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イノマーロックフェスティバルと僕自身のこと


ちょっと時間が空いてしまったけど、先日イノマーロックフェスティバルに行ってきました。

ちょっと感想というか、色々自分的に思うところもあって、その備忘録も兼ねて。

僕とイノマーさんの話に関しては、以前こちらで書いたとおり。

フェスの当日のラインナップはこんな感じでした。

まぁ僕ら世代にはドンズバな顔ぶれの中、Hump Backのような比較的若いバンドもいたりして。
でも全員がイノマーさんに愛され、イノマーさんを愛したバンドマンたちばかり。
集まったオーディエンスも、直接的であれ間接的であれイノマーさんに影響を受けた人たち(大半は歳を取ったかつてのパンクキッズ)。

銀杏BOYZも氣志團もガガガSPもサンボマスターも、いずれの重鎮達も素晴らしかった(ピーズだけ子供とお昼ごはんで見れなかった、ハルさんごめんなさい)。
初めて見たHump Backも「イノマーが最後に愛したロックバンド」にふさわしく、イノマーさんの遺伝子を確実に受け継いでいるMCがめちゃくちゃ素晴らしくて思わず涙してしまったし、

フェスのダブルヘッダーという強行スケジュールで参加した四星球は「日本一泣けるコミックバンド」の称号にふさわしく、これまたボロボロ泣かされたし、

※どうでもいいけど、この

知らぬ間に始まった人生が
知らぬ間に終わっていく

https://www.uta-net.com/song/216171/

っていう歌詞、最高にロックだと思う

そんなこんなで、オナマシの出番な訳です。
詳細はこの辺のニュースでも見てほしい。

まぁ平たくいうと、大トリででてきたオナマシ(イノマーさん不在でギターのオノチンさん&ドラムのガンガンさんの二人)なんだけど、オノチンさんが泥酔の極みの登場でして。
プリンセス・プリンセスの「19th Growing Up」というお約束のSEが流れてもなかなか登場せず、ようやく登場したかと思うと呂律が回っておらずに同じことを繰り返し、まともに立てないしギターも弾けない状態。正直いって、最初シャブ食ってんのかなと思ったくらいの酩酊具合。
結局その後も仲間たちに支えられながら、ほぼほぼまともな演奏はできない状態のまま大団円を迎えた。

その時の僕の正直な気持ちを吐露しておく。

あの瞬間何を僕が最初に思ったかって言うと、
「なんでこんな状態でステージに出てくるんだ」
「お金を払って見に来てるお客さんに申し訳ないじゃないか」
という感情が先に出てきたんだ。
(アラバキで泥酔した奥田民生にブチギレた和田唱みたいなものだと思っていただければ)

少し時間が経ったらそうなった理由はなんとなくはわかってきた。
あれほどナイーブだからこそ破天荒なオノチンさんが、イノマーさん不在という現実に初めて向き合わざるを得なくなった恐怖。
そういう心境だからこそ、朝から酒を煽って本番泥酔状態で迎えざるをえなかった不安。
イノマー不在だからこそしんみりでなくバカバカしく終わらなければいけない重圧。

そのどれもが正しいのか間違いなのか、僕には分からない。
ただ少なくとも、僕はあの光景を目の当たりにした瞬間、そうしたオノチンさんの心境を慮ったり、バカバカしさを笑う余裕がなかった。
ただただ、先に書いたような思いが先行してきた。

なぜあの瞬間僕がそう感じたか、今ならその理由がわかる。
おそらく僕自身が音楽業界に身をおくようになり、いつしか純然たるリスナーとして、ライブの空間や音を純粋に楽しむことができなくなったのだ。
ステージの上で起きていることだけでなく、その裏側や背景を気にするようになってしまったのだ。
純粋なバンド好きとして音楽を楽しみ、その好きな業界に飛び込んだけど、いつの間にか当時の気持ちは薄れてしまってきたのかもしれない。
つまり分かりやすく言えば、「つまんない大人」になっちまったってことだ。

ただそれも悪いことではない。この業界にいれば、多かれ少なかれほとんどの人はその道を歩む。
極稀にそういう純粋な心を一切失わない「天才」と呼ばれる人達もいるが、残念ながら凡人の僕は天才ではない。
ただ、それを自覚していることは、それはそれで重要なことだ。
あの頃の純粋な気持ちは少しだけ減っているかもしれないけど、それでも僕は今でもこういう音楽を愛しているのだから。
中学生の頃のような滾る性欲はなくなったけど、それでも40過ぎてもエロへの情熱は失っていないというようなニュアンスだと思っていただけたらありがたい。

断っておくと、僕はオナマシのステージがダメだったとか言っているわけではない。むしろ全く逆の感想だ。
僕の心の中に一瞬そういう邪な感情が走ったのは事実だけど、オノチンさんの振る舞いやそれを支える仲間たちの姿は、紛れもなく最高のステージだった。
出演されたバンドのパフォーマンスはいずれも最高だったし、このイベントを組立てた関係者の皆さんも本当に素晴らしいと思う。
毎年は難しいかもしれないけど、また定期的にこういうイベントがあったらと願う。
関わった皆さん、本当に最高のイベントでした。ありがとうございました。

あの頃熱狂していた僕らも、こうして少しずつ大人になっていく。
あの頃と全く同じ心境でいることは難しいけれど、それでもあの頃愛した音楽とミュージシャンに囲まれていて幸せだと思う。
人が歳を取ることは悲しい現実もあるけれど、それでも悪いことばかりでもない。


イノマーさん、僕の子どもたちも大きくなりましたよ。


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