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働く手

結婚して三回目の冬
お義父さんが亡くなり葬儀のため宮城へ行ってきた。

ここ数年、流行りの病が蔓延していたこともあり
旦那の実家に行くのもまだ片手で数えられるほどだった。

親戚のかたに会うのも初めてで
そういった意味でも緊張していた。

火葬場の待ち時間で簡素な部屋に通された。
テーブルが六つ
それぞれに缶のお茶やお菓子が並べられていた。
係のお姉さんから1時間後に呼びにきますので
そのときに速やかに移動していただきたいので
部屋にあるゴミは、それぞれ分けて外にあるゴミ箱へ
遺影の前にあるコップ、湯呑みは洗って所定の場所へお願いします。
次のかたが使いますのでお忘れもののないようにお願いいたします。とのことだった。

へぇ、自分たちで片付けるんだ。
今までそんな経験がなかったので驚いた。
じゃあ10分前には片付け始めないと。
私は腕時計を何度もみる

それぞれのテーブルでは、お義父さんのことを話題にしていたり
まったく関係のない話に盛り上がっていたり
和やかな雰囲気に包まれていた。

13時間半になった。
各テーブルに行き
「そろそろ時間になりますので片付けさせていただきます。」と声をかけながら
ビニール袋に缶をポイポイ投げ入れた。

次に別の袋にお菓子のゴミをガサガサといれて行く
まるで私の腕がブルドーザーになったかのように
ガガガッと掴み袋の中へ
そんなときに一番年配と思われる男性の手の甲に触れてしまった。

見た目が「長老」という雰囲気なのでそんなあだ名にしよう(笑)
長老が
「あなたの手は、働く手をしてるね」と私をしっかり見ながら言う。
ちょっと照れ臭くて
「いぇ、ただガサガサしてるだけなんですよ(笑)」
「あ、でも5時半から働いてはいます(笑)」
職業柄、爪が短くマニキュアもしない。
洗い場に入ることも多くガサガサしている。
そんな手を見て誉めてくださるなんて。

私と娘はその日に帰らなくてはいけなくて
旦那は宮城に残った。
それから数日してから旦那からのラインで

長老がすごく誉めていたよ。
仕事ができる人の手をしていた。と
親戚たちになぜか得意げに話していたそうで
その話を聞いて私はとても嬉しかった。

初めて会う人達のなかで緊張もしていた。
でもなぜか
嫁だから。みたいな気負いがなく
自然体でいられた。
それはきっと親戚のかたたちがフレンドリーで優しいからだ。

私もそんな歳のとりかたをしたい。







拙い文章ですが楽しみながら 続けていきたいと思っています🍀感謝です☆