新しい何かを知るとき

 新しい何か、ひとまとまりくらいの大きさのものを知るとき、たとえてそれを一抱えほどの岩だとしよう。最初はガツンとツルハシで打った跡のように、少し深くまで一箇所だけ穴が空いたように、それを知ることが多いのだろう。初めて知るとき、それを教えてくれる人はある程度深くまでその岩を砕いていて、その部分のことを教えてくれるからだ。
 この、最初の一箇所目の穴が少し深いのが厄介で、それがあたかもその岩の中心であるかのように誤解してしまうことが多くなってしまう。つまり、いきなり岩の全部を知った気になってしまう。全部と言わずとも、結構コアな部分を知っていますよ、と思ってしまう。もしくは、それだけが全部で、岩は石であったと思ってしまう。
 でもそれは、一抱えほどある岩のある一箇所に空けられた、少し深いだけの穴なのだ。その穴にしばらく留まっていると、そのうち周りに水が染み込んでいくように、穴の周りを理解し始める。そこでようやく、ああ、こういう部分もあるのかと知り始める。穴から出てきて、少し離れて岩の後ろ側に回り込むことができたならば、ようやく岩の大きさを知ることができるかもしれない。

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