「システム標準化」と「データ&API標準化」の違い

新しく出来たデジタル庁が掲げている政策には、政府と自治体を含む行政基幹業務システムにおける「システム標準化」と、「データ戦略」における「データ(&API)標準化」の二つの標準化が含まれます。

この違いは非常に重要で、「データ(&API)の標準化」は、私が不動産業界にもずっと提唱し論じて来たことであります。一方、「システムの標準化」というのは全く異なる話しでありまして、これは行政における特殊事情が関係していて、同時に、「業務標準化」とも密接に関わってくるものであります。

民間の業界など、一般においては「オープンスタンダード(オープン標準)」と言って、誰がどんなシステムを使っていようが問題無いように相互運用性のあるデータ形式にしましょう、というものが「データの標準化」。

これは単一のシステムを強制するのではなく、多様なシステムを許容し、さらなる自由競争を促進するためです。「不動産情報デジタル技術標準化」〜不動産業界への提言書 でも詳しく書いた話しですね。

一方、「システムの標準化」とは、ある意味、その逆を行く考え方で、統一的なシステムにしましょう、というものです。この考え方が「あり」、なのは、行政という政府から地方自治体までのピラミット構造の(ある意味一体的な「組織」というか)システムの話しだからこそ、なのです。

行政においては、似たようなシステムを個々の自治体が別々に発注して開発して維持していて、それぞれが似たようなシステムでも全く異なる作りになっているのが、色々と不都合で非効率で高コストなわけです。(そのホコロビがパンデミックで露呈したのでデジタル庁が出来た)

だから、基本的なところ(行政基幹業務)は「ガバメントクラウド」でまとめて、色々なことも標準化すれば、各自治体の個別事情はそれぞれで開発・運用出来るようになるだろう、みたいな感じに考えているのだと思われます。

しかし、「システム標準化」というのは「業務標準化」とも関わってくる話しです。これ厄介ですよ。各自治体が今までやってきた業務のやり方を変えて、標準化されたシステムに合わせていかないとならないわけですから。

まぁ、「システム標準化」なんて行政とかの特殊なケースでしか行わないので、具体的なケースとかあまり知らないし、自分にも関係してこないので、あまり興味もないのですが・・・。軌道に乗るまで、色々と問題が噴出するんじゃないかなぁ、と。

普通の民間でいうと、「既成のパッケージシステムの導入」に近い話しになりますね。

と、ここで予めクギを刺しておきたいのですが、不動産業界などで「システムの標準化」をやろうなどとは夢にも考えないでくださいね。いや、ふつう考えないと思うのですが、日本の不動産業界は普通でなく、トンデモナイことを何十年も続けているので。

*因みに、そもそも、「システム標準化」を直訳すると、「Systems standardizationつまり仕組み標準化」みたいな非常にぼんやりとした言葉で、あまり使われないと思います。どちらかというと、日本では和製英語的に広く使われ出しているような。元の英語的語感では単に「Standardization」と言うだけです。日本で使われている「システム標準化」をあえて英語にすると「IT (Infrastructure) Standardization」か・・・あまり聞きませんね。もともと特殊なケースの話しとなります。

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