ウラ話しを含めて一挙公開 〜 不動産業界団体による失敗IT事業の数々
失敗したIT事業の一覧というよりか、日本の不動産業界団体が行ってきたIT事業は、すべて失敗しかしていないんですけどね。
失敗から学ぶためにも、誤りを正すためにも、誰かが記録に残しておくべきでしょう。
ひとくちに不動産業界団体といっても、日本の場合、幾つかあって、最大の「全国宅地建物取引業協会連合会(通称、全宅連)」(全国の宅建業者の約80%)と、その他の「全日本不動産協会(通称、全日)」)、「不動産流通経営協会(通称、FRK)」、「全国住宅産業協会」みたいな感じ。
さらには、全宅連系列の賃貸管理業に限定した「全国賃貸不動産管理業協会(通称、全宅管理)」なんてのも一応あります。
まずこの時点で、はぁ・・・という感じではあります。なんでバラバラで一つにまとまっていないのか、と。業界としてまとまっていなければ何をするにも、動きにくいでしょうに。(まぁ選択の自由があることは良いことですが)
しかも、さらに悪いことに、全宅連は、名前の示す通り、日本全国の都道府県に個別に存在する下部組織の「宅建協会」という業界団体の「連合会」に過ぎません。
なので、基本、ITなどの事業を行う「システム委員会」「情報流通委員会」などは、各都道府県の宅建協会が個別バラバラに行ってたりします。
しかも、さらにさらに悪い事に、東京都の宅建協会は「東京都宅建協同組合」とかいう独自の事業協同組合を作って、情報化や流通近代化といったIT事業はそっちの組織に委託してやる、という体制になっています。
この状況、多分、不動産屋でも、知らない人だらけだと思います。私自身も、この異様なバラバラ状態に気がつくのに数年かかりました。こんなん、普通は知らんよって感じです。ま、興味も無いでしょうが。
普通に考えて、情報化やらIT化やら流通近代化に都道府県の境は無関係であって、全国組織の全宅連で人的・予算的なリソースを集約して行うべきでしょう。
インターネットに都道府県の区別はないのですよ。
都道府県ごとの宅建協会がそれぞれバラバラにIT事業をやるなんて、非効率な上に、「日本の不動産業界を」といった広い視点を持った議論や事業が出来るわけありません。東京都の宅建協会なら東京都の会員の為だけの近視眼的なIT事業、ということになるのです。
もうですね、この時点で業界団体がやることはすべて失敗に終わることが見えていますw
この状況、オカシイ、と声をあげる不動産屋はいないのでしょうかね。
因みに、私は東京都の人間で、宅建協会派だったので、ここで、不動産業界団体と言えば「全宅連」または「東京都の宅建協会」のことを指して言っていたりします。
で、私がインターネットを使い始めたのが1990年代の後半で、プログラミングを始めたのが1999年頃。不動産業と関わり始めたのが2002年頃からで、実際に不動産業界に入ったのが2010年前後。
なので、2002年頃からの業界団体のIT化の動きを外と中から見てきた、という感じです。つまり、それ以前の事は知らないですし、宅建協会以外の事も知らないので、触れません。
また、レインズ、というか指定流通機構は業界が主体となってやっているというよりか、業法で「指定」されてやっていることなので、別の所でまとめて書いていますし、ここでは触れません。
以上前置き(前置き長すぎ)。
まずは、2000年代前半の頃の話し。
因みにですが、ちょうどこの頃ですかね、私が「不動産物件情報の標準化」を業界に提案していたのは。2002年からだから、今から20年前・・・。
当時、広告用の物件検索サイト「ハトマークネット」という物件検索サイトがありました。
東京都・埼玉県・千葉県の宅建協会で、ってのが猛烈に中途半端ですよねぇ〜。
なんで、全宅連で全国版をやらんのか、と思うわけですが、実はあるんですよね、別途。「ハトマークサイト」っていう全宅連がやる全国版の物件検索サイトが。
この時点でアホでしょう。誰がどう考えても、アホ。
なんで同じ全宅連の組織内で、同じ様な物件検索サイトを2つも運営しているんだ、という。意味ないし無駄でしょw
ほぼ誰も使ってないし。アホすぎて、アホとしか言えません。
これについては、だいぶ前に、詳しく「『ハトさん』、多すぎ問題」で書いていますので、この具体的なアホさについては、そちらをご覧ください。
しかもですね、このハトマークの物件検索サイト、公式には業界団体が運営している、ということになっているのですが、実はアットホームがシステムを運営しているのですよ。
どうして分かったかというと、たまたまハトマークの管理画面へのログイン画面を観た時に、「アレ、なんか変だなぁ」と思って、ページのソース(HTMLコード)をみてみたんです。そしたら、<frame>タグ(古っ)を使って、別サイトのページが埋め込まれていることが分かったわけです。
つまり、業界団体のアドレス(ドメイン)の管理画面ページを一皮剥くと、埋め込まれていたのは、実はアットホームのサイト上のシステムそのものだった、という。
http://hatomarksite.athome.jp/
業界団体である全宅連が、アットホームなどとは別に、独自に物件検索サイトをやっています、というのが特徴のはずが、実はアットホームのシステムに乗っかっているだけでした、ってこれ詐欺でしょw。
やる意味すらないし、盛大なるお金の無駄。
なんてったって、アットホームという物件検索サイトとして競合関係にあたる会社にやらせたって、競合のサイトを良くしようする動機なんかゼロであって、積極的にサボタージュするとまでは言わないけれど、良くしようなんてミリほども思わないでしょうよ。
ただの「良い金づる」と思われているだけ。
なんでこんな当たり前のことがわからないんだろう。当時は利点か何かやむを得ない事情でもあったのかもしれませんが、いまだに、ですよ。
本当にアホでしょ。アホ以外に言いようがないっす。
そんななか、「不動産統合サイト」なるものが業界で大きな話題になっていました。2003年に出来た「不動産ジャパン」なる物件検索サイトですね。
これは、「国交省が主導した『不動産ジャパン』が大失敗をした理由」で詳しく書きましたので省略しますが、業界団体が、というよりか、国交省の肝いりで立ち上がって、国交省の天下り団体である「不動産流通近代化センター(現「不動産流通推進センター」)」が運営する物件検索サイトで、全宅連をはじめとして、業界団体はその運営に協力するという形で物件情報を提供しています。
もうね、またまた誰も使っていない似たようなサイトを2つも3つも・・・。
アホとかでは言い足りないぐらいアホなわけで。盛大なるお金の無駄使いであります。
2000年代半ばに入りますと、東京都の宅建協会の「東京都宅建協同組合」が色々と動いているのが耳に入ります。
なんと、東京都宅建協同組合が主体となって「不動産業務ソフト」や「間取り図ソフト」を会員向けに提供するのだと。
というのも、どうも、もともと東京都宅建協会(協同組合)が委託?して開発した?だかの会員向けに提供していた、不動産業務ソフト・賃貸業務管理ソフトが既に存在していたらしく(もう20年以上前の話しなのでソフトの名前、忘れちゃいました)、それが色々あって(ITゼネコンから機能追加やアップデートに膨大な費用をぼったくられて)いい加減もうダメだから、あらたなものを作る、だか探す、ということだったように記憶しています。
この時点で、もうね、アホでしょw、なわけです。
そもそも、なぜに既に民間で様々な所が開発して市販されている不動産の業務支援ソフトウェアや間取り図ソフトをあえて不動産業界団体がわざわざ独自に作って、しかもそれを会員に無理やり押し付けるのよ、と。
な〜んにも分かっていない人達です。はい。
不動産業界の団体の役員(不動産会社の社長)達に、ソフトウェア開発の何が分かるというのでしょう。会員はそれぞれ、自社に合った不動産業務ソフトを使っているというのに、むりやり「協会公式」のソフトウェア、なんて強制しようとするのはありえない話しであります。しかも、会員の会費を使って・・・。
アホすぎて、アホとしか言えません。盛大なるお金の無駄使い。
しかもですよ、皆んなが皆んな同じソフトウェアを使うよう強制されるような事になったら、独占が発生して、ソフトウェア開発における健全なる競争が無くなり、高価格化、進化の停滞・-・・、問題点を挙げたら切りがない。
そもそも、営利企業と違って誰も責任を取らずに給料が貰える業界団体では「良いもの」なんて作れません。(ITゼネコンのようなところに丸投げになるだけなんだし)
ソフトウェア開発舐めすぎ。
結局の所、出てきたのは、既存の不動産業務ソフトを、東京都宅建協会(協同組合)推奨だか斡旋だかの会員向け特別価格で使えるとかなんとか、そんなような代物だったと思います。会員が斡旋価格で安く使えるっても、結局、会費で補填しているのだから、何の意味も無いどころか、むしろ使わない会員にとってみれば、不公平な話しです。
「東京都宅建協同組合」の役員の人達(不動産会社の社長)は、このどーでもいい件で、あーでもないこーでもないと、ず〜と何年もやっていました。
もうね・・・。Orz
結局、この話しは対して広がらずに、尻すぼみになって行ったかのように見えました。
2010年に近づく頃になると、私は不動産業界に入り、本格的に業界の中から直接色々と見聞きするようになります。
またまた、東京都の宅建協会(協同組合)が会員向けにあらたな業務システムを開発する、というのです。
で、サービス開始前に事前説明会と研修会がある、ということで、こりゃ面白そうだ、と物見遊山でホイホイ出席してみたわけです。
ここで、例の「ずらっと並んでiPadをこれ見よがしに使ってみせてドヤ顔をするおじさん社長たち」と出会ってしまうわけです。
東京都宅建協同組合の「新サイト構築委員会」の面々ですね。
その新サイト構築委員会の人が挨拶で曰く、「以前、いわゆるITゼネコン(SIerつまりNTTデータや日立なんとかとか)にソフトウェアの開発を丸投げして億単位のお金を無駄にして痛い目にあった。しかし、今の時代はクラウドである!クラウドなら安いことが分かった。クラウドのセールスフォースを採用して不動産の業務支援(物件管理)システムを会員向けに提供することに決まった」
自分はポッカーン、であります。
クラウドはクラウドだけど、セールスフォースはCRM(Customer Relationship Management)、つまり「顧客管理システム」をクラウドで提供する企業だぞ???と。一体、何の話をしているのかい?・・・と。
その後に(名前は忘れちゃったけど、あまり有名でもない)開発を請け負ったというテック系の会社の人が説明が入って分かった事は、「セールスフォースのカスタマイズ出来る機能を利用して、不動産業向けにカスタマイズした」との事。「だから自前でサーバーを運用することも無く、安く提案できた」、と。
ありえねー、と。
自分は、既に物件検索システムとかも自分で開発していましたし、賃貸管理システムや不動産業務システムと、顧客管理は、天と地ほども異なるものだということを身にしみて知っていたわけです。中途半端な「カスタマイズ」なんかで対応できる代物ではありません。
そんなんで使いやすい業務専用システムになるわけが無いのです。業務を知らなすぎ、実務を舐めすぎ。
なので、速攻で、「セールスフォースってのは顧客管理システムであって、協同組合がやろうとしているあれマズイよ!」と、業界のITが少しでもわかりそうな支部役員には話しをしたのですが、みんな「へぇーそうなんだ」で終わり。まぁ普通、セールスフォースなんて知らないよねぇ・・・。
後日、研修会が開かれる、というので、暗澹たる気持ちで出席してみて、デモンストレーションとシステムを実際に触れる機会があったのですが、案の定、最悪の予想が的中しまして・・・。
セールスフォースのシステムは顧客管理システムですから、「リード(見込み客)」とか「顧客」みたいな項目があるんですよ、「そこに物件情報を登録して〜」、とか普通に言われて、呆然、脱力、絶望感、の嵐に襲われるわけですw
ひでぇwwwwww
これ以上アホな話しは聞いたことが無いでしょw
さすがにこれポシャるんじゃないの、と思っていたのですが・・・
2011年12月、クラウドの不動産業務支援(物件管理)システムと、そこで登録した物件情報を利用した、「新ハトマークネット」という位置づけの一般向けの物件検索サイト公開がアナウンス。
その名も、「ハトマーク東京不動産(通称、ハトさん)」
もうね、業界団体の一般向けの不動産検索サイトは幾つも要らんのよ、というアホな話しであります。
しかも、この変態クラウド不動産業務支援(物件管理)システムは、会員でも別途有料。
こんなん、だれが使うのか、と。
このサービスがオープンして以降、東京都の宅建協会(協同組合)から、加入の勧誘のチラシやグッズとか広報がしつこく来るわけです。しかも、各支部を通して、「研修会」を行え、とかいうお達しがあって、研修会を実施して、加入を募れば、支部に予算を配ってやる、みたいな、ようはお金バラマキ状態。
アホ過ぎ。盛大なるお金の無駄。
後日、支部の会員で「ハトさん」の業務システムの利用申込みをした会員の数を聞くと、「1社」と、聞いて、苦笑するほかありませんでした。
というか、あんなシステムを分けも分からず、協会が提供する業務システムだからと、安易に導入してしまった街の小さな夫婦経営の不動産会社は一体どんな地獄を見ていることかと、同情する他なかったであります。
その後も、何度も何度も「ハトさん」業務システムの利用方法の研修会、みたいな話しが何度もありましたが、研修会をしなければならないほど、どんだけ使いにくいものなんだよ、と。
本来、使いやすいシステムなら、宣伝すらしなくても口コミで利用者がバンバン増えるし、研修会なんかで教わらなくとも使えるわけです。
でも東京都の宅建協会は、「使いにくいシステムなのだ」、という事すら分からず、「利用者が使い方を分からないのが問題」だ、「研修会で教えろ」「もっと広告」「もっと勧誘しろ」、みたいな。なんでこんな思考になっちゃうんだろう。
どんだけアホなのかと。
これ、開発費自体が数千万円で済んだとしても、「研修会」名目と広報、検索サイトの広告宣伝費など全部を足すと、なんだかんだで億円は超えていてもおかしくないでしょうね。なんなら数億円。それプラス運用費。
盛大なるお金の無駄。
結局、東京都の宅建協会の会員約1万3,500社のうち、利用していたのは約650社のみ、とか。
で、最終的に、2016年になってセールスフォースとの利用契約解除。これ、セールスフォースが悪いんじゃありません、CRM(顧客管理システム)を無理やり物件管理システムとして使おうとした東京都宅建協会(協同組合)が悪いのです。
つまり、作ったシステムと費用はすべてドブに捨てたようなもの。
100%予想していましたが、壮大なるお金と労力の無駄遣いであります。
利用していた僅かながらの数の会社は、システムを乗り換えなければならない、という大変な不便を被った。
現在は、あらたに既存の某不動産業務支援システムと提携して、そっちのシステムに乗り換えて、依然として「ハトさん」の会員向けに提供する業務システムと一般向けの検索サイトとしてはそのまま継続しています。
もう止めろ、って。
これだから不動産業界はテック企業とか他業界から舐められるのですよ。
誰か止める人間はおらんのかね、と。
不動産業界の(とくに団体の役員やっている)人達に聞きたいのだけれども、そもそも世の中に商品として沢山市販されている「不動産業務支援システム」という「プロダクト(製品)」を、わざわざ業界団体で作って会員向けに利用させようという意味・意義は本当にあるの?各社それぞれが、自社にあったシステムを使うのが理想じゃないの?と。
特定の一社が作ったプロプライエタリなシステムを採用して全員に使わせようなんて、ソフトウェアの歴史上、何度もバトルが繰り広げられてきた誰もが知っている悪の道ですよ?業界団体のやることじゃありません。
業界団体として行うべきなのは、特定の業務ソフトウェアに肩入れするのではなく、業務支援システムの市場で、お互いの競争を促進させることによって、既存のソフトウェアをより良いものにさせ、価格を抑え、様々なあらたな便利な業務支援システムやサービスが生まれてくるよう、促すことです。
具体的に業界団体として行うべきなのは、その為のグランドデザインと標準の策定、つまり「基盤整備(物理的なものではない)」です。業界として「仕様」を公開するのです。「このような規格で作りなさい」と。業界として「標準」を定めれば、ソフトウェア業界は業務システムを作りやすくなり、全体的な底上げにも繋がります。
インターネットを使うソフトウェアの世界では、すべてが「標準化」という作業を経てきたから今があるのですよ。
日本の不動産業界がとっくに20年前の時点でやっておくべきだったのは、「不動産情報の標準化」であります。
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