見出し画像

利便性を実感できる韓国の電子政府 (2004年7月)ネット時評

 社会経済生産性本部が企画した韓国電子政府・IT産業調査団に参加し、韓国の情報化の現状を視察してきた。噂には聞いていたが、韓国政府の情報化は予想以上に進んでいる。たとえば、地下鉄の駅や銀行などに設置されたKIOSK端末で簡単に住民登録謄抄本などの交付が受けられるし、政府や地方公共団体の調達のほとんどがeマーケットプレイスで行われている。韓国では利便性を実感できる情報化が進んでいる。

遍在する行政KIOSK端末

 ソウル特別市の江南区は、電子自治体のモデルケースとして取り上げられることが多い。その理由の一つは、区内63か所に設置された103台の行政KIOSK端末である。区役所やその出張所はもちろん、地下鉄の駅構内、銀行、デパートなどにKIOSK端末が設置されている。この端末はインターネット経由で行政データベースにつながっており、住民登録謄本や土地台帳、課税証明書などの17種類の証明書類の発行が可能になっている。

 現地ガイドの車さんが地下鉄の駅に設置されたKIOSK端末を使ってみせてくれた。

 利用方法は簡単である。住民登録カードを差込み、必要な証明書の種類をタッチパネルから選び、本人確認のために指紋認識装置に親指をあてる、表示された料金を投入すると端末から証明書類がプリントされて出てくる。慣れれば30秒くらいで操作できるだろう。料金は証明書の種類によって異なるが、住民登録抄本で450ウォン(45円)であった。

 2002年2月からはインターネット証明書類発給システムも稼動しており、事前に利用者登録をすれば、自宅からインターネット経由で土地台帳などの11種類の証明書も交付可能になっているという。インターネット交付の場合には、料金は携帯電話料金に加算、クレジットカード払い、銀行口座振込みが選択できる。

政府調達はGePSから

 7月6日に訪問した調達庁ではGePS (Government e-Procurement System) の説明を受けた。一言で言えば、GePSは韓国政府が政府調達(建設土木作業と物品・サービスの調達)のために構築したeマーケットプレイスである。

 韓国ではある一定の金額を超える案件については調達庁が一括して調達を行っているのだが、このGePSは各省庁や地方自治体が独自に行う調達にも対応している。

 2002年10月からスタートしたGePSであるが、その取扱金額は年間36兆ウォン(3.6兆円)に達しており、入札案件の92%がオンラインで処理されている。GePSにアクセスすれば、地方自治体を含めた政府の入札案件のほとんどを知ることができ、入札条件を満たす企業であれば、簡単にインターネットで入札に参加できる。開札後には、落札企業だけでなく、入札企業と入札金額に関するすべての情報が公開されている。また、入札案件だけなく、随意契約の情報についてもGePSを通じて情報公開が行われている。

 GePSがカバーするのは金額が大きな入札案件だけではない。比較的金額が小さなオフィス用品や建築材料などについては、GePSの一部であるネット上のショッピングモールを通して簡単に調達が可能になっている。企業は売りたい製品やサービスをGePSに登録するだけでよい。このショッピングモールを通じた調達も年間46万件に達しており、その取扱金額は5兆ウォン(5000億円)規模に達している。

 GePSは政府調達のためのポータルとしてみごとにその機能を発揮していた。

情報スーパーハイウェイに信号はいらない

 この現地コーディネーターで、日韓両国の情報化について詳しい高選圭さん(世宗研究所日本研究センター研究委員)は、日本の電子政府・電子自治体の状況について「日本は2005年に世界最先端のIT国家になるという目標を立ててe-Japan計画を進めている。確かに情報インフラは整ってきた。しかし、日本は高速道路に信号をつくっている」と語っていた。

 韓国では住民や企業が利便性を実感できる情報化が着実に進んでいる。高さんが指摘するように日本の情報インフラは整備された。しかし、いったい何がどのように便利になったのだろう。整備された情報インフラの活用を阻害している「信号」を取り除き、国民や企業が利便性を実感できる電子政府・電子自治体の構築を進めてもらいたい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?