医療情報の標準化は2025年度を目途に、一方の不動産業界は・・・

日本の医療業界では、電子カルテの導入が進められてはや20年以上が経つところであります。(普及率で言えば、特にクリニック系の中小ではまだまだとか・・)

ところが、やっぱり医療情報(電子カルテ)のデータフォーマットが標準化されていないために、せっかくの電子カルテが他の医療機関と連携出来ず、それじゃ意味ねぇじゃん、という事になっているそうで。

このようにベンダーがそれぞれにソフトを独自開発し、それぞれ独自の進化を遂げてしまったため、異なるベンダーの電子カルテ間ではデータのやりとりや連携が非常に困難で、施設間連携や地域連携の妨げになっているほか、医療機関としては、いったんあるベンダーの電子カルテを導入したあとに、他社の電子カルテに買い替えようと考えても、カルテデータの移行ができず、ベンダーによる顧客の囲い込み、買い替え阻害になっている等の問題が指摘されるようになりました。

医療事故情報センター
2019/11/01
電子カルテ標準化の方向へ

なので、やっとこさ2025年度を目途に電子カルテのデータフォーマット規格を標準化しようという事になった模様。

いまさら気が付いたのかよっ!

と、心の中で叫びたくなる今日この頃です。

「医療 DX 推進に資する電子カルテ規格の標準化」

かかりつけ医が PHR と EHR の情報を繋ぐために必要となるのが、病院や診療所の電子カルテである。現在国が進めているデータヘルス集中改革プランの論点としても「電子カルテ情報及び交換方式等の標準化」が取り上げられているが、こうした相互連携を実現していくためには、電子カルテの規格の標準化と導入の推進は避けて通ることができない
(中略)
これらを達成するためにも、電子カルテ規格の標準化は、極めて重要となる。多くの医療機関が、標準規格に準拠した良質な医療情報を、安心・安全に提供することができる環境整備が必要となるからである。

まずは、情報交換のための標準規格を整備し、メーカーに確実に実装させることで、相互運用性に関する問題解決を図る必要がある


2021 年 6 月 9 日
公益社団法人 日本医師会
「医療 DX 推進に資する電子カルテ規格の標準化」(PDF)

いまさら気が付いたのかよっ!(二度目)

と言っても、もともと民間でも動きはあったけれども進まず、結局は政府が「経済財政運営と改革の基本方針2019~『令和』新時代:『Society 5.0』への挑戦~」で「電子カルテ情報の標準化」を打ち出して、政府主導でやっていくみたいだけれども・・。まぁ医療だし・・。

厚生労働省は22日、「医療デジタルトランスフォーメーション(DX)令和ビジョン2030厚労省推進チーム」の初会合を開き、電子カルテ情報の標準化や診療報酬改定に要する作業のDX等に関する取り組みを具体的に検討する方針を決めた。検討結果は政府の医療DX推進本部に随時報告する。

自民党の政務調査会は5月、▽全国医療情報プラットフォームの創設▽電子カルテ情報の標準化▽診療報酬改定DX――の3本柱に同時並行で取り組むことで、医療の質向上、創薬や新規医療機器の開発(2次利用)などを実現するとした医療DX令和ビジョン2030を提言。

2022年09月29日
薬事日報
電子カルテ標準化を検討‐医療DXビジョンで初会合

しかしホントに日本って、「標準(規格)化」というのに向いてない国柄なんだなぁ・・・。やっぱり、以前書いたような「標準化が進まない日本〜理由は『自分が損をしてでも人の足を引っ張ろうとする日本人』?」が理由なのか、それとも、「日本は上から下までITオンチ」、という事なのだろうか・・・知らんですけれども。

医療情報が標準化されると何が良いかっていうと、ざっくりと以下のような点が挙げられます。

・診療情報の一貫した利用が可能→重複入力、誤記の機会を削減し、患者確認、禁忌チェックなどを統合的に実施可能に
・複数の現場で、複数の人々の連携を可能に→チーム医療。どこでも、いつでも情報を参照可能に
・情報の比較、継続的利用を可能に→トレンド分析、注意・警告の発令、証拠に基づく医療、医学知識の抽出などデータの自動収集を可能にする←医療機器のインタフェースの標準化
・物の流れとの同期→医薬品トレースなど
・その他

匿名化され、構造化された診療情報から新しい医療知識の創造へ(組織化された診療情報データベースは医療知識の宝庫)。これができるためには診療情報の標準化が前提。

なぜ標準化は必要か
保健医療福祉情報システム工業会
https://www.ihe-j.org/file2/n16/WS10_05_WhyStandard_shinoda.pdf

英語圏じゃ、すでに「HL7 FHIR standard」という民間の標準化団体で標準化されて公式に広く採用されている医療情報の標準規格があってですね・・・、日本の現状と比較するのも哀しくなるだけだから、ご興味がある方は調べてください。

遅まきながらも標準化の必要性に気が付いた医療業界はまだしも、日本の不動産業界では、国交省も含めて、どこにおいても「不動産情報の標準規格化」なんて話題にもなりやしない。自分なんて20年前から言ってるのに・・・。

医療業界と同様に、不動産データの標準化がなければ「不動産DX」なんて始まりもしないのですよ。

日本の不動産業界(いわゆる「不動産テック」業界含めて)の現状(惨状)は、哀しくなるなんてレベルじゃなくて、もうですね・・・


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