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インターネット時代のテレビジャーナリズム (2005年12月)

 世界で最もブロードバンドが普及している韓国では、国民のテレビ視聴時間と地上波テレビの広告収入が低下傾向にあるという。要因の一つは、数年前からドラマを含むテレビ番組がインターネットで再配信されるようになったからである。
 インターネット上では見たい時に見たい番組が見られる点が、消費者に受け入れられているのだろう。韓国ではモバイル機器向けのモバイル衛星放送も始まり、パソコンや携帯電話、PDAでテレビ番組をみる若者が増えている。まもなく日本でもこうした現象が起きる可能性は高い。

 一方、インターネットの世界では、ポッドキャスティングがブームになっている。米国では2004年末くらいから、日本では2005年の夏くらいから流行している。ポッドキャスティングはブログの音声版だ。音楽とは異なり、基本的に無料でダウンロードできるものが多い。名前がPodcastingなのでiPodでしか聞けないと思っている人もいるが、パソコンでも、MP3に対応した携帯音楽プレーヤーでも聞くことができる。

 ポッドキャスティングが優れている点は、RSS2.0という技術をベースにしているため、聞きたい番組(サイト)を登録しておくと、新着ファイルが自動的にダウンロードされる点である。取り組んでいるのは個人だけではない。既存のラジオ局が次々とポッドキャスティングを始めている。

 当然、次は動画である。「音声ファイル+RSS」がポッドキャスティングなら、「動画ファイル+RSS」はVLOGあるいはビデオポッドキャスティングと呼ばれる。気に入ったサイトを登録しておけば、新着の動画が自動的にダウンロードされる。仕組みはポッドキャスティングとまったく同じだ。米Apple社は10月12日にビデオポッドキャスティングに対応したビデオ再生が可能な新iPodを発表した。こうした携帯ビデオプレーヤーで映像を楽しむ人が着実に増加することになるのだろう。

 さて、このように通信と放送が融合した世界では、誰がジャーナリズムを担うことになるのだろうか。インターネット、特にブログの世界では個人のジャーナリストが大きな影響力を持つようになってきている。しかし、コンテンツが文字から音声に、音声から映像になるにつれ個人が活躍する場は小さくなるのはないだろうか。もちろん、個人で活躍するビデオジャーナリストを否定するわけではない。しかし、質の高い映像でニュースを配信し続けることはそう簡単ではなく、個人のサイトがブログのように多くの人からアクセスを得ることにはならないのではないだろうか。

 実際、韓国でもネット放送が流行し始めた頃には、数多くの個人放送局やインターネット専業テレビ局が生まれた。現在もいくつかのニュース系サイトが生き残ってはいるものの、結局、アクセスを集めているのは既存テレビ局の番組を流すサイトである。もちろん、だからと言って市民ジャーナリストに批判されるようなレベルの低い報道を続ければ、その地位は安泰ではない。誰もがニュースを発信できるようになっただけに、プロの集団として質の高い報道番組を制作することが求められる。

 冒頭で紹介した韓国の事例で重要な点は、テレビを見ている時間は減少しているかもしれないが、それはテレビ番組を見なくなったわけではないという点にある。放送局の優位性は、希少な電波を利用できることではなく、質の高い番組を制作できる能力にあるのだと思う。

 そう考えると、通信と放送の融合は、放送局にとってビジネスを拡大するチャンスであって、決して憂えるべきものではないはずだ。テレビ番組は電波を使って放送し、生活者はテレビ受像機でテレビ番組を見るものであるという考え方を変える必要がある。特にニュースはオンデマンド性が高いコンテンツである。気になった時にいつでも質の高いニュースを見ることができる、それも興味のあるテーマを選んで視聴できる時代がきている。それに合わせてビジネスモデルを変革していることが必要なのではないだろうか。

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