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【読んだ本】 サービスデザインの教科書/武山政直

この本を一言で言うと...

ユーザーと価値を共創する「サービスデザイン」の考え方とプロセスが学べる本

読むべき人は...

① 新規事業、新規サービスを企画する人

② プロダクトやサービスの顧客体験の企画に携わる人

読んで学んだことは...

① サービスデザインは「価値をユーザーと一緒に生み出すこと(価値共創)」である。

・サービスデザインは、「ユーザーが財を使用することによって生まれる好ましい体験を、ユーザーと一緒に創り出すこと(価値共創)」である。

・これに対して、製品を中心にしたマーケティングでは、「企業が価値(製品)を生み出し、それを消費者に与える(価値提供)」にとどまる。

② サービスの使用価値はユーザーだけでなく、様々な人・組織・道具・環境によって共創されている。

・あるサービスを利用してユーザーが満足できる結果が得られるかどうかは、サービスのプロバイダーとユーザーに加えて、他社の存在や多様な環境の要因に依存する。つまり、サービスの使用価値は様々な人・組織・道具・環境によって共創されている。

・例えば、レストランを利用する際、誰もが美味しい食事を食べて良い気分になりたいと願う。ではその願いが実際誰によって何によって叶えられるかと言えば、料理や食器、接客が挙げられる。また、客自身も適切に料理を頼み、店員と上手にコミュニケーションをとる。さらに、食事を共にする家族や恋人の存在も大きい。多くの客が生み出す店の雰囲気や窓からの景色も影響する。これら全てによって、サービスは共創されている。

③ 価値共創はユーザーが欲しいものではなく「達成したいこと」から考え、ユーザーと一緒にその目標を達成する。

・例えば、価値提供の発想を持つスーパーマーケットは、顧客が買ってくれそうな食料品を揃えて店頭に並べる。

・一方で、価値共創の発想を持つと、例えば「健康な食生活を送る」ことを目標に掲げて、その達成のために顧客と協力して何ができるかを考える。そして。健康的な食料品の選定から、レシピの提案、食材のデリバリーなどを提供する。ただし、その目標の達成には、何と言っても、顧客自身が自分の食生活に関心を持ち、健康的な食生活を保つように努力することが不可欠。

④ サービスデザインのプロセスは「発見」「定義」「展開」「実現」で構成される。

・発見 … 問題状況の理解と解決策を検討する範囲の設定。主に市場調査やフィールドワークを実施。人間中心デザインのメンタリティを用いる。
・定義 … ビジョンとデザイン戦略の設定。狙いやプロジェクト計画などを「デザインブリーフ」にまとめる。
・展開 … 問題を解決するためのコンセプトを展開し、プロトタイピングと改良を繰り返す。ペルソナやストーリーボードなどを用いる。
・実現 … テストを通じてデザインのコンセプトを確定し、実装を経て市場に投入する。

読んで思ったことは...

① ユーザーは自らで課題を解決する主体的で能動的な存在である

サービスデザインの考え方では、価値は「提供」するものではなく「共創」するもの。ユーザーの課題はプロバイダーが解決するものではないし、ユーザーは受身の存在ではない、という考え方をしている。かなりの頻度で「価値の提供」とか「ソリューションの提供」などの言葉を使用している身としては反省の一言。

たしかに「ユーザーは主体的で能動的な人間である」という事実を無視してWebサービスを作る時がある。こちらの意図通りに動いたり、従順に我慢してくれる存在だと都合よく解釈したり。こちらのソリューションを受けてバッチリ課題が解決したりする、最高の存在に仕立て上げる時がある。

それはプロバイダー側の傲慢であり怠慢であって、ユーザーは「達成したいことを一緒に達成するパートナー」であるという位置付けにして考えていきたい。それにはこれまで以上にユーザーへの「共感」が求められる。

② Webサービスこそ、サービスデザインで差別化できる領域が大きそう。

この本の中で紹介されている事例は、物理的な製品に付随した価値の共創や、対面の接客に付随した価値の共創がほとんどで、Webサービスの事例はほぼなかった。たしかに、PCやスマホの画面越しだけで完結できるWebサービスは、電話によるカスタマーサポートや、イベント、対面などのマルチなチャネルを利用した価値共創にそれほど積極的ではないはず。でも、これからは人的リソースを割かざるを得ないCSやイベントだけでなく、AIやVR、位置情報やヘルスケア情報などのテクノロジーも組み合わせた形でユーザーとの接点を増やし、多面的にユーザーとの価値共創を生み出す機会が増えそう。

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