持っていたのだろう。


それでも多感で果敢な「若さ」を武器に、世間と戦っていたのではないだろうか…


僕等よりも立派に生きていた…





僕といえば意志薄弱で、自他との間の線引きすらもできないほどのクズである。


自分のことですら中途半端だというのに、何を勘違いしていやがる。


自己肯定感が低い?


それはちゃんと関わってから言えよ。


台詞が臭い?


何も言わないお前は一体どこの誰なんだ?


烏滸がましいが、言わない秀才よりも、言う痴呆の方がよっぽど人間らしいと思う。


「やらぬ善より、やる偽善」と同義だよ。





関わらない、無視することが世間体でいう「強さ」なのかもしれない。


しかしそれで他人は大切な心を、貞操を、プライドを


理不尽にぶち壊されていることを僕らは忘れてはいけないと思う。


だから僕はいつまでも願い、追い求め続けたい。


「やさしくなりたい」と。





愚かにも彼の冥福を祈って…

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