(要約)日本の「全国学力テスト」は失敗…? 専門家が指摘する“知られざる”実態”

全国学力テストは失敗なのか・・・?

 以下の画像は、全国学力テストのデータと就学援助のデータを分析したものである。

画像1

 この図から、就学援助率が高くなるほど明らかに国語の正答率が下がるということが分かる。就学援助を受けている子どもの成績が「必ず」低いといっているわけではないが、学校単位で見ると、学力に対する家庭環境の影響がきわめて強い事がわかった。

 多くの場合、学力テストの平均点の高い学校=単に恵まれた家庭の子供が多いだけである。学力向上を狙った教育政策を考える時は、保護者の学歴や年収など、子どもの社会的属性の影響を考慮することが絶対に必要である

 全国学力テストは社会的属性を十分には調べていないという問題があるが、それ以前に「なんの学力を測っているのかよくわからない」という致命的な問題がある。図りたい学力が曖昧では、どのような問題を出題すればよいのか判断できないし、学力の上がり下がりの基準さえ作れない。

家庭環境を調べるのは“差別”なのか?

 教育行政は、子供の社会的属性を調べることを恐れているように見える。家庭環境に関する情報を調べないということは、現状を見て見ぬふりをすることである。社会的属性に触れなければ差別ではないと思う人もいるかもしれないが、見て見ぬふりをすることも、差別に加担しているのと同じだ

 家庭環境によって差があるという実態を示し、どうすれば良いか皆で考えていくように促すことが行政の果たすべき役割だろう。子どもに聞かずとも、行政は家族構成や納税状況、あるいは就学援助の受給状況など、さまざまな情報を既に有している。個人情報の保護という難しい問題はあるが、自分たちが既に有している情報を活用することも考えるべきだ。

今の「全国学力テスト」、やめませんか?

 今のような、何を測っているのかよくわからず、社会的属性の情報も取得しないような学力テストを続けるのは止めて、実態を把握するための学力調査を始めるべきだ。社会的属性を例にとると、最低でも保護者の学歴や年収,本人の性別(ジェンダー)といった情報は把握する必要がある。

 もちろんハードルは低くない。いい加減な学力テストに慣れたために、今の日本には学力調査の設計・分析に関する専門的な知見を持った人材がほとんどいない。人材の育成・雇用というレベルから話を始める必要がある。

 加えて現在のように、調査を実施する主体と政策を実施する主体が同じでは、調査結果を歪めた方が良いというインセンティブが発生する。淡々と教育の現状を調べる組織を、政策立案を行う部署とは別に作る必要がある。

このような改革は容易ではない。しかしそれをしなければ、いつまでも日本は「改革のやりっ放し」から抜け出すことはできないだろう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?