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NCニュースの読み方 #12 「長崎県が電子自治体システムをオープンソースに」 (2005年10月24日)

 長崎県は10月21日、県が開発した電子自治体システムの一部をオープンソース・ソフトウエアとして公開した。公開したのは、「休暇」、「WEB職員録」、「文書保管」の3システム。ライセンス管理は、長崎県下のIT企業が組織する「オープンソースベンダーフォーラム長崎」が担当する。

 同県は「自前設計・小分け発注」という独自の方法でIT調達改革を進めていることで有名だ(本誌2005年7月25日号、140~143ページ参照)。まず、専門家の助けを得ながら職員主導でシステムの詳細設計を行う(自前設計)。そして、その詳細設計を基にテスト仕様書を作成し、プログラミング工程とテスト工程を、発注金額にして500万円以下に分割して発注する(小分け発注)。自前設計で上流工程にかかる費用を極小化するとともに仕様変更のリスクを抑えれば、システム開発費を削減できる。小分け発注にすることで中小規模のソフトウエア・ベンダーが受注しやすくなり、地元ベンダーの育成につながる。

 今回ソース・コードを公開した目的も、県全体のIT調達コストなどにある。県内の市町村が同様のシステムを開発する際に公開したシステムを使えば、費用を削減できる。県内のベンダーがカスタマイズを請け負うケースもあるだろう。

 実は、オープンソース化の効用はこれだけではない。ソフトウエアは、本質的に「非競合性」を有する。つまり、一つのソフトを複数の(理論的には無数の)利用者が同時に使うことができ、利用者が増えても、そのソフトから得られる効用は変化しない。今回のケースで言えば、長崎県が開発したシステムは同県の財産かもしれないが、それを公開しても価値が減少するわけではない。それどころか、ソース・コードを公開することで、逆に長崎県は得をする可能性が出てくる。

 それは、これらの電子自治体システムが、最も一般的なオープンソース・ライセンスであるGPL(GNU General Public License)に準じて公開されているからだ。GPLに従えば、誰でも自由にソフトウエアを使用、改変でき、再配布も可能である。ただし、改変したソフトを再配布する場合はソース・コードを公開し、GPLをライセンス条件としなければならない。したがって、誰かが今回のシステムをベースに機能強化版を開発し、再配布する場合にはソース・コードが公開される。長崎県にとってみれば、コストをかけずに機能強化版を入手できる可能性があるわけだ。

 他の自治体も長崎県に倣ってシステムをオープンソース化してはどうだろう。市販のパッケージを利用していれば難しいだろうが、独自に開発したシステムなら公開できるはずだ。自治体の業務は、自治体によって多少の違いはあるものの、基本的には同じはず。似て非なるソフトウエアを別々に開発することに比べれば、それぞれが開発したソフトウエアを共有した方がコストは大幅に削減できるに違いない。

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