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BCN 視点 #23 「セクトラルモデルの国民IDを」 (2009年6月8日)

 年金記録問題を発端として、個人を特定できる国民ID(国民番号)の必要性に関する議論が高まってきている。2009年1月にはNTT出版から『国民ID』(筆者も共著者)が出版されているほか、経団連などの団体が政策提言を行っている。例えば、経団連は昨年11月に「実効的な電子行政の実現に向けた推進体制と法制度のあり方について」を、今年5月には「新IT戦略の策定に向けて」を発表し、「企業および個人を一意に特定できる企業ID、国民IDの導入」を提言している。

 そのほか、情報化推進国民会議(事務局:日本生産性本部)は、07年7月に国民識別番号制度『JAPAN-ID』の早期創設に関する提言を出し、今年1月には「IT社会を支える認証基盤の確立を目指して~国民の安心を担保する仕組みを構築し、『JAPAN-ID』の早期に実現せよ~」という提言を発表している。

 情報化推進国民会議の提言には筆者も深く関与しているのだが、07年の提言と今年の提言には大きな違いがある。国民IDの導入によって、国民にとって利便性の高いワンストップの行政サービス、公平で効率的な行政を実現しようという点は同じなのだが、国民IDの運用モデルが異なっている。

 07年の提言では、すべての行政サービスで統一された国民IDを利用する「フラットモデル」の採用を提案しているのだが、09年の提言では、各行政サービスではそれぞれ個別の分野別IDを利用し、その各分野別のIDを「JAPAN-ID」に紐付けできるという「セクトラルモデル」の採用を提案している。

 このセクトラルモデルの特徴は三つある。
 まず、万が一どこかの行政サービスから個人IDが漏えいしても、そのIDはその行政サービスでのみ使われている番号であるため、情報漏えいの被害は限定的なものにとどめることができる。
 次に、国民が行政サービスを受けたい場合には「JAPAN-ID」で利用可能となるため、利便性が高まる。
 さらに、それぞれの行政機関が現在使用している機関ごとの個別番号はそのまま利用することができるため、導入に要する時間とコストを少なくすることができる。

 つまり、セクトラルモデルを採用すれば、国民にとって利便性を高めつつ、個人情報漏えいの心配を少なくし、国民が安心して利用できる仕組みを構築できる。ようやく政府でも国民IDの検討が始まったようだが、ぜひ、セクトラルモデルを採用してもらいたいと思っている。


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