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とろぶ
2023年12月9日 12:21
夜が明けるには、しばらく時間があった。到着の余韻がまだ残っていたからだろうか、客室が今の自身の居場所でないように感じ、私は暗い支笏湖を一人散策していた。氷点下に届きそうな空気は張り詰めていて、北極星を見上げている自身の視界に、白い息が過ぎる。風は吹かず、音も聞こえない、目の前の湖はすべてを吸い込んでいるようで、永遠のような時間の中、温もりとは無縁な闇だけがその場に在った。支笏湖は、洞