見出し画像

Web3は分散型の夢を見るか

*タイトル、その界隈では有名な「アンドロイドは電気羊の夢を見るか」のパロディです。既に誰か使っているだろうと思ったけどまだの模様。

コンピュータネットワークやソフトウェアの世界では、分散型というのは理想であり、また夢でもあります。

中央集権化したビックブラザーと分散化された暴走する自律ネットワーク、なんてまるでSFに登場するような話しではありますが、インターネットとその上で動くウェブ自体が分散型であり、インターネットの世界においては分散化(decentralized)というのはアイディオロジィ(理想・信条)とも言えるでしょう。

私も、今で言うP2Pというテクノロジーが登場した2000年前後、その理想にわくわくし、自分も何かP2Pを使った新たなソフトウェアを作りたいと思い色々と探ってみたものですが、結局何も作れませんでした。

エンジニア(工学者)ではない自分の限界。

分散型の欠点として、悪い事をするアクターを排除するのが難しいという点があります。投票でなんとかするような民主的というか多数決的な解決方法は、参加する者の多くが悪い事をしたい場合とかには有効ではないですし、現実は数が多ければ正しいというものでも無かったりします。

また、誰もがサーバーを運用したいと思っているとは限らず、ハード面というかインフラ面でも誰もが安定したサーバーとして振る舞えるようにはまだなっていない、という課題もあります。

現時点では、ハイブリッド型の分散システムが現実的なのでしょうが、管理元が居る限り、誰が管理するのか、という点が残って(それ結局わざわざ分散システムにする意味あるの?的に)中途半端になり、限られた例を除いて、結局なかなか、というところ。

金融においては、新たなマネタリーシステムとしてビットコインが真のピュアな分散型を実現させました。

その他の分野での分散型の試みはP2Pを含め軒並み失敗というか、一般にはそれほど普及しているとはいいがたく、登場しては何か色々と問題が発生しては下火になっていっていきました。(法的な問題やスパムに汚染されたりして)

ビットコインの成功はコンセンサスアルゴリズムなどの組み合わせを使って管理者不在(トラストレス)を解決したからですが、ビットコインというデジタル動産を扱う(報酬も同じ)システムだからこそ、だと思っています。

*つくづく、ビットコインの開発者は凄いです。誰なのかは今世紀最大の謎(自分の中では)。

つまり、暗号通貨的なピュア分散型の方法は、デジタル暗号通貨というマネタリーシステムだから出来たとも言えて、その手法(例えばブロックチェーンを使うだけとか)を他の分野で単に流用しただけでは、真の分散システムの実現は現実的でもなく、まだ難しいだろうと思っています。

以上、前置きでした。

(前置き長過ぎ。実は数年前に移転前の別ブログに書いたものから流用w)

そんな中、昨今、Web3という言葉を目にするようになりました。Web2.0の次、ということですかね。

 Web3に関しては、さまざまな議論があり、また定義も定まっていない状況のようだが、ConsenSysの文脈で登場するWeb3とは「分散型ウェブ(decentralized web)」を意味する。
 ConsenSysは「Web3は『分散化ウェブ』のトレンディーな別名称」であると指摘する。「Web1」が読み込みのみだったのに対し、「Web2」は読み込みと書き込みができるようになった。そして「Web3」は、読み込み、書き込みに加え、所有という要素が加わったものだと説明する。

https://www.sbbit.jp/article/cont1/83902

脱「プラットフォーマー(大手SNSとか)」して、分散型の夢再び、みたいな。実態としては、まだ始まってもいないというところでしょうね。

Web3のような言葉は「バズワード」になりがちで、本来の技術や意義やその思想などからかけ離れた陳腐な宣伝文句として企業に消費されたり、FUDとしてメディアに利用されたりします。

*特に「AI」という言葉。

なので、基本的には自分はあまり使いたくない言葉だったりします。そういうのと一緒にされるのが嫌だからです。

ということで、いままで避けていたのですが、「【翻訳版】Web3についての私の第一印象」というメッセージングアプリSignalの創業者であるMoxie Marlinspikesさんの文章に出会いました。(紹介ありがとう!)

機械翻訳ベースのようで、ちょっと読みにくいですが、なかなか反響も大きいようです。原文はここ

*関係ないですが、本道の暗号学者にとって、「crypto」が「暗号学」でなく「暗号通貨」を指すようになってしまった現在の風潮に対してチクリとグチっぽく言っている所は、クスっとしました。

まずは「web3」の共通認識定義。

web3という言葉はやや曖昧なため、web3が抱く野望を厳密に評価するのは難しいのですが、一般的なテーゼは、web1は分散化され、web2はすべてをプラットフォームに集中させ、そしてweb3が再びすべてを分散化するというものです。web3はweb2の豊かさを与えてくれるとともに、しかし分散化もしてくれるはずです。

https://ishicoro.substack.com/p/web3?s=r

本文中盤はテクニカルな話しも長いので、結論まですっ飛ばしても構わないかも知れません。

現状、NFTも含めて、色々と問題や欠陥があるよ、という指摘です。

*因みに、自分は暗号通貨関連には手をつけて開発もしていますが、NFTなどは一切手も出していません。

結論では二つの点を言っています。

1)インフラを分散させることなく、信頼を分散させることができるシステムを設計することによって、人々が自分自身でサーバーを運営することはないという前提を受け入れるべきでしょう。
(中略)
2)私たちは、ソフトウェアを構築する際の負担を減らすよう努力すべきです。(中略)
私たちとテクノロジーとの関係を変えるには、おそらくソフトウェアをより簡単に作れるようにすることが必要だと思いますが、私はこれまで、その逆が実現するのを見てきました。残念ながら、分散システムは、物事をより複雑に、より難しくすることで、このトレンドを悪化させる傾向があると思います。

https://ishicoro.substack.com/p/web3?s=r

いいこと言うねぇ!

インフラ(ハード)ではなく、トラストを分散させれば良い、と。

クライアント/サーバーが無くならない、というのはよく分かる。自分もマイニングしないしウォレットすら使わず、取引所とのAPIですべて済ませている(APIクライアントのアプリを作った)。

結局、これP2Pに直接参加しているというよりか、P2Pのノードに対してクライアント/サーバーのアクセスしているだけなんだよね。

だから、クライアント/サーバーのアーキテクチャーと、トラストの分散のアーキテクチャーのハイブリット?みたいなのが現実解だと。

それと、無駄に複雑にしてソフトウェア開発の負担を増やすのもオカシイよね。バズワードに乗っかって、何でもかんでもブロックチェーン!とか本末転倒すぎでオカシイと思うし。

DelphiVisual StudioといったRADIDE(統合開発環境)GUI開発を革新させたのと同様に、「RAD for Web3」みたいな何かそういうのが出来て一気に改善されるとイイかも。

まぁ、まだまだ先は長いぞ、ということは言えますね。

不動産業で言えば、以前、「どうせやるなら不動産情報は『P2P共有』でしょ」というのを書いて、分散型の物件情報共有システムという自分の妄想を紹介しています。

因みに、これは未来の話しですが、もし自分が先の将来に向けての新しい「業者間流通システム」を自由にデザインできるとしたら、(ハイブリッド型の)P2Pシステムの情報共有ネットワーク、なんてことを考えますが、自分はもう若くも無いし、お金にもならないのでやる人もいないでしょう。現時点ではどのみち現実的ではありません。50年後とか、もしかしたらどうなっているでしょうか。自分は目にする事はないであろう未来の話しです。もし実現したら、言い出しっぺは私だと、どこかに明記しておいてください。w

不動産情報デジタル標準化の覚書

どうせやるなら不動産情報は「P2P共有」でしょ

「50年後とか」としたのはだいぶ先の話しですが、日本の現状を見ていると、本当にそれぐらいかかるかも知れません。未来のことは分かりませんが。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?