DX再考 #6 プラットフォーム・ビジネス(その2)
プラットフォーム・ビジネスが注目される理由
近年、デジタル技術をフルに活用して2種類のユーザー・グループ間の取引を仲介するプラットフォームを提供している企業やビジネスモデルが非常に注目を浴びている理由はいくつかある。
第一に、時価総額ランキングの上位企業(GAFA, BAT [1] など)の多くが、プラットフォームを運営しているからである。
第二に、プラットフォーム・ビジネスは、急成長し、既存のビジネスの存続を脅かしたり、破壊するケースがあるからである。たとえば、プラットフォーム・ビジネスであるUberやAirbnbは急成長し、前者は公共交通機関やタクシー業界の、後者はホテル・宿泊業界の脅威となっている。
第三に、それぞれの市場が成熟すると競争のない、あるいは競争の少ない市場になることが多い。つまり、それぞれの領域で、生き残れる企業は、1つあるいは少数のプラットフォームになりがちである。この点については次項で少し説明する。
第四に、市場が独占市場あるいは寡占市場になるため、従業員一人当たりの売上高や利益が大きくなる。たとえば、Googleの親会社であるAlphabetの従業員一人当たりの売上高は165万ドル、純利益は49万ドルである。
Winner-Take-All(WTA)
プラットフォーム・ビジネスでは、ネットワーク効果が強く働くため、Winner-Take-All(勝者の総取り)になりやすい。
ネットワーク効果とは、利用者が増えれば増えるほど、その製品やサービスの価値が高まることである。つまり、市場シェアの大きい製品やサービスの競争力が高まることを意味する。
ネットワーク効果によって、強いものはより強くなり、弱いものはより弱くなってしまう。したがって、仮に市場を二分する2つの競合するプラットフォームがあっても、ライバルより利用者を多く獲得したプラットフォームが時間の経過とともにシェアを拡大し、最後には圧倒的な市場シェアを獲得することになる。
ただし、すべてのプラットフォーム・ビジネスが WTA(Winner-Take-All)になるわけではない。前回、プラットフォーム・ビジネスの事例として取り上げたクレジットカードの場合、市場は寡占ではあるが独占にはなっていない。VISA、マスターカード、AMEX、JCBカードなど複数のクレジットカードが存在しており、複数のクレジットカードを保有している人も少なくない。
一般に、WTAになりやすいかどうかは、以下の条件をどの程度満たしているかで決まると言われている。
ネットワーク効果が強いこと
プラットフォームに対するユーザーの多様性への要求が小さいこと
マルチホーミングコスト [2] が大きいこと
つまり、ネットワーク効果が強く働き、プラットフォームに対するユーザーの多様性の要求が小さく、かつ複数のプラットフォームを同時に利用するために必要なコストが大きいほどWTAになる可能性が大きくなる。
[1] GAFA, BATは、それぞれ Google, Apple, Facebook, AmazonとBaidu, Alibaba, Tencent のこと。これらの企業はプラットフォーマーと呼ばれているが、これは和製英語で海外では(おそらく)通じない。
[2] マルチホーミングコストとは、複数のプラットフォームを同時に利用(維持)するために必要なコストのこと。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?