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Secondary and Primary Assist-locatinos in UCL

Douglas Jakobten

ツイッターではCoachdogge(@coachdogge) の名で活躍。スウェーデンストックホルム在住のサッカー指導者。19歳の若さでUEFA-Aライセンスを取得し、現在スウェーデンの大学でエリート指導者養成プログラムに参加中。

原文はこちら

訳 とーれす (@torres9_vega)

Introduction -はじめに

スウェーデンはストックホルムにあるスポーツ科学・健康科学を学ぶ大学(GIH)のスポーツコーチング科でのトレーニング理論および方法論の授業での研究をここに示す。この研究ではUCLでの第二アシストの場所、そして第一アシストとの相関関係について調査した。

1 Background -調査の背景

長年にわたり、フットボールの戦術はピッチ上で絶え間なく進化している。同じように、フットボールの統計学もまた急速な進化を見せている。さまざまな統計学が広い範囲で行われ、事実、第一線の試合でもそれに基づいたプレーが見られる。AndersonとSarryの著書 "The Number Game" に彼らは「数字は(フットボールの)それまでの慣習や当たり前を覆す」と記した。

UCLで戦うようなクラブが詳細な統計を用いれば、従来ピッチで何気なく起こっていたことも、より客観的に分析することができ、チームや選手たちのクオリティーまでもはっきりわかってしまうのだ。また、選手のクオリティーを測るため、プレーの数々を数値化するが、その数値はフットボールの様々な分野に応用することができる。

論文、"Actions Speak Louder Than Goals :Valuing Player Actions in Soccer"が選手のオンザボールの動きを評価するために提唱した"HATTLICS-OTB (Honest Attribution of Credit in Soccer for On-The-Ball Actions)アルゴリズム"で出されたデータは、選手のゴールへの関わりを示し、選手の質を測るための客観的な分析を提供している。これにより、指導者たちが客観的なデータからプレイヤーの質を明らかにすることができ、これは従来彼らが選手たちにピッチ上での判断を任せていたのとは対照的なものである。

また、チームパフォーマンスを測るデータを出すものもあり、一つのパスとそれによる全体への効果など、アクション一つ一つのはたらきを明確にしている。1997年"Measuring the effectiveness of playing strategies at soccer"ではパスのはたらきについての研究を、2017年の"Which pass is better? Novel approaches to assess passing effectiveness in elite soccer"では「勝者はXYのパスをし、敗者はYXのパスをしていてプレーに連携を取ることができてない」と述べられた。

そして2013年の"Differences in Goal Scoring and Passing Sequence between winning and losing team in UEFA-EURO Championship 2012"では得点が生まれた場所がペナルティーエリアの中か外かの割合を出し、特定のアクションとその場所を示すものとなった。

今回の研究では、2017/18シーズンのUCLでの具体的な2つのパス、Primary Assist(以下第一アシスト)とSecondary Assist(以下第二アシスト)、そしてその相関関係について調査していく。第一アシストはゴールに直接繋がったパスとして、第二アシストは第一アシストに繋がったパスとして定義する。それらのパスが出される具体的な場所と、関係性を知っておくことは、サッカーの指導者たちにとって攻守両面で戦術的な取り組みをする上で役に立つだろう。

2 Research Question -研究上の問い

2017-18シーズンのUCLノックアウトステージではピッチのどこで第二アシストが記録されたのか。第一アシストと第二アシストの場所がどのように関係しているのか。

3 Methodology -調査の方法

フットボール、サッカーに関わる統計学のデータを収集し、研究を進めていく。収集の方法は次の通り。

まず統計及びデータは17-18CLノックアウトステージでのスコアレスドロー3試合を除く26試合で www.whoscored.com を媒介しOpta Sportsに出されたものを使う。この26試合で起きた45000を超える事象を記録したデータを、Python3.7、Requests2.19.1、Beautiful Soul4.6.3のソフトウェアを用い、Excel2016に引用、ダウンロードした。

その後全91の得点シーンを自らの手で識別、解析。さらにその中からフリーキックなどセットプレーと、自らボールを奪いそのままゴールへなどといったアシストのつかない得点を除いた。すると64のゴールが第一アシストが記録されたものとして残り、58のゴールで第二アシストも記録された。

最後にこれらをMatplotib 2.2.3というソフトウェアを用い、一つのフィールドの図に別々の色で示した。

フィールド上のエリアを明確にするため、一流指導者も使う皆さんご存知の5 corridors (直訳すると5つの廊下。以下馴染みのあるレーンと表現する)でピッチを区分していった。

UEFA-Aのコーチングディプロマシーでこれらのレーンは右手から、right outer (以下右外)、right inner (以下右内)、central (以下中央)、left inner (以下左内)、left outer (以下左外)として定義されている。

さらに、ハーフウェイラインからそれぞれのゴールラインの方向へピッチを3分割する。6つのエリアができるが、それぞれを敵陣もしくは自陣のprimary third (以下第一サード)、middle third (以下ミドルサード)、final third (以下ファイナルサード)として定義する。

最後にペナルティーエリア内を3分割。右アシストゾーン、中央をゴールデンゾーン、左アシストゾーンとして定義。最も得点が生まれるとされるペナルティーエリア。そこでのアクションと得点の関係性を、このような用語を使うことで議論していきたい。

図1 -ピッチ区分と用語

4.Results -調査結果

4.1 第二アシスト

第二アシストであるパスが出された場所は、敵陣全体に分布され、区分した全エリアで記録された。

レーンで見ても、それぞれ5つのレーンに満遍なく分布されていて、中央レーンはやや高めの14本(全第二アシストのうち24%)。左内と左外はそれぞれ11本(19%)。右内は12本(21%)。右外は右内よりやや低く10本(17%)となった。

表1 -レーンで見る第二アシストの場所

自陣/敵陣で話をしていく。まず、自陣で記録された第二アシストはかなり少なくなった。自陣ミドルサードとファイナルサードでの合計はたったの3本(5%)。次に多かったのが自陣第一サードと敵陣ファイナルサードの10本(17%) 。そして敵陣第一サードの16本(27%)が2番目の量。最も多かったのが敵陣ミドルサードの21本(21本)となった。

表2 -自陣/敵陣で見る第二アシストの場所

4.2 第一アシスト

第一アシストは最もゴールに近い中央のエリア、そしてペナルティーエリア内からのものが大多数を占めている。

先程のようにレーンから見ていく。最も多かったのは中央レーンで21本(33%)。そこに左内、右内と続き、それぞれ14本(22%)、13本(21%)となり、中央のエリアで多くの第一アシストが記録された。対して外レーンはその数が少なく、右が10本(16%)、左が5本(8%)となった。

表3 -レーンで見る第一アシストの場所

次にエリアの高さ。敵陣ミドルサード、ファイナルサードでは多く記録され、それぞれ18本(28%)と34本(34%)となった。とりわけ後者のエリアの外レーンとアシストゾーンと称した内レーンの数は対照的で、左右のアシストゾーンでの第一アシストの数の方が圧倒的に多い結果となった。右内レーンで記録された全13の第一アシストのうち9本が、左内レーンでは全14本のうち9本がこのゾーンで記録されたものだった。

表4 -エリアの高さで見る第一アシストの場所

4.3 第二アシストと第一アシストの関係

下の図2は58の第二アシスト(黒)と64の第一アシスト(赤)を示している。
また、たくさんのアシストが記録された場所を囲む"assist-V"も示したが、次のパートで詳しく解説していく。

5 まとめ

この研究の目的は、第二アシストと第一アシストそれぞれの場所を知ることで、どのようなゴールがフットボールの第一線で決められているのかを理解することであった。
そしてアシストが多く記録された場所やその傾向を知っておくこと。これは指導者が得点を多く挙げ、失点を減らすためのゲームモデルを作る助けになるだろう。

今回の調査では第一,第二アシストのエリアごとの傾向、そのエリアと局面(ゴールに近いなど)との関係、アシストゾーンや敵陣ミドルサードの内レーンの重要性がわかり、数値化することができた。

そしてDixonとProtheroeが提唱した5レーンと6つのエリアの高さ分けのおかげで、どのエリアが有用かの詳細なデータを得ることができた。

さて、表を見ると敵陣ミドルサードの右内レーンと右のアシストゾーンには関係があるように見える。多くの第二アシストが前者で、第一アシストが後者で生まれた。
ゴールデンゾーンに侵入するためには、内レーン→アシストゾーンの順路を辿るのが効果的だと言える。

また、敵陣ミドルサードの中央レーンでの第一アシストの数は、そのエリアの第二アシストの数と比べ、かなり大きく出た。そのため、このエリアにボールを集めることもゴールを取るために効果的だと言える。

この研究の結果は指導者たちがプレーする選手たちにどのエリアが重要なのかを示すことができ、彼らのパフォーマンスを上げる助けになるはずだ。例えば攻撃的MFは敵陣ミドルサード内レーンでチャンスを生み出しているという数字を右ワイドの選手が見た場合、外側から簡単にクロスを入れずに、アシストゾーンへの侵入を心がけるようになるだろう。

次に、上の図に記したVの字について説明していく。このアシストVこそこの研究の主たる発見であり、戦術理解やサッカー談義を支援し、プレーモデルを考えるための新しいピッチの区分として提唱した。

これはCLに出るような世界最高峰のチームのプレースタイルの相似性により生まれたものではあるが、指導者たちが指導をする選手の年代やレベルを問わず、自チームの戦術や戦略を考える際にも用いることが可能だ。

ボールを保持しながらどのように連動してアシストVに入っていくか。敵陣に入った時に選手がどこにポジションを取り、どんなフォーメーションを作るべきか。アシストVに入ってから、どんなプレーをするのが効果的か。そして相手がアシストVを意識して守った際、最小限の時間とスペースでどんなプレーをすべきか。
これらは一例であるが、この質問の答えこそ、指導者たちがプレーモデルを考える上で重要なことだと私は思う。

さらに、選手の立ち位置や利き足を第一,第二アシストと合わせて考えることで、指導者たちは選手のクオリティーをより客観的に判断することができる。

人はフットボールの戦い方のテンプレートやどの戦術が最も優れているかを長い間求め続けてきた。しかし、私たちはそれを見直し、今回の調査のような新たなアプローチを戦術・技術・主観・客観などの側面から試み続けなければならない。

備考

第ニアシストの場所

第一アシストの場所

おわりに

今回の調査では、フットボールを考える上での新たなアプローチを提唱しました。この調査があなたのフットボールの考え方、観点に影響を与えられたらいいなと思います。

そして、この調査が指導者やサッカークラスタの皆さんのフットボール談義を盛り上げ、新たな発見につながっていくことを願っています。

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