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~用意周到~ J1第9節 ヴィッセル神戸vsベガルタ仙台

2020明治安田生命J1リーグ 第9節 ヴィッセル神戸vsベガルタ仙台 2020.8.8

ノエビアスタジアム神戸で行われた一戦。今節も振り返っていきたいと思います。ところでハイブリッド芝が導入された直後は慣れればホームアドバンテージになるのかと思ってましたが、見るたびに神戸の選手も滑ってるのでどうなのかなと。地に足つけて戦えっていうメッセージなんでしょうかね。ちなみにそういうの得意ですよ仙台は。

試合前両チーム状況

ヴィッセル神戸(9位)

前節札幌との対戦は3-2で勝利。マンマーク基調の高い位置からの寄せに苦しみつつも、前線ドウグラスに放り込めれば結局点が取れちゃうぜといった試合になった。ただその試合で古橋と大崎が負傷。その影響は小さくなさそうだがここで仙台を下し連勝となるか。

ベガルタ仙台(15位)

試合ごとに戦い方の幅を広げている仙台だが気づけばここまで3連敗、6試合勝利がない。さらにノエビアで最後に勝利したのも5年前と嫌なデータが並ぶ。けが人も相次いで出ているがここで勝っていいニュースを届けたいところ。

スタメン

09神戸仙台

仙台は前節に引き続き4231を採用。DFタイプの選手が6人スタメンに名を連ねたが浜崎がボランチに、真瀬が右ウイングに入った。神戸は前節負傷した2人に代わってCBにサンペール、シャドーに郷家が入った。

前半ー仙台のボール奪取

まずは仙台のボール非保持のアプローチを見ていく。

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現象
神戸は後方3枚でボールを保持し、機をみて縦や斜めにパスを入れて前進を図る。仙台は3トップがその3バックに対して待ち構える。長沢はアンカー化する山口を消すようにサンペールの前に立つ。ウイングは左右CBの利き足側に立ち位置を取り、内側へのパスを防ぐ。かわりに大外WBへのパスはある程度許容した。WBに渡るとウイングがそのままついていき真横に面を作り、さらにSBがスライドして出てきてL字でタッチラインも使って囲い込む。

意図
この制限方法は今までの試合で仙台が見せた事がないものだった。これまでは3バックの左右に対して外側を切るようにして寄せ、内側へのパスを誘導していた。ではなぜその方法を取らなかったのか。その意図は大きく2つあると思う。

1つは左右CBに自由に運ばせないため。CBの運びは相手のブロックを押し込む、または前線を引きだして空間を作る効果があり、ダンクレーとフェルマーレンも標準装備でそれを行なってくる。ではその運ぶコースに予め立っておこうというのが仙台だった。45分にはイニエスタに促されて運ぶダンクレーが正面に立って構える西村と衝突している。

もう1つはドウグラスへのフィードを防ぐため。前節神戸と対戦した札幌は神戸の中盤〜最前線にマンマークをつけつつ前から圧力をかける形を取っており、それに対して神戸は主にフェルマーレンが札幌DFとの1v1で分があるドウグラスへと一気に蹴ってチャンスを作っていた。仙台も同じ轍は踏みたくない。単純に外側を切っても前に蹴られてしまっては意味がないので、CBの利き足側に立って蹴らせないようにしてからじわじわと寄せていた。

CBにシマオがいたら蹴ることを許容するまた違う方法を取っていたのかもしれない。選手に応じて戦い方のバリエーションをつけられるのは今の仙台の強みだ。とはいえこの4231は中央のトップとその下が内側を切れることを前提に行われている。特に関口の負担は相当なもので、彼はボールを大外や内側のレーンで持たれている際に、その保持者と真横、同じ高さに立って中央に侵入されることを防いだ。イニエスタも中央に運ぶプレーが得意な選手だが、その8番に対しても仙台の7番やボランチの2人がそのドリブルのコースを予め切って対応。57分の椎橋のボール奪取は一例で良いシーンだったと思う。

前半ー仙台の前進方法

次に仙台の保持時の取り組みを見ていく。この日の仙台は前にカウンターに出るよりは、一旦後ろで落ち着かせてビルドアップから前進するシーンが多かった。

スライド5

現象
2CBと2ボラで組み立て。これで1stラインのドウグラスを超えるとボールをサイドへ。左サイドは蜂須賀が大外、西村が内側に立って関口が関わりつつ前進。右サイドは真瀬がWBの手前の大外、柳が内側のシャドーポジションを取って浜崎と関わりつつ前進する。いずれのサイドでも攻撃をクロスで終わらせる事がほとんどで、先制点の蜂須賀のプレーや真瀬が作った多くのチャンスに代表されるようにマイナス方向へのクロスが中でも多かった。

意図
SBとウイングが大外、内側の関係になるプレーは神戸の中盤4枚の動きをコントロールする意図があったように思う。例えば柳が内側に立ったことで郷家に真瀬とどちらを見るべきかの判断を迫ることに成功し、フリーマンを作る事ができた。前半飲水タイム後は神戸が修正を入れ、大外に対してはWBが出て行くという決まり事を作ったが、一方の仙台もそれを踏まえて内側にいた選手が外に流れてWB裏を使うなど、柔軟に対応する事が出来ていた。
またマイナスクロスに関してもビルドアップ局面で相手の中盤を操作できたからこそ、狙いを持ってチャンスに繋げられていた。椎橋と浜崎のどちらかが低めでイニエスタを引きつけることで中盤低い位置の選手は山口のみに。さらにその山口も関口に意識がいって動きを制御される。2センターはクロス対応時に3バックの手前でリバウンドポジション(クロス跳ね返りのセカンドボールを取るための場所)を取るが、それがいなくなったor山口1人になったことで、ここへのボールが通りやすくなった。幾度となく仕掛けてここにボールを送ったこの日の真瀬のプレーは非常に良かったと思う。

前半ーサンペール上げ

先制点を取られた神戸が動く。

現象
サンペールが一列上がり、それに押し出されるように山口とイニエスタも前へ。4123のような形を取ってボール保持から前進する。

意図
単純にイニエスタと山口のプレーエリアを高くしたかったのだと思う。仙台から見ればブロックの外でイニエスタに持たれる分には、高い位置にいるよりかは怖さを感じないと思う。なので先制されたので追いつきましょうという状況になって、彼らをリスクかけてでも上げ、プレーさせようとしたはずだ。ただ仙台がいずれにせよ関口と長沢が中央を遮断し続けたため、神戸側にWBに預けて仕掛けさせる以外の選択肢がなかなか生まれなかった。43分、45分にはその前2枚の面作りに、ウイングのプレスも加わって前進を阻んだ。

後半ー術に嵌らないための433

神戸はハーフタイムに433の仕組みを整理。

スライド6

現象
前半飲水タイム後に比べて2CBで後方で持ちましょうという意識が強くなり、サンペールがCB間に入るシーンは少なくなった。かわりにSBがやや下がって4枚でピッチを左右広く使った。

意図
433のSBを上手く使って、仙台の術中にはまらないようにするための修正だったと思う。仙台が取った守備(ウイングが内側へのパスコースを消しSBが大外迎撃)に対して、前方の神戸ウイングが仙台SBをピン止めすれば、手前でSBがフリーで受けて時間を得ることができる。相手が寄せてきたらこのフリーのをSBに一旦預けて、CBに戻し逆サイドでやり直しするといった、仙台の囲い込む守備を無効化させるようなプレーをした。後方でのバックパスの回数が増えていることからもこれはわかると思う。


こうして神戸はSBを使いながら左右前後へとボールを動かし、仙台を押し込むシーンが増えていく。さらに仙台の保持時にも人を捕まえる形で圧力をかけ、ロングボールで起点を作りたい仙台だったが、なかなか上手くは行かなかった。しかし小川やドウグラスのシュートなどあと一歩のシーンで運良く外してくれたため、仙台としては助かった。


そんな中で生まれたのが追加点。スローインの流れから蜂須賀が相手との衝突をも顧みず縦に突破していく。最後は飯倉を引きつけてクロス、ニアに真瀬が突っ込んだことで空いたファーのスペースで赤﨑が合わせ2-0となった。押し込まれて、なんとか耐えてのこの一発。これが本当に大きかった。
その後神戸はキーとなるSBを初瀬藤谷へと交代。さらに藤本を入れてまずは1点を取りにかかる。結果的にこれが功を奏する。ダンクレーのフィードから外側から内側に入って背中を取った小田が中へクロス。藤本がキーパーとCBの間に入って仕留めた。彼は大分時代からこういうペナ内の駆け引きは上手い印象がある。

後半ー勝つために

スライド7

現象
4231から532へと変更。低めにブロックを敷いて構える。

意図
なんとか1点リードを守り切るためのシステム変更だった。縦横無尽に動き、動かされた関口に変えて中原を投入し、後ろを5枚に。逆サイドにボールを動かす神戸に対して、WBがすぐ対応出来るようにしたこのシステム変更は効果的なものだった。

こうして仙台はリードをしっかりとキープし試合終了。ようやく、ようやく勝てた。

雑感


試合内容が悪くないのに、毎試合成長しているポイントを見せているのにここまでなかなか勝てなかった仙台。ついに前節は運にまで見放されてしまった。そんな中で迎えた今節。いつも通り相手を研究し、戦い方の幅を広げた。特にウイングの立ち位置など、守備時の前線の誘導方法は見ていて愉しかった。さらには、いやなによりも大きかったかもしれないが、今まで味方してくれなかった運までがついてきてくれたことは助かった。神戸が夏の花火大会を開催してくれたのもあってどうにかスコアで上回ることが出来た。大きい勝利。このまま突き進んでいって欲しいところ。

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