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なぜ、僕は暖かい家づくりにこだわるのか? 〜その2〜

◎前回のあらすじ

寒がりな僕は蓄熱暖房機メーカーで働きます。二度の地震により蓄熱暖房機の影の部分やオール電化偏重の市場にモヤモヤしつつ、設備設計事務所に転職し、新たなステージへと踏み出します。


◎転職と鍛錬の日々

僕自身は東日本大震災の前にご縁があり、東北地方のとある設備設計事務所に転職をします。そこは住宅が専門の暖房・換気システムに特化した設備設計事務所でした。

それまでの蓄熱暖房器だけではなく、温水循環式のパネルヒーターや床暖房などが取り扱いの中心です。

換気システムも普通の三種換気ではない、デマンド換気や第一種熱交換換気システムなど通常の設備業社が扱わないような尖ったラインナップで差別化を図り、高気密高断熱住宅に最適な高効率設備機器が提案の中核をなしていました。

ここでは暖房システムの提案に先立って、必ず住宅の「熱計算」をします。その住宅の断熱性を数値化し、逃げる熱と地域の条件によってどのくらいの暖房負荷があるかを必ず計算した上で、暖房・換気システムの提案をするというものです。

この考え方はもともと北海道の寒地研究所(現 北方建築総合研究所 北総研)に端を発した北国の住宅断熱や暖房をどう最適化するかをテーマにした研究結果に基づくものです。

そしてこの研究がベースとなり形作られた北海道オリジナルの資格である(一社)北海道建築技術協会によるBIS(Building Insulation Specialist 断熱施工技術者)資格を取得しました。

ここでの日々の業務は以下の通りです。

①日々、工務店さんや設計事務所さんを営業訪問して関係構築、住宅図面をお預かりする。
②断熱仕様と厚さから熱損失量を計算する「熱計算」今で言う「外皮計算」をする。
③熱計算に基づいた暖房負荷を計算し、暖房・換気計画に落とし込む。
④システム構築をし、見積もりを作成。
⑤工務店さん、設計事務所さんに提案。
⑥受注が決まったら、暖房・換気部材の手配、工事の段取りをする。
⑦現場打ち合わせや立会いを含む現場監理。
⑧完成お引き渡し時のお客様への取扱説明。
⑨入居後のメンテナンス対応。

図面の段階からアフターメンテナンスまで全てに関わらせていただき、とても勉強になりました。また、自由に行動させてもらえており、仕事の幅も広げることができましたし、(自然エネルギー利用暖房給湯システムへ挑戦)

また居間につながる大事な人脈も広がりました。間違いなく今の僕の血肉となった貴重な時間でした。この会社には感謝しています。


◎Dotプロジェクト

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住宅の断熱技術を学ぼうとした時、北海道はもちろんヨーロッパの技術に目を向けない訳にはいきません。ドイツ・スイス中心の寒冷地域における断熱技術はやはり進んでいてその技術を学ぼうと、何度か欧州研修視察に行かせていただきました。

これが後に北東北における断熱技術勉強会であるDotプロジェクトにつながっていきます。Dotプロジェクトはドイツ・スイスといった欧州の断熱技術を学び日本にアレンジし広くその普及を図るという主旨で、岩手県・東北電力・岩手県立大学・断熱材メーカーやサッシメーカー建材商社などが参画して盛岡で発足しました。

主旨に賛同する北東北を中心にした工務店・設計事務所が定期的に勉強会を開催、プロジェクトオリジナルの熱計算ソフトや認定制度、認定プレートを発行したり、職人さんを集め、断熱施工技術研修会を開催したり、などの活動をしていました。

現在残念ながらその活動を終えていますが、僕はその最終期の事務局を務め中心メンバーとして関わりを持ちました。

欧州や北海道の断熱技術は素晴らしいです。ただし、北東北や南東北では気候・湿度・予算規模など様々な部分で違いがあり、そのままコピペという訳にはいきません。

優れた技術をその土地に翻訳・最適化していくことが必要不可欠であると常々議論になりました。

それは単純に断熱レベルを落とすということとはまた話が別で・・・という具合にどんどん話も難しくなっていき、例えばこれから高気密高断熱に取り組んでみようかなという作り手さんにとってDotプロジェクトはどこかハードルが高く、とっつきづらい存在になっていたのかもしれません。

当時のDotプロジェクトが目指していたのはQ値(熱損失係数)1.0W/㎡kを切る性能の住宅です。現在のUA値換算でだいたい0.3W/㎡k前後でHEAT20のG2以上の性能です。

それは外壁の付加断熱はもちろん、屋根や窓、換気システムまで全ての要素で高いレベルのものを要求され、施工技術についても相応のレベルを必要とするものです。

必然、ある程度のノウハウや試行錯誤があって初めてできるものであり、入会したての会員さんが戸惑う場面も多々見られました。

そんなこんなでDotプロジェクトはいつしか周りからは「先鋭的な尖った集団」と言われることも出てきました。

〜その3へ続く〜

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